事例紹介

Web会議で遠隔商談、「V-CUBE」でゼロからのマーケット創出に成功したシナジーマーケティング

長谷川祥氏

 営業活動で課題となるのが「遠隔地の顧客対応」だ。営業拠点から遠く離れたところにニーズがあっても、営業に伴う経費を考えると、どうしても確度との兼ね合いになる。結果、遠隔地への営業アプローチをあまりできていない企業も多いだろう。

 そんな課題に対し、Web・テレビ会議を応用した新たなソリューションを提供するのが、株式会社ブイキューブだ。遠隔地の顧客とも対面による円滑な商談を可能にする「V-CUBE セールス&サポート」で、営業の革新を提案している。

 この「V-CUBE セールス&サポート」をシナジーマーケティング株式会社が導入した。その効果について、同社 SFBD室 副室長兼Synergy! LEADプロジェクトマネージャーの長谷川祥氏に話を聞き、新しい営業の可能性を探ってみた。

遠隔営業を実現する「V-CUBE セールス&サポート」

 まず、「V-CUBE セールス&サポート」について簡単に説明する。ブイキューブは、Web会議「V-CUBE ミーティング」、Webセミナー「V-CUBE セミナー」、ペーパーレス会議「V-CUBE ドキュメント」、電話会議「V-CUBE ボイス」、動画アップロード・ライブ配信「V-CUBE ビデオ」など、さまざまなシーンに適したサービス群を提供しており、「V-CUBE セールス&サポート」は営業・サポート業務にWeb会議の技術を応用しようというものだ。

 遠隔の顧客へメールを送ってWeb会議に招待し、対面での商談を実現する。WebベースのSaaSとして提供されるため、インターネット接続環境さえあれば利用できる手軽さを備える。商談中には、画面上でWord/Excel/PowerPoint/画像ファイルを顧客と共有し、書き込みも可能な「ホワイトボード」や、スタッフ専用の個人メモとして利用できる「個人ホワイトボード」といった機能も利用可能だ。

顧客から見た画面

 特筆点としては、2013年8月にSalesforceとの連携機能も搭載した。Salesforceの顧客管理画面上に「V-CUBE」のアイコンが表示され、直接その顧客へWeb会議への招待状が送れるほか、そこでの商談内容を音声や動画でSalesforce上に記録可能となった。

履歴をSalesforce上に記録

 ブイキューブでは「営業・サポート活動において、電話だけでは伝えたい情報をきちんと伝えるのが困難な場合がある。特に口頭説明だけで顧客の理解を得ることが難しい商材の営業活動では、適切な情報提供ができていない段階で訪問し、商談するということがあった。カスタマーサポートにおいても同様で、“同じ資料やPC画面を見ることができれば、一目で分かるのに”というストレスを企業側と顧客側の双方が抱えていた。V-CUBE セールス&サポートは、その解決策となる」と説明している。

 シナジーマーケティングがこの「V-CUBE セールス&サポート for Salesforce」を導入したのにはどのような背景があったのか。

遠隔地の見込み顧客には対応できないこともあった

シナジーマーケティングのサービス一覧

 シナジーマーケティングは、CRMを中心としたWebマーケティング全般をサポートしている。CRMのクラウドサービス提供と、CRMを核にしたコミュニケーション設計を支援する「エージェントサービス」と呼ばれるコンサルティングの2点を事業の柱とする。

 サービスには、マーケティングナビゲーター「Synergy!360」を筆頭に、コミュニケーション・プラットフォーム「Synergy!」、ケータイ集客支援「チョイモビ」、社会知データベース「iNSIGHTBOX」、Salesforce CRMにマーケティングオートメーション機能を拡張する「Synergy!LEAD on force.com」がある。

Synergy!360ダッシュボード
Synergy!360キャンペーンレポート画面

 「Synergy!LEAD on force.com」においては、米salesforce.comと2010年10月に資本業務提携を行い、国内で初めて出資を受けた。SalesforceのVAR(付加価値再販)契約も結んでおり、salesforce.comとはアプリケーションパートナーであり、リセラーでもあるという立場だ。こうした経緯から同社の営業活動にもSalesforceが活用されていた。そのため、「V-CUBE セールス&サポート for Salesforce」は導入しやすい環境にあった。

Synergy!LEADの位置づけ
Synergy!LEADでできること

 用途は「遠隔地への営業」である。シナジーマーケティングは拠点を大阪(本社)と東京に持つため、二大都市近郊は直接訪問できるし、名古屋・九州・四国にはパートナー企業がいるため、問題なく対応できた。しかし、ブランド認知度が上がるにつれ、より遠方への商圏拡大と営業経費の削減に迫られ、「例えば、北海道からもニーズをいただくのですが、対応できていませんでした」と長谷川氏は語る。

 同社には、顧客からの問い合わせなどを集約、案件化して営業に引き渡すマーケティング部門が存在し、数百件/月の見込み顧客対応を行っている。問い合わせ後、資料送付の到着を見計らって、電話でファーストコンタクトを取るが、どうしてもそこは耳だけのコミュニケーション。「質問があれば、こちらからお電話します」と形式的なお断りで会話が終わってしまうことも多かった。「まだリレーションが築けていない、検討中の状態では、電話は難しい。直接訪問するのがベストですが、確度に関係なく商談に出向けばコストがかさんでしまう」(長谷川氏)。そんなジレンマがあった。

 特に遠方の顧客がいた場合、電話で対応して同地域に3~4件の案件がまとまったら訪問していた。「実際、電話だけでクローズする案件は1つもありません。地方のお客さまは訪問すると喜ばれることもあって、訪問が重要なのですが、どうしてもそこまでカバーするのが困難でした」(長谷川氏)。

 これらの課題を解決するために、「V-CUBE セールス&サポート for Salesforce」がベストだった。

 「特にSalesforceと連携している点を重視しました。まず、顧客との接触履歴が残るので、リードをフォローした後から営業に引き継ぐ際にもスムーズにできる。情報の可視化と共有も可能となり、営業力の向上にもつながります。そういった意味でも、やはりSalesforce連携は必須条件でした」(長谷川氏)。

効果は「ゼロからのマーケット創出」

 実際の効果はどうだったのか。遠隔地へWeb会議での商談を始めてみたところ、「これまで北陸・東北・北海道はパートナー企業もなく、営業コストもかかるということで、積極的な営業対象からは除外していたのですが、Web会議を採り入れたことで、北陸から成約が挙がりました」。つまり、「まったくゼロの状態からマーケットを創出できた」(長谷川氏)というわけだ。

 確度がはっきりしない案件でも「V-CUBE セールス&サポート for Salesforce」で気兼ねなく対面商談できる。また、耳だけの電話よりも、画面越しでも顔を合わせた方が会話は弾む。「最初にWeb会議で顔つなぎして、課題や解決方法が具体化してから訪問することで、“訪問される威圧感”をお客さまに与えることがなくなりました」(長谷川氏)と、そんな効果も得られた。

 相反することも多い「営業経費の削減」と「営業の効率化」が両立したわけだ。「今後は未開拓だった遠隔地にも積極的にWebプロモーションを展開する予定」(長谷川氏)という。

今後の展望「サポートにも活用」

 V-CUBEのいい点は「オープンなところ。ハードが要らず、Webに接続さえできれば利用できるところ」と長谷川氏。一方で、「当社から招待された人がハブになってその地域の顧客を招待する機能があると面白いですね」と、機能面での要望を語る。

 今後の展望としては、営業活動だけでなく、サービス導入後のサポートにも「V-CUBE セールス&サポート for Salesforce」を使いたいという。現在、同社では導入前でおおよそ「4回」の商談、導入後サポートは「2週間に一度を6カ月間」を基本としている。つまり、導入後の方が顧客との接触回数は多いのだ。「その部分をV-CUBEでまかなえると、コストがぐっと下がります。その分、お客さまへ還元することが可能となります。例えば、訪問回数を減らせればサービスを安価に提供できる。その分をマーケティング投資としてエージェントサービスを勧められます。そうすることで、クラウドサービスとエージェントサービスの両輪から企業のマーケティングを支援できるようになります」(長谷川氏)。

 拠点を多く持たない限り、遠隔地への営業は難しい。特に(IT市場もそうだが)案件がクローズするまでに時間がかかる業界では、商談の回数もかさみがちで、それらすべて実訪問で行うのは不可能に近い。今回の事例は、そういった課題を抱える企業への「シンプルな解答」と言えそうだ。「Web会議といえば身内のみの打ち合わせ」という固定概念を破った先に、案外あっけないほどの営業改革の道が開けている。

川島 弘之