ニュース
富士通研究所、仮想デスクトップ環境の性能劣化要因特定を支援する技術を開発
2017年5月23日 14:28
株式会社富士通研究所は23日、仮想デスクトップ環境で性能劣化要因を特定できる、自動分析技術を開発したと発表した。
仮想デスクトップシステムにおいては、さまざまな要因によりレスポンスの劣化やセッションの切断などが発生するが、それを解消するためには、サーバーやストレージ、ネットワーク、およびそれらを仮想化したシステムの状態を総合的に判断して、ボトルネックになっている部分や原因を特定する必要がある。
そのため、運用管理者は疑いのある箇所を見つけ、詳細な統計情報やログ情報の取得を有効化して分析することを繰り返し、原因を特定する手法が一般的に行われているものの、こうした分析のために機器の処理負荷が上昇すると、新たなレスポンスの劣化を引き起してしまうこともある。そのため、システムへの影響を最小限に抑えながら、時間と工数をかけて繰り返し分析することが必要とされていた。
そこで今回、富士通研究所では、仮想デスクトップシステムのネットワークパケットを観測して、ストレージが原因となるボトルネックを分析する技術を開発した。
ストレージネットワークでは短いデータでの通信が多く、すべてのパケットを観測した場合にはデータ量が膨大になるが、ストレージ機器の入出力パケットの情報(Read・Writeの種別、データ長、IDなど)についてパケットヘッダを分析し、不要なデータ部分を削除するとともに、分析に必要となる一連の動作の特徴のみを抽出して、蓄積データを削減できるようにした。
同社で、仮想マシンが300台規模のシステムに適用したところ、ストレージの性能分析に必要な数週間規模の蓄積データを、約5分の1に削減できることが確認されたという。
さらに、サーバー・仮想マシン間ネットワークとストレージネットワークにおいて、それぞれのパケットを取得して数週間規模のデータを蓄積し、網羅的に相関分析することで、システム内でボトルネックとなっている箇所を自動的に分析する技術も開発した。
こちらの技術を用いた試作システムを、仮想マシン300台規模の環境で実証したところ、これまでは2日程度かかっていた一連の原因特定作業を、10分の1程度となる約2時間へ短縮できたという。なお、従来は1回の分析サイクルで特定に至らないケースも多く、2、3回程度の繰り返し作業が必要となっていたのに対し、新技術では網羅的に分析できるので、1回だけで原因を特定可能としている。
また、時系列で記録した、サーバー・仮想マシン間ネットワークとストレージ性能それぞれの分析結果をもとに、ストレージの状態と動作していたアプリケーション種別を関連付けて解析しているため、システムに負荷をかけることなくシステムの性能劣化原因を分析できる点もメリットとのこと。
富士通研究所では今後、実用化に向け、仮想マシンが数千台規模で稼働する大規模な仮想デスクトップシステムでの検証を実施し、2018年度中に富士通のサービスとして提供することを目指す考えだ。