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マネージドサービスの変革で“攻め”のデータセンタービジネスを――コムスクエア

パトロールクラリス ファミリー
コムスクエア
https://patrolclarice.jp/

クラウドサービスの普及を背景に、国内のデータセンター市場規模はここ数年、拡大傾向が続いている。一方で、メガクラウドを対象にした巨大データセンターや海外勢の台頭により、既存のデータセンター事業者は厳しい競争にさらされている。そんな中コムスクエアは、データセンターが提供するマネージドサービスを強化・差別化するためのシステム運用ツールを中心とした製品群「パトロールクラリスファミリー」で、データセンター事業者のビジネスを支援する。

データセンター市場が拡大する一方で競争が激化

 国内のデータセンター市場規模は近年拡大傾向にあり、業界として毎年200億円以上の拡大が想定されている。背景にはクラウドサービスの普及があり、データセンターの大口顧客であるメガクラウドサービスプロバイダーの需要が高まっている。コロナ禍の影響もほとんどなく、逆にリモートワークやインターネット上のサービス利用拡大における追い風を受けて、需要を伸ばしている状況だ。

 ただし、すべてのデータセンターが安泰というわけではない。国内でもハイパースケールデータセンター(HSDC)の新設ラッシュが続いており、2028年までにHSDCのラック数は従来型データセンターのラック数を上回ると予想されている。

 一方で、海外のデータセンター事業者も台頭してきている。土地代や人件費が安い海外のデータセンターは低コストでのサービス提供が可能で、特に従来型データセンターにとって競合する場面が増えている。

 こういった状況を捉えてコムスクエア 執行役員の田嶋規明氏は、「市場競争の激化とともにデータセンター事業者の淘汰が始まっていきます」と見ている。

株式会社コムスクエア 執行役員 田嶋規明氏

 では、生き残るデータセンターとなるためには何が必要だろうか。市場競争を乗り越えるために、ハウジングやコロケーションといった“ハコ売り”だけではなく、どのような付加価値を提供できるかが鍵を握っている。

 「サービスコスト削減のような守りの戦略に向かうのではなく、攻めの戦略として、サービスのブラッシュアップを通じて他のデータセンターとの差別化を図っていくことが不可欠です」と田嶋氏は説く。そして「コムスクエアが提供するパトロールクラリスファミリーはマネージドサービスを変革し、競争が激化するデータセンター市場において一歩先ゆくビジネス展開を支援します」と訴求する。

 ここでいうパトロールクラリスファミリーとはいかなるものなのか。コムスクエアは1989年の創業時からデータセンターを自社運用しており、そこで利用するサーバー監視・ネットワーク監視運用ソフトウェアも独自開発してきた。これがパトロールクラリスファミリーの原型であり、10年以上にわたりブラッシュアップを重ね、2005年に商用化されたという経緯をもつ。販売開始から17年の歴史を持ち、現在ではパトロールクラリスファミリーのユーザー企業は4,000社以上に拡大している。データセンター事業者はもとより、クラウド事業者、マネージドサービスプロバイダー(MSP)、大手企業などの運用のプロフェッショナルからも高く評価されるIT運用自動化ソリューションとなった。

 パトロールクラリスファミリーは、データセンター向け監視運用基盤「パトロールクラリス」、マネージドサービス自動化プラットフォーム「ロボシュタイン」、などで構成されている。

 マネージドサービスを強化するこれらのプロダクトの特徴について、「監視性能」「運用・管理機能」「自動化」の3つの視点からさらに掘り下げていこう。

高次元な監視サービスで変化する顧客ニーズをすべて実現

 まずは「監視性能」によるマネージドサービスの強化だ。

 近年、企業のシステム環境は複雑化の一途を辿っている。そのため、マネージドサービスを提供するデータセンター事業者では顧客の要望に応えるためにメニュー外の個別カスタマイズを繰り返したり、複数の監視ツールを併用している事例が少なくない。この課題をパトロールクラリスファミリーが解決し、拡張されたマネージドサービスのメニュー化を実現するのである。

 これにはいくつかのポイントがあるが、前提として、パトロールクラリスファミリーはマネージドサービスの監視基盤として利用することを想定しているため、すべての監視項目でエージェントレスを採用している。データセンター利用顧客の多くが自社のサーバーに監視用のエージェントを設置することに抵抗がある。そのため、監視対象機器に対して、個別に行わなければならなかったエージェントのインストールやアップデートの作業が不要となり、顧客環境で稼働中のシステムを止めることなく、負荷をかけずに導入して監視を行えるエージェントレス製品を必須要件とするデータセンター事業者が多いのも事実だ。

 エージェントレスでは監視レベルも低下してしまうのでないかと危惧するかもしれないが、パトロールクラリスファミリーに関しては心配無用である。「SNMP(Simple Network Management Protocol)だけでなくSSH(Secure Shell)やTelnetなどさまざまなプロトコルを通じて監視対象機器と接続し、あたかも人間のオペレーターがコマンドを打って取得するのと同等の情報をもとに監視を行うことができます」と営業部リーダーの鈴木聡志氏は強調する。

株式会社コムスクエア 営業部 リーダー 鈴木聡志氏

 実際にパトロールクラリスファミリーは死活監視、接続監視、SNMP監視、Web監視、サービス監視、セキュリティ監視、パブリッククラウド監視、ログ監視、リソース監視、ハイパーバイザーリソース監視、ハイパーバイザーログ監視、ハイパーバイザー構成監視といった種別において60種以上の豊富な監視機能を搭載している。オンプレミスの仮想環境からマルチクラウドまでカバーした統合的な監視が可能となる。

 標準の監視テンプレートで実現できない監視要件に関しては、高い拡張性をもつコマンド系の監視(カスタマイズ監視、チャット監視、コマンド実行監視)を有している。この監視機能を活用して、「冷却ファンの回転数が落ちてきた」「機器内温度の推移」「電源状態」「HDDのRaid状態」「DBの特定テーブルサイズの推移」「クラスター構成の状態」など、顧客からの個別要望に合わせたマニアックな監視を行っている事例もあるという。

 つまり、パトロールクラリスファミリーを活用することにより、データセンター事業者は利用する監視ツールを一本化し、追加の監視スクリプトの開発をせずとも顧客の監視要望を実現することが可能になる。これは近年、技術者の不足・高齢化といった課題を抱えるIT業界全体にとっては、大きなメリットといえる。

 さらにパトロールクラリスファミリーはコンテナなどの新しい概念にも追随していく予定で、「時代とともに増え続けるシステム監視の範囲を拡大していきます」と鈴木氏は訴求する。 あるデータセンター事業者では、こうしたパトロールクラリスファミリーの特徴を生かすことで時代のトレンドに追従した監視機能の拡充を図り、マネージドサービスの売上高を5年間で4倍に増加させたとのことだ(図1)。

図1 パトロールクラリスファミリーを採用した某データセンターにおけるマネージドサービスの売上年間推移

運用の効率化とサービスの利便性向上を同時実現する豊富なAPI

 次は「運用・管理機能」によるマネージドサービスの強化である。

 多くのデータセンターでは監視ツールとその他の外部ツールとの連携がままならず、例えば、監視設定や変更などの作業を手作業で行い、顧客が増えるたびに膨大な監視設定作業が発生して人員のリソースを圧迫し、なかなかマネージドサービスの拡大を図ることができないといった悪循環に陥っている。

 パトロールクラリスファミリーには、データセンター運用に大幅な効率化をもたらす運用・管理機能が多数搭載されている。

 前述した監視設定の課題に対しては、監視情報の一括登録により設定作業の負荷を軽減する。「パトロールクラリスファミリーでは監視対象機器の情報や監視情報をCSVで一括して設定するとともに、テンプレート化することが可能です。以降の機器はこのテンプレートを適用するだけで設定・更新を行えます。一般の企業では、監視設定作業は一度やってしまえば終わりですが、データセンター事業者の場合顧客が増えるたびに監視設定作業が定常的に発生しますので、こういった機能がデータセンター事業者からとても喜ばれます」(鈴木氏)

 また、パトロールクラリスファミリーは豊富なAPIを有している。これは、監視ツールでは珍しいことだ。運用時に欠かせないインシデント管理ツールや顧客に提供しているポータル画面などがある場合、監視ツールをリプレイスする際には、他の連携ツールも併せて検討しなければならない。そのため、データセンター事業者にとって監視ツールのリプレイスは、ハードルが高いものとなっている。パトロールクラリスファミリーはAPIを活用することにより、既存ツールに手を加えることなく、容易に連携できる。

 パトロールクラリスファミリーには、機器や監視設定といった登録情報だけでなく、アラートや障害履歴の詳細などもすべて外部に出力するためのAPIも用意されている。そのため、データセンター事業者のように膨大な監視情報を取り扱う場合でも、運用・管理を効率化することができる。

 例えば、データセンター事業者のポータルサイトとパトロールクラリスファミリーをシングルサインオン(SSO)で連携させたり(図2)、インシデント管理など既存の運用管理システムと連携して運用を省力化したといった実績がある。

図2 事業者とシングルサインオン連携したAPI活用例

 「パトロールクラリスと自動化ロボットをAPIで連携することで監視登録作業を全自動化し、作業時間を72%、人による工数を100%削減した例もあります」(鈴木氏)

 パトロールクラリスファミリーは、顧客への画面提供にも対応している。ユーザーごとの権限に応じて、利用できる機能に制限を設けた個別の画面テンプレートを割り当て、ユーザーセルフ型のマネージドサービスを提供することが可能となる。これによりユーザーはサーバーのリソース状況などを把握したいときにデータセンターに問い合わせることなく、自ら管理画面を開き、レポートを確認できる。

 細かいところでは、この顧客提供画面にサービス提供事業者のロゴを入れるといったカスタマイズも可能とのことだ。

運用の現場から自動化サービスを生み出し、人は人にしかできない業務へシフト

 最後が「自動化」によるマネージドサービスの強化だ。

 前述したようにパトロールクラリスファミリーは、データセンターの運用現場で開発されたサーバー監視・ネットワーク監視運用ソフトウェアを発祥とするという経緯があり、運用者目線に沿った自動化プラットフォームを提供しているのが大きな特徴だ。

 営業部 マーケティングチームの 月田圭亮氏によると「パトロールクラリスファミリーでは標準機能として、無駄なアラートを抑制することで重要な障害をいち早く検知するアラートフィルタリング機能、各種ツールやサービスと連携して自動化を図る豊富なアクション機能などを搭載しており、障害の一次対応を完全自動します」

株式会社コムスクエア 営業部 マーケティングチーム 月田圭亮氏

 パトロールクラリスファミリーの自動化プラットフォーム「ロボシュタイン」はGUI上にチャート形式でわかりやすく表示し、自動化フローの設計・変更を行える(図3)。

図3 フローチャート形式で運用者でも自動化フローが構築可能

 従来の運用自動化製品はコーディングが必須なものが多く、開発リソースに依存してしまうことが運用自動化の障壁になることもあったが、この自動化プラットフォームであれば、運用者が今まで自ら行っていた運用業務を自らの手で手順化・再現できる。

 「人を人にしかできない高度な判断やクリエイティブが重視される業務へシフトし、より低コストかつ高品質、高付加価値のマネージドサービスを実現できます」と月田氏は強調する。

 あるシステム運用サービス事業者は、多数の監視対象サーバーの情報をパトロールクラリスファミリーに統合した。これにより、障害調査(障害発生機器への調査コマンド発行)から顧客への通報(電話、メール、チャット)、復旧(再起動など)、チケット起票(アラート内容、対応状況の自動起票)、エンジニアへのエスカレーション(電話、メール、チャット)といった一時対応をすべて自動化した。

 この結果として、障害発生時の一時対応を200時間から90時間に短縮(55%減)、エスカレーションによる解決を70時間から14時間に短縮(81%減)、対応不要な障害の見極めを100時間から3時間に短縮(97%減)し、合計で253時間もの工数削減に成功している。(図4)

図4 障害時オペレーションを自動化した例

 こうしたパトロールクラリスファミリーによる効果は業界でも広く知られるところとなっており、インターネットイニシアティブ(IIJ)やユニアデックス、TDIシステムサービスといった有力企業もパトロールクラリスファミリーを活用することでマネージドサービスの自動化や高付加価値化を推進している。

(パトロールクラリスファミリー導入事例:https://patrolclarice.jp/case_top)

 コムスクエアでは顧客の声を生かすサポート体制にこだわり、自社サポートセンターによる迅速な対応を行うほか、世の中で高まっている新たなニーズやテクノロジーのトレンドをパトロールクラリスファミリーにタイムリーに反映すべく、さらなる機能追加/拡張に向けた製品開発を進めている。また、顧客ごとの固有業務に必要な機能追加や画面のカスタマイズなどが必要になった際にも柔軟に対応している。

 田嶋氏は「パトロールクラリスファミリーのバージョンアップ時のお客様のご要望反映率は80%以上です。お客様のデータセンターの運用上の課題や改善要望を私どもに何でも気軽にご相談ください」と呼びかける。

 近年、データセンター事業のコスト削減といったトピックは多く話題に挙がるが、コスト削減はあくまで「守り」の戦略である。

 冒頭述べたように、データセンター事業者の淘汰が始まりつつある業界事情を踏まえると、今回コムスクエアが語った「マネージドサービスの変革」は日々変容を続ける企業のシステム環境の監視ニーズを解決し、「ハコ売り」からの脱却をはかるひとつの手段、いわば「攻め」の戦略であると感じた。

データセンター事業者向け「パトロールクラリスファミリー」の資料ダウンロードはこちらから

https://patrolclaricefamily.satori.site/4datacenter

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株式会社コムスクエア

電話番号:03-4455-1040

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