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レッドハット、商用のOpenStack製品を国内提供開始

買収したManageIQ製品もCloudForms 2.0として提供

今回提供する新製品の位置付け

 レッドハット株式会社は23日、オープンソースのクラウド基盤管理ソフト「OpenStack」をベースにした2つの新製品を発表した。1つは、OpenStackとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をセットにした「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」(以下、OpenStack Platform)、もう1つはデータセンターの統合管理を実現する「Red Hat Cloud Infrastructure」(以下、Cloud Infrastructure)である。

 米Red Hatでは、RHELと並ぶ大きな柱としてOpenStackに着目しており、さまざまな投資を行ってきた結果、最新のOpenStackである「Grizzly」では、企業別コミット数が1位になるなど、コミュニティをけん引する立場になっているという。

 そのRed Hatが提供する商用のOpenStackといえるのが、OpenStack Platformだ。OpenStack本体にはOSやハイパーバイザーなどは含まれておらず、コミュニティ版ではUbuntu上に構築するようになっている。しかし、「Ubuntuではエンタープライズ環境で利用するには不足しているため、RHELと組み合わせて提供する」(常務執行役員 製品・ソリューション事業統括本部長の纐纈昌嗣氏)とのことで、ビジネス用途で実績のあるRHEL上でOpenStackを展開することにより、プライベート/パブリッククラウドを構築しやすくした。

 なお、OpenStack Platformに含まれるRed Hat OpenStackは、Red Hatが無償公開しているOpenStackディストリビューション「RDO」をベースにしており、安定化作業とバックポート、動作検証をRed Hatが実施して、RDOと同じく6カ月ごとにリリースされる。LinuxでいえばRDOがFedora、OpenStack PlatformがRHELに相当する位置付けと考えるとわかりやすい。

 ただしRHELはライフサイクルが長く取られているのに対し、Red Hat OpenStackはコミュニティ版やRDOと同じく6カ月ごとと短くなっている。この点について纐纈氏は「OpenStackがまだ成長過程のため、新しい機能をどんどん取り組んでいきたい需要がある」と説明。機能が成熟化してきた段階では、顧客のニーズを見ながらライフサイクルの長期化を検討してくとした。

Red Hat OpenStackとRed Hat Enterprise Linuxをセットにして提供する
Red Hat OpenStackの位置付け
常務執行役員 製品・ソリューション事業統括本部長の纐纈昌嗣氏

 一方のCloud Infrastructureでは、OpenStack Platformに加えて、仮想化基盤であるRed Hat Enterprise Virtualization(RHEV)、ハイブリッドクラウドを統合管理する「Red Hat CloudForms 2.0」をパッケージ化。データセンター内外のインフラを統合管理できるようにするという。

 ただし注意したいのは、ここに含まれるCloudForms 2.0が、これまでRed Hatが提供してきたCloudFormsとは別物である点だ。CloudForms 2.0は、Red Hatが2012年12月に買収した米ManageIQの製品をリブランディングしたもので、現状ではオープンソース化されてもいない、Red Hatの中では特殊な位置付けの製品である。

 纐纈氏によれば、「CloudForms 2.0では、VMware vSphere、Hyper-V、Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービスを管理でき、特にVMware vSphere環境については北米で大きな実績を持つ」とのことで、RHEVの環境を含めて、仮想環境とAWSのクラウドサービスを統合管理できる強力な製品だという。

 Red Hatでは、プライベートクラウドからパブリッククラウドまでの包括的なクラウドサービスを統合管理できる「オープンハイブリッドクラウド」というビジョンをかかげており、一見、CloudForms 2.0でそれが実現しているように見える。しかし実は、現状のCloudForms 2.0はOpenStackの管理に対応しておらず、このギャップを埋めるのが優先課題になっている。

 纐纈氏はこの点について、「OpenStackを進化させていくとともに、CloudForms 2.0でOpenStackを管理できるようにすることで、RHEVからOpenStackまでを一貫して管理するプラットフォームとする」と述べ、今後、この開発に注力していくとした。

現在のCloudForms 2.0で管理できる範囲。OpenStackは別個に管理する必要がある
今後は、OpenStackを含めた統合管理を実現し、「オープンハイブリッドクラウド」を実現するとのこと

 なお、OpenStack Platform、Cloud Infrastructureのいずれも、2ソケット単位でのサブスクリプションサービスとして提供され、サポートレベルによって2種類の価格が用意される。

 2ソケットサーバー10台での年間参考価格は、OpenStack Platformの場合、平日9~17時対応のスタンダードが約363万9000円、24時間365日対応のプレミアムが474万4000円。Cloud Infrastructureの場合は、スタンダードが約597万9000円、プレミアムが約777万9000円となる。また、CloudForms 2.0は現在、単体での購入ができない点に注意が必要だ。

 「当面、これらの製品は直販のみで提供する。それは、発展中だという製品の特性上、安定して動くかどうかが明確ではないためで、当社のコンサルタントやエンジニアが直接お客さまを支援し、確実に動く環境を作っていく。パートナー経由での展開はその後、製品が安定して動くようになった後を考えている。お客さまについても、(OpenStackを)育てていこうという気持ちのあるお客さまへ提供することになる」(纐纈氏)。

石井 一志