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富士通、クラウド製品群を「FUJITSU Cloud Initiative」に体系化
(2013/5/14 15:11)
富士通株式会社は5月16日・17日に東京国際フォーラムにて「富士通フォーラム2013」を開催する。それに先駆けて14日には、同社のクラウド戦略を伝える記者会見を開催。顧客の“クラウドファースト”ニーズに応えるため、クラウドに関する製品・サービス群を「FUJITSU Cloud Initiative」として新たに体系化すると発表した。
FUJITSU Cloud Initiativeは、顧客のニーズに対して、プライベートクラウドからパブリッククラウド、インテグレーション、IaaS・PaaS・SaaSなどすべてのクラウド領域において、顧客にクラウドの最適解を提供する継続的な取り組み。今回は第1弾として、新サービス10種(IaaS:2種、PaaS:4種、クラウドインテグレーション:4種)、強化サービス2種(PaaS:1種、セキュリティサービス:1種)を発表した。
また、適材適所のクラウド利活用に向け、クラウドスペシャリスト100名、クラウドインテグレーター2000名によるクラウドインテグレーション体制を強化する。
IaaS
新サービスとして、IaaSでは新たに「FUJITSU Cloud IaaS Trusted Public S5 専用サービス」と「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted」を提供する。
「FUJITSU Cloud IaaS Trusted Public S5 専用サービス」は物理サーバー、ストレージ、ネットワーク環境のすべてのリソースを顧客専用に提供するパブリッククラウドサービス。パブリッククラウドとプライベートクラウド双方の特長を持ち、今までパブリッククラウドの利用が難しかった個人情報を扱う行政機関や医療機関、または企業内に閉じたシステムを活用していた顧客も安心してパブリッククラウドを利用できるようにするという。
特長としては、稼働実績99.9998%の高可用性やISO27001・FISC準拠のセキュリティ、数万件のシステム構築実績に基づいたテンプレートによる構築の早さのほか、「クローズドネットワーク」「顧客のセキュリティポリシーに対応」「パブリッククラウドとの連携」を挙げる。
これにより、「セキュリティ面・性能面で安定した基盤が必要な業務・業界に最適」(サービスプラットフォーム部門 クラウド事業本部長の岡田昭広氏)とし、クローズドネットワークが必要な「企業グループ内利用」をはじめ、政府・金融・自動車などの「業界内クラウド」、食・農業・医療・介護などの「社会システムクラウド基盤」といった領域に適合するとした。
提供開始時期は5月。販売価格は個別見積もり。
「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted」は、運用基準、セキュリティポリシー、サービスレベルを顧客の要件に応じて個別にカスタマイズ可能なプライベートクラウドを、富士通データセンターから提供するものだ。
特長として「基幹システムに利用できるIaaSプラットフォーム」「顧客に最適なリソースを柔軟に提供」「高品質な運用サービスの提供」「グローバル対応」などを挙げ、顧客が望む運用、・セキュリティに合わせたクラウド環境を利用できる。
提供開始時期は7月。販売価格は月額8万円より。
PaaS
PaaSとしては、クラウド連携・統合基盤「FUJITSU Cloud PaaS RunMyProcess(以下、RunMyProcess)」、SaaSアプリケーション開発共通基盤「FUJITSU Cloud PaaS Cloud Service Enabler(以下、Cloud Service Enabler)」「ソーシャル連携を実現する基盤サービス」、ならびに「モバイル活用を実現する基盤サービス」を新たに提供する。併せて、ビッグデータ活用基盤「FUJITSU Cloud PaaS データ活用基盤サービス」の強化を図る。
RunMyProcessは、クラウドサービスやオンプレミス上にあるさまざまなサービスやデータを自在に連携・統合し、新たな業務システムの構築を支援する。デザインツールを利用したプロセス(ワークフロー)や、Web画面作成、豊富なコネクタ(約1800種)でパブリッククラウドとの統合が可能。富士通のクラウドのほか、AWSやSalesforceなどとの連携も可能で、「クラウドサービスの活用によりシステム構築期間を大幅に短縮する」(岡田氏)という。提供開始時期は2013年第2四半期。
Cloud Service Enablerは、クラウドサービスの構築・運用に必要な、ID管理・認証、契約・課金、マーケットプレイス、モバイル対応などの共通機能を提供するサービス。「こちらもSaaS構築にかかる期間を1/6に短縮し、早期の立ち上げが可能になる」という。提供開始時期は6月。
「ソーシャル連携を実現する基盤サービス」では、ソーシャルクラウドに必要となる、複数のプレイヤーやアプリケーションによるデータの共有・連携を実現。「モバイル活用を実現する基盤サービス」では、モバイル端末でクラウドサービスを利用する際に必要となるID管理・認証、ポータル、アプリセキュア配信・実行などの機能を一括で提供する。いずれも提供開始時期は2013年第3四半期。
以上がPaaSの新サービスとなるが、もう1つ、ビッグデータ活用基盤「FUJITSU Cloud PaaS データ活用基盤サービス」では、ビッグデータをより利活用できるよう強化を行う。具体的に「これまでCEP、Hadoop、ポータルなどのデータ活用基盤を整えてきたが、今後は実際にデータを扱うアプリやサービスの拡充を図る」(岡田氏)とのことで、展示会では具体的に位置情報サービス「SPATIOWL」や肌分析サービス「肌メモリ」、ソーシャルメディア分析ツールなどが紹介されていた。
クラウドインテグレーション
こうしたPaaSや富士通のパートナークラウド、あるいはマルチクラウド環境を監視可能な統合運用基盤などをベースに、「クラウドインテグレーション」事業も推進する。そのために100名のクラウドスペシャリスト、2000名のクラウドインテグレーターを配備し、最適なクラウドサービスを選択・組み合わせた提案を行う。
「クラウド導入アセスメント」「クラウド導入サービス」「クラウド運用管理サービス」のメニューをそろえ、より短期間・低価格に提供するため、顧客ニーズの多い上記メニューの組み合わせを「クラウドインテグレーションモデル」として準備。「ハイブリッドクラウド」「インターネットセキュリティ」「BCP対策」「コミュニケーション」「ネットビジネス」という視点からオファリングを行うとしている。
なお、「クラウド導入アセスメント」「クラウド導入サービス」「クラウド運用管理サービス」の3メニューはいずれも5月より提供する予定で、価格はアセスメントが無償、残り2つが個別見積もりとなる。
富士通の目指すビジネス領域
「グローバル化の進展、社会の変化、人口構成の変化と長寿化、エネルギー・環境問題の深刻化――昨今、企業を取り巻く環境は既存業界・地域を超え、地球規模の新たな競争環境へと変わっている。そんな中、ICTはコスト削減のためだけでなく、新しい価値を創造するものでなければならない」とマーケティング部門副部門長 執行役員常務の川妻庸男氏は指摘。
富士通の目指すビジネス領域は、テクノロジーの進化に伴い、古い資産を刷新する「モダナイゼーション領域」、その上で創出する「イノベーション領域」とのことで、特にビッグデータを扱う「ビジネスイノベーション」、農業などの新分野における「ソーシャルイノベーション」の2面から新しい価値を創造するという。
「そのためのキーテクノロジーが“クラウド”で、当社では2009年からクラウドビジネスの適用領域を順次拡大してきた。一方でお客さまは多種多様なクラウドサービスの中から最適なものを選定するのが困難になっている」とし、今回新サービスも含めて、クラウド製品・サービス群を「FUJITSU Cloud Initiative」として体系化し、ワンストップにイノベーションをワンストップに支援する体制を整えた。
こうした施策により、2013年度にクラウド関連事業で3000億円の売り上げを目指すとしている。