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投資効果を見通せない業務も対象に自動化に拍車
“市民開発者”に贈る「Microsoft Power Automate」の真価

 RPAに関連する領域で日本マイクロソフトが提供しているのが、クラウド型で利用できるプロセス自動化サービス「Power Automate」だ。PC画面上での人による操作を再現するだけではなく、API連携など業務プロセス自動化のための多彩な機能が凝縮されている。その具体像と特長を紹介しよう。

 デジタル技術の進化と普及は今日もまた加速している。我々の日常生活も経済活動も、何らかのシステムによって支えられているといっても過言ではない。その傾向は強まりこそすれ、勢いを失うことはないだろう。

 ここに興味深い予測がある。市場調査会社大手の米ガートナーが公表したもので、「2023年までにグローバルで5億以上のアプリケーションを作成しないと業務が回らなくなる」というものだ。この規模に対応するとなると、IT部門やSIベンダーのみならず、業務の現場でスタッフ自らがアプリケーションを開発すること、すなわち“市民開発者”の介在が不可欠になることは間違いない。

機能追加しリブランディングした「Power Automate」

 そうした状況下、業務遂行を手助けする仕組み、広義でいえばアプリケーションやシステムの類を誰もが作れる環境としてマイクロソフトが提供しているクラウドサービス群が「Microsoft Power Platform(以下、Power Platform)」である。「2020年が幕開けた現在、月間で250万人もの市民開発者がPower Platformを使っています」。そう話すのはマイクロソフトコーポレーションでPower Platformを担当している吉田大貴氏(シニアプログラムマネジャー)だ。

マイクロソフトコーポレーション Power Platform担当 吉田大貴氏

 Power Platformは、具体的にはビジネスアプリケーションを開発する「Microsoft Power Apps」、業務プロセスの自動遂行を支援する「Microsoft Power Automate」、データの分析や利活用を高度化する「Microsoft Power BI」などで構成される。いずれも、ローコーディング(最低限のコーディング)で目的を達することに主眼を置いたサービスだ。昨今、生産性改革や働き方改革の文脈で市場ではRPAに注目が集まっているが、それに近い存在に位置付けられるのがPower Automateである。

 マイクロソフトは、ワークフローの自動化を図る「Microsoft Flow」をかねてから市場展開してきた。「XXしたら、XXする」という分かりやすい形式、換言すれば「トリガーとアクション」の組み合わせで自動処理を設定できるのが特長だ。そのMicrosoft Flowに、昨今注目を集めている「操作画面系の自動処理」を担う機能を追加し、リブランディングしたのがPower Automateだ。現場主導で業務プロセスの自動化に取り組める点を評価して、あいおいニッセイ同和損保など、本格活用に向けた大手企業の動きが国内でもにわかに活発になっている。

300種類を超えるコネクタでの密連携に強み

 「日常業務の中で、従業員がPCのユーザーインタフェースを介して繰り返している業務に着目し、それをソフトウェアロボットで代替しようというのがRPAの一般的なアプローチです。それはPower Automateにとってはごく一部の機能であり、もっと包括的な広い範囲で業務プロセス全体の自動化を標榜しています。その意味ではDPA(Digital Process Automation)と呼ぶのが相応しいように思います」と吉田氏は説明する。

 具体的には、コネクタを介して300種類以上の外部システムと連携。例えば、Office 365やSalesforce.comのようなSaaSアプリケーションの場合は、API経由で連携させるコネクタが個別に用意されている。またSQLを用いてデータベースにアクセスするようなコネクタも充実している。これらのコネクタで複数のシステムを橋渡した上で、先述の「トリガー」と「アクション」を直感的なメニュー画面で設定していくことで一連のプロセスを自動実行できるのが特長だ。

図1 API対応/非対応のどちらもカバーするPower Automate

 APIやSQLなど外部からアクセスするための仕様や手段が用意されているならば、それらを介して密連携させるのが時宜にかなった王道。一般的なRPAのように、人間系の画面操作をトレースする形でのシステム間連携は、遠回りだし不確実性も残してしまうという考え方がPower Automateの根底にある。

 「もちろんRPAの考え方を否定するものではありません。オンプレミスで今なお稼働しているクライアントサーバー型の業務システムや、API非公開で市場に提供されているWebサービスなども含めて自動化を図っていくには、画面操作の記録・再生というアプローチが活きてきます。ソフトウェアロボット一辺倒で考えるのではなく、技術面での適材適所を見極めて取り組むのが理にかなっています」とは吉田氏の弁だ。マイクロソフトは、画面操作を記録・再生する機能をPower Automate向けコネクタの一つとして、「UI Flow」の名称で2019年11月から公開型プレビューとしてリリースし、自動化の対象を一気に広げた。2020年4月2日からは一般公開を予定しており、「UI Flow」を含めた新たなライセンスプランも公式HP上で公開されている。

現場のキメ細かいニーズに応える機能を続々強化

 吉田氏はPower Automateの手軽さを訴求するために、取材の場で簡単なデモを披露した。各種のAPIがあるOffice 365ファミリーと、APIが公開されていない新幹線予約サイト「エクスプレス予約」の操作とを連携させるものだ。< >という一連の作業フローの自動化を試みたところ、設定を済ませ動作を確認するまでに10分とかからなかった。

 UI Flowを使う場合、基本的には、画面上での実際の操作を記録するだけで繰り返し再現できるようになる。テキストボックスなどの操作対象は、画像としてではなく、Windows画面を構成するオブジェクトとして認識するようになっており「Windowsの開発元であるからこそ正確かつ繊細に自動化できるアドバンテージがある」(吉田氏)という。

 そのほか、自動化処理の途中で人による判断や承認を介在させるワークフロー機能、OCR(光学文字読み取り)で帳票からテキストを抜き出す機能など、業務の現場で繰り広げられている実務にキメ細かく対応させるための機能が充実している。また、モバイルアプリの活用で「ある特定の場所に近づいたこと」をトリガーに処理を起動するといった新しい機能も続々と加わって「できること」の厚みを増している。

投資効果が見えない雑多な業務を自動化の対象に

 特定部署で一定の成果を上げたトライアル導入を足掛かりに、これから水平展開してRPAの適用領域を増やしていこうとする企業は多いことだろう。もっとも、それには相応の開発パワーが必要であり、社内で確保できない場合は、社外のエンジニアやインテグレータに頼らざるを得ない。投資を伴うとなると、ROIがあらかじめ見通せるものだけにゴーサインが出ることになりがちだ。

 「自動化を図るにしても『効果が出るか否か分からない』という雑多な業務が圧倒的に多いのではないでしょうか。現実問題として、すべて片付けない限りは日本企業の抜本的な生産性向上は望めないのです。“市民開発者”が日常業務の傍らで対処できるPower Automateが、この問題を解決するのです」(吉田氏)。

図2 ROIが先読みできない領域も含めて自動化を図っていくことが欠かせない

 今、自分が手を動かした作業は自動化できるのではないだろうか──。そう思ったなら、その場でシナリオを整理して実装を試みる。その手軽さと簡便さこそPower Automateの真骨頂だ。現時点でPower Automateには、一定水準の開発スキルを備えていることを認定する資格制度などがない。「そのことが、市民開発者を前提としたハードルの低さを象徴しています」と吉田氏は強調する。

 機動力、創造力、競争力…現場に様々な“パワー”を育む実務支援環境としてPower Platformはこれからも機能強化を続けていく。その構成要素の一つであるPower Automateにも磨きがかかっていくことは間違いない。マイクロソフトは多種多様なユースケースを蓄積しながら国内顧客のニーズに全方位で応えていく構えだ。

【問い合わせ先】

日本マイクロソフト株式会社
お問い合わせ:https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/contact-us/
Microsoft Power Automate製品サイト:https://flow.microsoft.com/ja-jp/
Microsoft Power Platform 関連サイト:https://aka.ms/jp-power-platform