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ティントリの仮想化専用ストレージ「VMstore」、VM単位でのリアルタイム複製が可能に

性能や容量の将来予測が可能な分析サービスも無償提供

 ティントリジャパン合同会社(以下、ティントリ)は4日、仮想化専用ストレージ「Tintri VMstore」の機能強化を発表した。データ保護機能を強化するとともに、分析および予測クラウドサービスを提供する。

 VMstoreは、仮想マシン(VM)を認識するストレージ(VM aware storage)で、例えば、あるVMの性能が極端に落ちてしまった場合に、サーバー、ネットワーク、ストレージといった各レイヤでのレイテンシを可視化できることから、管理者はどこに原因があるのかを容易に特定できる特長を持つ。

 今回はそのVMstoreにおいて、リアルタイムでデータを複製する「Synchronuos Replication」の機能を追加した。この機能では、リアルタイムにデータを別筐体に複製可能なため、本番システムのストレージが故障などで利用できなくなった場合でも、予備機に切り替えてサービスを継続して運用できるという。筐体間の切り替えは透過的に実行されるので、システムのダウンが発生しない点がメリットになる。

 ティントリはすでに、最短では1分間隔で非同期のレプリケーションを行う「Tintri ReplicateVM」を提供しているが、こちらの機能では、復旧時にユーザーがリカバリ処理をした上で、停止した状態にあるゲストOSを起動させる必要があった。このため、「透過的にアクティブ-スタンバイの切り替えができず、サービスの停止時間が多少なりとも発生してしまう」(ティントリ SEマネージャーの八木下洋平氏)問題があった。

 一般的な企業ではさほど問題にならないかもしれないが、サービス停止がほんの短い間でも許されないサービスを提供しているクラウド事業者などにとっては、これは死活問題になるため、待ち望まれていた機能だという。

 ただし、現状ではVMwareにしか対応できないほか(ほかのハイパーバイザーは順次対応予定)、Tintri ReplicateVMとは異なり、複製先へ転送されるデータの重複排除や圧縮が行われないので、より多くの帯域が必要となる。ティントリでは、データセンター内、あるいは100km圏内での10Gigabit Ethernet環境を推奨している。

 この点について、ティントリ 技術担当副社長の首藤憲治氏は、「このような厳密な環境を要求されるユーザーは、すでに他社のストレージ環境、あるいは当社製品とサードパーティソフトウェア、といった組み合わせによって、同様のレプリケーション環境を実現しており、広帯域のWAN環境などを整えている場合がほとんどだろう。ただし、そうした環境ではLUN単位、筐体単位での複製になってしまうのに対し、VMstoreとSynchronuos Replicationの組み合わせであれば、VMやサービスグループ単位でのリアルタイムな複製が可能になるので、本当に必要な部分だけを転送すればよく、送られるデータは少なくなるはず」という点を指摘。競合との優位性を主張した。

ティントリ 技術担当副社長の首藤憲治氏

 利用にあたっては、Tintri ReplicateVMなどと同じ「Tintri Replication」ライセンスが必要だが、すでに同ライセンスを持っているユーザーであれば追加費用は必要ない。なお、ストレージOS「Tintri OS」と管理ソフトウェア「Tintri Global Center」は、それぞれ最新版「Tintri OS 4.3」と「Tintri Global Center 3.5」を利用する必要がある。

 さらに今回は、複数サイトにデータを複製して災害対策を行う「1-to-many Replication」機能も提供される。こちらもVM単位、あるいはサービスグループ単位での複製に対応し、ローカルとリモートでバックアップを同時に行うことが可能。最大では4地点へ同時にバックアップできるとした。こちらも、利用条件はSynchronuos Replicationと同様になる。

 一方、「ティントリ アナリティクス」は、6年間にわたって米Tintriが世界中で収集してきたデータを利用した分析・予測サービス。VMstoreには、ハードウェアの状態などを収集する「Auto Support」機能を持っており、これまでは故障の予兆検知などのサポートに利用してきた。

 ティントリ アナリティクスは、こうして収集してきたデータを解析し、それをユーザーに開放するもので、ユーザーは各筐体で稼働するVMやアプリケーションについて、性能や容量の洞察と将来予測を的確に行えるようになるという。

 将来予測サービスなどは他社でも提供されているが、こちらもVM aware storageならではの、「仮想マシンやアプリケーション単位でのデータ診断を行える点が、大きな他社との差別化ポイント」(ティントリ SEマネージャーの東一欣氏)。性能や容量といった分析予測は最大1年半まで可能なほか、過去の状態を確認したい場合は、3年分さかのぼれるとした。

 Auto Supportが有効化されているVMstoreを利用中のユーザーにSaaSとして提供され、追加費用なく利用できる。