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日本オラクル、マルチテナントアーキテクチャを採用した「Oracle Database 12c」

データベース統合を推進し、クラウドでの運用を簡素化

 日本オラクル株式会社は17日、データベース製品の新版「Oracle Database 12c」を国内で提供開始すると発表した。代表執行役社長の遠藤隆雄氏は、「お客さまのクラウド基盤を支援するのがOracle Database 12c。クラウドの運用の難しさを解決する製品だ」とその特徴を説明した。なお、発表と同時にWindows、Linux、Solarisの各プラットフォーム向けが提供され、ほかのプラットフォームについても順次提供していく予定。

代表執行役社長の遠藤隆雄氏
Oracle Database 12cの特徴

 Oracle Database 12cの最大の特徴は、マルチテナントアーキテクチャの採用だ。データベースを1つのハードウェアに統合する場合、従来のデータベースではメモリなどのハードウェアは個別に割り当てられていたし、データファイルはもちろんのこと、バックグラウンドプロセスも別々に存在していた。しかしOracle Database 12cでは、「仮想化技術を用いてメモリ空間やバックグラウンドプロセスを仮想化し、データファイルだけを独立させる、大きなアーキテクチャ変更を行った」(専務執行役員 テクノロジー製品事業統括本部長の三澤智光氏)。

 具体的には、マルチテナント・コンテナ・データベースという大きなデータベースの上に、仮想的なデータベースであるプラガブル・データベースを複数載せる形になる。メモリやプロセスはマルチテナント・コンテナ・データベースで共有しているため、仮想化ハイパーバイザーを利用するような従来の仮想化技術でデータベースサーバーを統合した場合と比べ、同じハードウェアでも、より多くのデータベースを稼働させられるようになった。これにより、クラウドプラットフォームの低価格化に寄与するという。

 またマルチテナントアーキテクチャでは、システム運用も非常にシンプルになる。従来、パッチ適用やアップグレードといった作業は個々のデータベースに対して実施する必要があったが、マルチテナントアーキテクチャの場合、マルチテナント・コンテナ・データベースに対して一度作業を行うだけですむ。

 バックアップについても、システムごとではなく、マルチテナント・コンテナ・データベース全体で取得すればいいし、データベースのクローニングや移行の手順も簡略化された。さらに、Oracle Exadataなどのプラットフォーム上にバージョンの異なるマルチテナント・コンテナ・データベースを構築し、プラガブル・データベースを新バージョンのマルチテナント・コンテナ・データベースへ移行することも可能になっている。

 三澤氏はこうした特徴について、「さまざまな機能を総合して考えると、いかに運用効率が向上するかがわかるだろう。クラウド時代では、さまざまなデータベースが1つのシステムに載ってくるので運用が煩雑になってしまっている。Oracle Database 12cでは、こうした運用を簡略化し、コスト削減に寄与できる」と述べ、アピールした。

マルチテナントアーキテクチャを採用した点が最大の特徴
クローニング作業も一回の手順だけで完了する
バージョン混在環境でのアップデートもサポートした

 このほか、圧縮オプションである「Advanced Compression」では、一度ポリシーを設定しておけば、データベース自身がデータの利用頻度などから判断して、自動的に圧縮を行うAutomatic Data Optimization機能を新たに搭載。

 セキュリティ面でも、アクセスするユーザーに応じて、ポリシーベースで異なるセキュリティを適用するData Redaction機能をAdvanced Securityオプションに搭載した。従来はアプリケーションごとにポリシーを設定し、データへのアクセス制御をしていたというが、この機能を利用すると、「コールセンター担当者に対しては顧客のカード番号をマスキングするものの、業務上閲覧が必要な受注処理担当者は確認できる」といった処理を、データベース側で行える。

 加えて、同期型のリモートレプリケーションを行う際、サイト間の距離が遠すぎると、ネットワーク遅延の影響を受けて本番サイトのパフォーマンスにも影響を与えてしまうことを解決するため、Active Data GuardにFar Sync機能を追加した。これは、本番環境の近くにログだけを管理するFar Syncインスタンスを用意して本番環境と同期させ、リモートサイトに対してはFar Syncインスタンスから非同期でレプリケーションを行う仕組み。これにより、本番サイトのパフォーマンスを維持しながら、遠隔地とのレプリケーションを安全に行えるという。

 これらの機能を利用するには、いずれもEnterprise Editionが必要となる。三澤氏によれば、マルチテナント・コンテナ・データベースの機能だけはStandard Editionでもサポートしているが、作成できるプラガブル・データベースが1つまでに制限されているので、実質上、バージョンアップを円滑に行うような目的での利用に限られるとのこと。

データベース自身が利用頻度をもとにデータ管理を自動化
ユーザーに応じて自動でデータにマスキング処理をかける
Far Syncインスタンスを介すことで、本番環境に影響を与えずに遠隔レプリケーションを実現する。なお、Far SyncインスタンスにはOracle Databaseのライセンスは不要とのこと

 なお日本オラクルでは、データベース製品の提供だけでなく、周辺環境の整備も進めている。すでに、Enterprise ManagerやWebLogic Server、Oracle ExadataについてはOracle Database 12cに対応しているし、トレーニングについても、Oracle Universityで9月末から開講する予定。こうした取り組みは、以前のバージョンアップ時と比べてかなり早く整えているとした。

 また、7月から9月にかけて、技術情報をOracle Technology Networkやニュースサイトなどで公開するほか、運用方法、アプリケーション開発などのベストプラクティスをユーザー、パートナーへ展開し、Oracle Database 12cの導入を促進する計画だ。

石井 一志