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富士通と米Oracle、クラウドビジネスの加速に向けて戦略的提携を発表

富士通の国内データセンターから「Oracle Cloud」を提供

 富士通株式会社と米Oracle、日本オラクル株式会社は6日、日本企業および日本企業の海外拠点への高性能・高信頼な世界最高水準のクラウド提供に向けて新たな戦略的提携を行うと発表した。

 今回の戦略的提携では、富士通の国内データセンターに「Oracle Database Cloud Service」や「Oracle Human Capital Management(HCM) Cloud」をはじめとするOracleの「Oracle Cloud Platform」や「Oracle Cloud Applications」の環境を設置。このクラウドを、富士通から日本企業、およびその海外拠点に販売し、顧客のエンタープライズシステムのクラウド移行を支援していくという。

 富士通 代表取締役会長の山本正已氏は、この戦略的提携の経緯について、「富士通とOracleは30年間にわたり、様々な分野で強力なパートナーシップを築いてきた。その中で、昨年4月、Oracleのラリー・エリソン会長兼CTOと会談した際に、クラウド領域において両社の協業を強化することに合意し、約1年が経過した本日、戦略的提携を発表するに至った」と話す。「この戦略的提携によって、エンタープライズ領域におけるクラウド事業を強化するとともに、Oracleを利用中の顧客のクラウド移行ニーズに対応する。そして、クラウドの領域で、顧客に新たな価値を提供するため、両社で新しいエコシステムを構築していく」と、その狙いを述べている。

富士通 代表取締役会長の山本正已氏

 また、発表会では、Oracle 経営執行役会長兼CTOのラリー・エリソン氏が、サテライト中継を通じて、戦略的提携についてコメントした。

 「今回、Oracleと富士通は、3つのクラウド領域でパートナーシップを強化する。まず、SaaS領域では、『Oracle HCM Cloud』を、富士通のクラウド環境を通じて提供する。これに合わせて富士通では、『Oracle HCM Cloud』の社内利用も開始するということで、エキスパートの立場からのビジネス展開に期待している。PaaS領域では、『Oracle Database』を富士通のデータセンター上に展開し、クラウドサービスとして提供する。そして、IaaS領域においては、Oracleのアプリケーションおよびデータベースと、富士通のクラウド環境を活用し、顧客のワークロードをオンプレミスからクラウドにスムーズに移行できるよう支援していく」と、戦略的提携にともなうクラウド領域での協業展開について説明した。

米Oracle 経営執行役会長兼CTOのラリー・エリソン氏

 具体的な提携内容としては、「Oracle Cloud」を富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5(以下、K5)」と連携させ、顧客のITとビジネスに求められる高性能なクラウド環境を提供する。とくに、富士通の高信頼・高セキュリティの国内データセンターに「Oracle Cloud」環境を設置することで「K5」とデータセンター内接続を実現し、エンタープライズ・システムで求められるクラウド環境を提供する。

 富士通 執行役員専務 デジタルサービス部門長兼CTOの香川新吾氏は、「『K5』は、オープン技術と富士通のノウハウを融合した新クラウドサービスで、基幹システムでも安心して使える高品質なトータルサポートを提供する。2015年12月から半年で1000件の商談があり、現在180システムが稼働している。成約案件の7割がSoR(CRM、ERPなど)で、既存システムからの移行案件は5割となっている」と、「K5」の事業概況について言及。

 「今回の提携によって、『K5』のオプションとして『Oracle Cloud』を提供し、『K5』の環境と『Oracle Cloud』をスピーディなネットワークで自由に組み合わせて利用可能となった。ユーザーは、『K5』ポータルから『Oracle Cloud』をいつでも利用・追加できる。サポートについても、統一サポートデスクによるワンストップサポートを提供する」と、「K5」と「Oracle Cloud」との連携メリットを訴えた。

富士通 執行役員専務 デジタルサービス部門長兼CTOの香川新吾氏

 さらに富士通では、「K5」に設置する「Oracle Cloud Applications」の第一弾として、「Oracle HCM Cloud」を提供するとともに、富士通グループでの社内利用を開始するという。「『Oracle HCM Cloud』は、人材管理やタレントマネジメントをクラウド型で提供する人事アプリケーション。富士通グループの社内利用では、まずタレントマネジメント領域から活用を開始し、国内の富士通データセンターでセキュアに人事データを管理していく。そして、社内実践で得た知見やノウハウを、顧客へのサービス提供に活用していく」(香川氏)としている。

 なお、富士通からの「Oracle Cloud」の提供開始時期は、今年度第4四半期を予定している。

 発表会の最後に、日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏が登壇。「富士通は80年以上、当社は約40年、合わせて120年以上の叡知を結集して、ミッションクリティカルなエンタープライズ・クラウドへの移行を支援する。これにより、日本企業の生産性と価値を高めていく。とくに、日本企業が直面している少子高齢化やグローバリゼーションといった課題に対して、クラウド人事サービスを安心・安全な環境でグローバルに展開していく。さらに、富士通のデータセンターから『Oracle Cloud』を提供することで、レベルの高いエンタープライズ・クラウドのサービスを国内外の企業に向けて展開していきたい」との考えを述べた。

日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏
左から:富士通の阪井洋之常務、富士通の香川新吾専務、富士通の山本正己会長、日本オラクルの杉原博茂社長、日本オラクルの高橋正登執行役員