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Windows Server 2022リリース!
HPE 日本に聞く、ハイブリッドクラウド時代のWindows Server戦略

2021年9月1日(米国時間)に正式リリースされたWindows Server 2022。同OSはセキュリティ、クラウド連携、コンテナーの強化・改良などを主な特徴とするが、このうちクラウド連携に関しては、サーバー製品を日本企業に販売してきたOEMベンダー各社のビジネスにも影響を与えるものと思われる。そこで今回は、日本ヒューレット・パッカード合同会社の木村剛氏と片山嘉彦氏に、同社のWindows Server市場における戦略についてお聞きした。(文中敬称略)

日本ヒューレット・パッカード合同会社 コアプラットフォーム事業統括 サーバー製品本部 本部長 木村剛氏(左)とプリセールスエンジニアリング統括本部コンピュート技術部・ITスペシャリスト 片山嘉彦氏(右)

現行機種はすべて動作認定済み!

HPE ProLiantサーバーは、Compaq時代の1993年に世界初のラックマウント型x86サーバーをリリースするなど、市場そのものを作り出してきた、x86サーバーの代名詞とも言える存在だ。まずは、Windows Server 2022への対応状況からお聞きした。

木村: HPE ProLiantにはタワー、ラックそれぞれに豊富なラインアップがあり、同じセグメント内でIntel CPU搭載モデルとAMD CPU搭載モデルをご用意しています。モデル数は相当な数になりますが、現行機種はすべてWindows Server 2022に対応しています。

片山: より具体的に言うと、HPE ProLiant最新機種の世代は、Intel CPU搭載モデルはGen10 Plus、AMD CPU搭載モデルはGen10 Plus v2になります。厳密には素のGen10は1世代前に当たるわけですが、これも含めてWindows Server 2022に対応しています。

HPE ProLiantサーバーの主なモデル。現行製品はすべてWindows Server 2022の動作認証済み

Windowsサーバー市場におけるHPEの強みとは

木村: HPE ProLiantはWindows NTから続くWindowsサーバーOSと同じ長さの歴史を持つわけですが、この市場におけるHPEの強みには、HPE ProLiant自体が持つ価値とマイクロソフトとの連携で生まれる価値があると考えています。

先にマイクロソフトとの連携について説明すると、競合他社よりも長いパートナーシップの歴史があり、緊密な関係が保たれています。これにより、競合他社よりもスピーディに動作認定が出せるようになっています。先ほど述べた全現行機種でWindows Server 2022動作認定済みというのも、この緊密な連携があってできたものです。

それから、認定対象はOSの動作だけではなく、周辺ツールにも及んでいます。例えばメディアレスでOSをインストールするためのIntelligent Provisioningというツールがありますが、このツールもWindows Server 2022が利用できるようになっています。

片山: マイクロソフトとの連携としては、ツール間の連携もあります。マイクロソフトはWindows Serverの管理ツールとして、Windows Admin Centerを無償提供されていますが、このツールはプラグインで機能を拡張することができ、HPEでもハードウェアレベルの管理・監視を可能にするプラグインを提供しています。これを利用することで、ハードウェアとソフトウェアを一元的に管理することが可能です。

独自のセキュリティ機能とWindows Server 2022でより強固なサーバーを

木村: 先ほどHPE ProLiant自体が提供する価値があると話しましたが、
HPEのProLiant開発方針と、マイクロソフトのWindows Server開発方針が、同じ方向を向いているように感じていまして、特にそれを強く感じるのがセキュリティとクラウド連携の分野です。

セキュリティについては、HPE ProLiant Gen8のときから力を入れてきましたが、Gen10ではリモート管理機能のIntegrated Lights-Out(iLO)に、ファームウェアの改ざん検知、修復機能を実装しています。

Windows Server 2022にも「Secured-core Server」の一部としてファームウェア保護が追加されていますが、これはiLOのファームウェア保護機能と競合するものではなく、ハードウェアとOSの二重の保護でより安全性を高めるものと考えています。

それからセキュリティに関する取り組みとしては、工場を出荷してからお客様のお手元に届くまでの流通経路で、サーバー構成が改変されていないかを検知する機能を実装し、デジタル証明書をご提供しています。設計、製造、物流のトータルでどうセキュリティを担保するのか、そういうところまで気にされるお客様が通信事業者を中心に増えてきている印象ですね。

クラウド連携でオンプレミスのサーバーでも運用レスに

木村: 一方、クラウド連携に関しては、オンプレミスのサーバーの監視サービスをクラウドベースで提供しています。「HPE InfoSight」というサービスですが、これはプッシュ型でサーバーから取得した情報をクラウド上のAIで分析して、障害の予兆をいち早く検知、予防保守を行うといったサービスです。リモート監視サービスは従来からありましたが、AIによる傾向分析、クロススタック分析で精度とスピードを高め、高いサービスレベルを実現しているのが特徴です。

こうしたサービスを始めた当初は、オンプレミスのサーバーをインターネットに繋ぎたくない、というお客様が多かったのですが、ここ3~4年はクラウド利用が広がり、抵抗感が薄くなってきたせいか、便利なクラウドサービスは積極的に活用しようという土壌が育ってきたように思います。

片山: HPE InfoSightはストレージ製品を対象に始めたもので、現在のところはストレージ製品に関連する機能が先行しているのですが、サーバー製品に関しても例えばホットパッチ適用の効率化機能など、日々開発が進んでいますので期待してほしいですね。

HPEのサーバー監視の変遷

木村: 当社がこうした取り組みを始めてから、それなりの年月が経っていますが、1社で頑張ってもなかなかお客様には浸透しにくい。業界全体で市場を持ち上げていく必要があります。そうした中で、マイクロソフトがクラウド連携を全面に押し出しているのは強いメッセージになります。Windows Server 2022はクラウド連携を大前提としたOSですから、こうしたOSが登場し、お客様が馴染むにしたがって、インテリジェントなインフラ管理サービスへのニーズも拡大するものと期待しています。

Windows Server 2022の普及は早い? その理由

サーバーOSの移行はゆっくりと進むものというのが通例だが、Windows Server 2022への移行はスムーズに進むのでは、と木村氏は語る。

木村: コロナ禍で予定されていたサーバー更新を先送りにした、というお客様がかなり多いんですね。そしてコロナは収束していないものの、Windows Server 2012/2012 R2のEOS(End of Support)を2023年10月に控え、これ以上先延ばしできないサーバーがたくさんある。こうした状況から、Windows Server 2022への移行は意外と早く進むのでは、と見ています。

Windows Server 2022専用にパッケージ化した移行支援サービスは今のところ提供していませんが、OS移行に関しては、既存環境の利用状況の調査から、データのバックアップ、新規環境の構築、データ移行といった一連のサービスを提供していますので、それを利用してWindows Server 2022の導入を支援することが可能です。また、カスタマイズや初期セットアップ、設置までを支援する「HPE Factory Express」というサービスも提供しています。

また、HPEには国内3,000社以上の認定販売パートナー様がいらっしゃいますので、身近なインテグレーター様にご相談をいただくのもよろしいかと思います。

さらにHPEでは、オンプレミスのサーバーでもクラウドと同じ従量課金でご利用できる「HPE GreenLake」というサービスを提供しています。これをご利用いただくと、初期コストを抑えつつ、オーバープロビジョニング(過剰なリソース導入)による無駄な出費を削減することが可能です。使っていなかったリソースを有効にするだけでリソース調達ができますから、調達スピードも早くなります。

コロナ禍が収束しても、ハイブリッドなワークスタイルは定着すると言われています。そうすると、オンプレミスのいいところとクラウドのいいところを両方享受できるようなモダンなITシステムが主流になると思います。むしろ、日本の国力を上げていくためには、主流にしていかなければならない。HPEとしては、クラウド連携を前提とした使い方を訴求していきたいですし、そのためにもマイクロソフトとの連携をより強固にしたいですね。