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世の中が急速に変化する今だからこそ求められる、データセンター事業者の運用支援――IDCフロンティア

 新型コロナウィルスの流行や働き方改革の加速、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進など、企業におけるITのあり方が急激に変化している昨今、ITインフラを預かるデータセンター事業者へのニーズは多様化し、データセンターが担うべき役割も変わりつつある。

 コロナ禍の今、顧客からどのような要望が増えているのか、それに対してデータセンターがどのように対応しているのか。首都圏と関西圏に都市型データセンターを、九州・東北など国内各地に郊外型データセンター拠点を有し、さらにクラウドサービスも提供しているIDCフロンティアに話を聞いた。

コロナ禍におけるデータセンタートレンドとIDCフロンティアの対応

①ネットワークトラフィックの増大

 コロナ禍による大きな変化としてまず挙げられるのが、インターネットトラフィック(通信量)の増加だ。インターネットを利用したリモートワークやミーティングツール、コラボレーションツールの活用など理由はさまざま考えられるが、日本のみならず世界中でトラフィックが飛躍的に増加していることは間違いない。

 ITインフラの基盤を預かるデータセンターではその影響はあるのだろうか。IDCフロンティア データセンター本部 企画開発部 サービスグループの菅野晋輔氏は、「コロナ禍の影響で実際にネットワークの流量はかなり増えています。ただ、IDCフロンティアのバックボーンネットワークは現在、960Gbpsと豊富な回線総量を保有しておりますので、帯域の逼迫はしていません」と語る。

 IDCフロンティアは2001年のデータセンターサービス開始当初からバックボーンネットワークを段階的に増強し続けているため、コロナ禍よるトラフィック増大にも十分対応ができている。

株式会社IDCフロンティア データセンター本部 企画開発部 サービスグループ 菅野晋輔氏

②クラウドサービスの活用

 リモートワークの導入により出社せずに仕事をとはいっても、IT担当者はなかなかそうもいかない。何かトラブルがあれば社内のサーバー室、もしくはデータセンターに出向いて対応することになる。そこで、移行できる業務についてはクラウドへと考えるのは当然の流れだ。クラウドサービスを利用するのであれば、機器の運用管理やトラブル対応が必要ないからだ。

 「当社ではデータセンターサービスもクラウドサービスも提供しており、そのどちらかをご利用のお客様もいらっしゃれば、両方ご利用のお客様もいらっしゃいます。データセンターをご利用のお客様がクラウドサービスも利用するというケースは増えていますし、逆にクラウドサービスをご利用のお客様がコストを抑えるためにデータセンターを利用するケースもあります」と菅野氏。

 コロナ禍による影響というよりは、使い方や業種業態などにより利用するプラットフォームを選ぶ企業が多く、セキュリティを重視する使い方であればデータセンターで、立ち上げは拡張縮退が容易なクラウドサービスを利用して落ち着いたらデータセンターへ移行するといったエンターテインメント系企業も多いという。

③申し込み手続きをオンラインに

 2020年はコロナ禍により「押印廃止」が一つのトレンドとなったが、IDCフロンティアのユーザーにもそれに近い動きがある。それが、オプションサービスなどのオンライン申し込み増加だ。

 IDCフロンティアではデータセンターを利用中のユーザーにカスタマーポータルサイトを提供している。各種手続きや履歴確認、各種情報変更などをオンラインで行うことができ、コロナ禍以降はこのポータルサイトでのサービス追加の申し込みをするユーザーが多くなっている。

 「以前であれば社印を押した紙でお申し込みというお客様も多かったのですが、コロナ禍でお客様のルールも変わられて、オンラインでお申し込みいただくケースが増えています」と菅野氏は言う。

 さまざまな追加サービスへの申し込みがあるが、中でも増えているのはクラウドサービスへのネットワーク接続依頼だ。IDCフロンティアでは主要な拠点を閉域網で結び、さまざまなサービスとの相互接続が可能だ。ハウジングとクラウドサービスを同一センター環境下や、センター間での閉域網内でセキュアに接続するハイブリッドクラウドの構築も容易となっており、IDCフロンティアのクラウドサービスやその他パブリッククラウドへの閉域網内接続を望むユーザーが増えているという。

④運用管理のアウトソーシングが加速

 新型コロナウィルスの感染拡大を抑えるためにリモートワークを導入したり、出張などの移動を制限したりしている企業は多い。ではデータセンターへ来館する人数にも変化はあるのだろうか。

 「コロナ禍の影響で、データセンターへの来館については半減、とくに郊外型のセンターの場合は7割減と、来館者は大きく減っています」と話すのは、IDCフロンティア データセンター本部の川越宙氏。もともとIDCフロンティアのデータセンターは来館者が少ない上に、コロナ禍によりこの減り方である。しかし、システムに何かトラブルが発生すれば、データセンターに出向かなくてはならないケースはある。それをカバーするのが、IDCフロンティアの提供するオンサイトでの運用支援サービスである。

 IDCフロンティアの運用支援サービスは、データセンターを利用する顧客向けに、サーバーのラッキングやOSインストールなどの機器構築をはじめ、システムの監視から故障対応までを、IDCフロンティアが顧客に代わって一括運用するマネージドサービスだ。

株式会社IDCフロンティア データセンター本部 川越宙氏

 コロナ禍だからといって新たに作られたサービスではない。「郊外型のデータセンターではもともと入館不要を標榜し、来館いただかなくても運用はお任せ下さいというところで、運用支援を提供してきました。それがコロナ禍でのお客様からのニーズにちょうど合致した形です」と話すのは、IDCフロンティア カスタマー本部 サイトオペレーション部の片寄光大郎氏だ。

 次章ではIDCフロンティアのデータセンターサービスにおける最大の特徴とも言える運用支援サービスについて紹介する。

株式会社IDCフロンティア カスタマー本部 サイトオペレーション部 片寄光大郎氏

IDCフロンティアの運用支援サービス

一歩踏み込んだ運用支援サービスを提供

 IDCフロンティアでは現在、新型コロナウィルスの感染防止のため、データセンターへの来館を極力控えてもらっている。そのため、工事やメンテナンスなど、どうしてもという場合を除いて、来館者は大幅に減少している。だからといって作業そのものがなくなるわけではない。顧客だけでなく取引先であるベンダーやSIerも移動が難しい今、来館できない分の作業を担うのが、IDCフロンティアの運用支援サービスだ。

 IDCフロンティアが福岡北九州データセンター(アジアン・フロンティア)の運用を開始したのが2008年。2012年には福島白河データセンターの運用が始まった。同年、運用支援サービスの一つである「サーバー基礎構築サービス」が、翌2013年には「オンサイト運用アウトソーシングサービス」もスタートした。利用者が来館することなく、郊外型のデータセンターを利用してもらうためのサービスだ。

 「どのような作業を代行するとお客様はセンターに来館しなくて済むのか、お客様と一緒にメニューを考えながら、サービスを構築しました」と片寄氏はサービス立ち上げの経緯を話す。

  • ラックにマウントしたサーバーのメモリやSSDの交換作業
  • サーバーを別のラックに移設する作業
  • サーバーのBIOS設定変更作業
  • 機器の棚卸しや資産管理シールをラック内の機器に貼る作業

 これはIDCフロンティアがオンサイト運用アウトソーシングサービスで、ユーザーの立ち会いなしに対応した作業例だ。他のデータセンター事業者の運用代行ではあまり行われない作業にも一歩踏み込んでサービスとして対応するのが特徴だ。

Webカメラでリアルタイムに作業映像を確認

 ユーザーの立ち会いなしに対応とはいっても、作業によっては指示のしにくい、あるいは作業者が理解しにくい作業もある。

 オンサイト運用アウトソーシングサービスでは、カメラサーバーでリアルタイムに作業映像を確認することが可能だ。電話や文章では伝わりにくい色や方向など、実際のWebカメラ映像を見ながら指示することができるため、顧客は安心して作業を任せることができるし、データセンター側としても間違えることなく正確に作業できることがメリットだ。

 このカメラサーバーによる作業のリアルタイム確認もコロナ禍のニーズで新設されたわけではない。「今のWebカメラは2代目で、まもなく3代目に切り替わりますが、すでに10年ほど提供し続けているサービスです。他にもこうした作業確認が可能なデータセンターはあると思いますが、当社が先駆者です」と片寄氏。なお、Webカメラは1200万画素で、モニターに入力したコマンドもしっかりと見ることができる解像度を実現。3代目のWebカメラはさらにグレードアップさせるという。「顧客からの要望に応えリモートハンドは今後も進化させていく」と話す片寄氏。Webカメラに加えオンライン会議ツールでの対応も開始する予定だという。

Webカメラで作業の確認もできるオンサイト運用アウトソーシングサービスを提供

データセンターをクラウドサービスのように

 こうした「一歩踏み込んだ運用支援サービス」は多くの顧客から高い評価を得ているという。なぜこうした手厚い運用支援サービスが生まれたのか。それは郊外型データセンターサービスを提供するためだけではない。

 「当社はクラウドサービスを提供しており、その基盤は私たちデータセンター部隊が運用を担っています。クラウドサービス運用の中で、さまざまな要望や依頼に応えてきたことで、支援のためのノウハウや知見を蓄積し、それがその後の商用サービスに生きているのだと思います」と川越氏は運用支援サービスの歴史的背景を話す。

 片寄氏も、「データセンターをクラウドサービスのようにご利用いただきたいという思いでサービスを磨いてきました。これまで積み上げてきたアウトソーシングサービスのノウハウが生きてきています」と思いを語る。

 これらの運用支援サービスは、一部を除いてほぼすべてのデータセンターで利用できる。要望に合わせてさまざまな運用形態・メニューを用意しているので、興味のある方はぜひお問い合わせいただきたい。

IDCフロンティアのハイパースケールデータセンター

2020年12月に開設した「東京府中データセンター」

 IDCフロンティアは2020年12月1日、東京都府中市に新データセンター「東京府中データセンター」を開業した。延べ床面積4.5万平方メートル、最大受電容量50メガワット(MW)、約4000ラック収容可能な規模を誇り、ハイパースケーラーやオーバーザトップと呼ばれる、大手クラウドサービスプロバイダーやコンテンツ事業者などの需要にも対応できる「ハイパースケールデータセンター」だ。

 ハウジングのメニューはコロケーションとサーバールームの2種類。サーバールームはケージ以上にセキュアなスペースでラックの設置やセキュリティ、運用支援もカスタマイズが可能となっている。

 東京府中データセンターにおいても既存センター同様の手厚い運用支援サービスを利用できるほか、ハイパースケールデータセンターに相応しいいくつもの特徴があるので、主なものを紹介しよう。

耐災害性に優れた立地と建物

 東京府中データセンターは、豪雨等の水害の影響を受けにくい立地にある。「東京危険度マップ東京23区+多摩地域」や「府中市水害ハザードマップ」でも危険度最小値となっている。建屋は免震構造を採用。震度6強の地震にも対応し、万一の災害時にも安定した運用を継続する。

 「東京府中データセンターの近くには金融機関の計算機センターなどもあり、そうした点からも信頼性の高い、安定した地盤に立地しています」と菅野氏。

水害や地震など災害の影響を受けにくい立地と建物

低レイテンシーで高品質なネットワーク

 都内に位置しているため、キャリアを選ばず首都圏にある顧客拠点や他事業者のデータセンター、各ネットワークの主要ポイントに低遅延での接続が可能。IDCフロンティアの各サービス間は10Gbpsで接続しており、DR環境やハイブリッドクラウド環境の構築も容易で、また各パブリッククラウドやCDN、高速なインターネット回線への直結も可能だ。

高速なネットワーク回線で多彩なサービスとの接続が可能

感染症のリスクも最小限に抑える強固なセキュリティ

 東京府中データセンターでは、入館やラックの開錠に顔認証、サーバールームにはさらに静脈認証も組み合わせ、入室には自動ドアを導入している。「鍵の受け渡しや管理はお客様にとっても私たちにとっても負荷になります。基本的に受付に人は座っていなくて、そのまま最小限の接触でラックまでたどり着けるようになっています」と片寄氏は言う。

 顔認証、静脈認証もコロナ禍を意識して導入した仕組みではないが、結果的には感染症のリスクを最小限に抑えることにも繋がっている。

 そのほかにも、警備員が常駐し建物敷地内を巡回、敷地周辺や入口、通路、サーバールーム内などには監視カメラを設置し、不審者の侵入や異常を検知する。

人との接触が不要な最新の入館システムの採用により、感染症への対策も

ハイパフォーマンスコンピューティングにも対応

 近年はAIやIoTの活用も進んでおり、データセンターでは高集積、高電力のラックを求められるケースも増えている。

 東京府中データセンターは、平均実効7kVA/ラック(最大10kVA)に対応しており、高電力用途の専用コロケーションエリアは最大20kVAに対応する(提供予定)。

 「GPUサーバーを置きたいというご相談も多くいただいておりますので、今後も高集積ラックへの対応は強化していきます」と菅野氏は言う。

 ここまで東京府中データセンターの主な特徴を見てきたが、こうした最先端のハードウェアに加え、運用支援のソフトウェア面も充実していることが大きな特徴と言えるだろう。

 最後に川越氏は、「当社は常に新しいことを追い求めています。データセンターは必ず古くなるものですが、運用を磨くことで新しいデータセンターと同様のサービスを提供できます。今後は各データセンターの運用を統合し、さらにお客様にご利用していただきやすいデータセンターを目指していきます」と今後の展望を語る。

 菅野氏も、「IDCフロンティアではソフトバンクとグループ企業のデータセンターも含めて、16の拠点を運用しています。運用は得意としている領域です。今後はさらに他の拠点も含めたスケール運用にシフトしていきます。東京府中データセンターは無人受付のデータセンターを目指しましたが、新しいデータセンターを建てるたびに新しい要素を取り入れています。次もまた新しいことをやりたいと思います」と語った。

 先の見えない世の中、ITもその急速な変化に対応していかなくてはならない。ITインフラを預けるプラットフォームを選択する際には、設備や施設といったハードウェアに加え、どのような支援をしてくれるのかというソフトウェア面も考慮するべきだ。IDCフロンティアのデータセンターサービスは“一歩踏み込んだ”運用支援サービスで、課題を解決してくれるに違いない。

東京府中データセンターの仕様