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「より確かに、より安心に、より便利に」を追求したHOTnetが提案する新しい都市型データセンターのカタチ
2019年3月13日 00:00
北海道総合通信網(HOTnet)が運営するS.T.E.P 札幌データセンターは、札幌を拠点にホスティング、プライベートクラウド、システム構築・運用支援などのサービスを提供する都市型データセンターだ。北海道内の多くの自治体や民間企業はもとより、現在では首都圏のユーザーも拡大している。自然災害やさまざまなトラブルに起因した情報システム停止のリスクを防ぐべく磨き上げてきた技術の数々、卓越したネットワーク環境、アクセスにも便利な立地環境と最新鋭の設備などに熱い視線が注がれている。
震災発生時にもサービス停止は一切起こらなかった
2月21日午後9時22分頃、北海道地方で強い地震が発生。厚真町で最大震度6弱を観測したほか、札幌市の一部や千歳市などで震度5弱を観測した。気象庁によれば、昨年9月に最大震度7を記録した北海道胆振東部地震の余震との見方だ。
幸いなことに大きな人的被害は発生しなかったのだが、JR各線や札幌市営地下鉄が運転を見合わせるなど、交通機関に混乱が起こった。新千歳空港の滑走路も一時的に閉鎖され、数便が上空での待機を余儀なくされた。
実は筆者もまさにその機内にいた。北海道総合通信網(HOTnet)が2017年9月に札幌市に開設した都市型データセンター「S.T.E.P 札幌データセンター」の取材に向かうためだ。機内のアナウンスでこの地震を知った際に頭をよぎったのが、「明日の取材は無事に行われるだろうか」ということだった。たとえデータセンターのファシリティに物理的な被害は発生していないとしても、収容している顧客システムの緊急対応に追われていたらば、取材どころではなくなるからだ。
だが、そんな心配は杞憂にすぎなかった。翌22日の取材で対面した同社 営業ソリューション第一部長の武藤光海氏は、「データセンターの運用は、まったくの平常。お客様のシステムも問題なく普段どおりです」と涼しい顔で語った。S.T.E.P 札幌データセンターの高度なBCPをリアルに実感することとなった次第である。
ちなみに昨年9月に起こった北海道胆振東部地震の本震では、北海道全域に及ぶ大規模停電、いわゆるブラックアウトが起こったのだが、このときも今回と同様にS.T.E.P 札幌データセンターに大きな混乱は起きなかった。ハウジングラックへの安定した電源供給が続けられたのである。
これを支えたのが、安全性と信頼性を誇る電源設備だ。受電設備は異なる変電所から本線・予備線の特別高圧2系統による受電が可能。加えて非常用発電設備もN+1の冗長構成を採用するほか、72時間の無給油連続運転時間を可能とする自家発電装置が用意されている。
もっとも、こうしたファシリティさえ装備していればデータセンターのBCPが確保されるわけではない。程度に差はあれ、主電源→無停電電源設備→非常用発電設備という3段構えの電源対策はたいていのデータセンターがとっている。問題は起こっている状況にあわせて、その切り替えが上手く行われるのかという点だ。非常用設備は文字どおり非常時にしか運転されないため、想定外の事態への対応が遅れがちとなる。残念ながらこの脆弱性が露呈してしまい、ブラックアウトに対応しきれず収容システムの運用に支障をきたしたデータセンターも少なくない。
その意味で、電源切り替えのシーケンスを完璧に実行したS.T.E.P 札幌データセンターの運用体制は高く評価すべきだろう。「お客様のシステムをしっかり守るという責務を果たすことができました」と武藤氏は胸を張る。
距離をデメリットにしない高速な通信環境を首都圏に整備
卓越した堅牢性で北海道の産業と経済を支えているS.T.E.P 札幌データセンターだが、ここにきて首都圏の企業からも関心を集めつつある。思わず冒頭で地震に焦点を当ててしまったが、S.T.E.P 札幌データセンターは札幌市の中でも特に安全性の高い土地が厳選されているのだ。最も近い沿岸部から約20km離れた海抜約50mの高台に位置しており台風による高潮や津波の被害を受ける心配がなく、液状化の可能性もきわめて低い地域とされている。
そんなことから、S.T.E.P 札幌データセンターをDRサイトとして選定または検討する首都圏の企業が増えているのである。
後押ししているのは、「距離をデメリットにしない」をスローガンとする東京~札幌間の高速なネットワーク環境だ。同社が首都圏に設置したアクセスポイント「TOKYO Connect」を利用すれば、二重化されたバックボーン回線により20Gbpsの速度で接続することができるのである。「これほどの太い回線で東京と直結している北海道のデータセンターは、他に例がありません」と武藤氏は強調する。
それだけではない。S.T.E.P 札幌データセンターは学術機関向けネットワーク「SINET5」や、総合行政ネットワーク「LGWAN」のサービス接続事業者として認定されており、他社クラウドサービスやデータセンターとのハイブリッド接続を含めた通信環境を提供しているのである。
たしかに、これなら東京~札幌間の距離を意識することはほとんどなさそうだ。実際、東京農工大学のように、DaaS(Desktop as a Service)の基盤をS.T.E.P 札幌データセンターで運用し、SINET5経由で東京から接続して利用している例もある。
快適性にも徹底してこだわったデータセンター内設備
実際にアクセスしやすいロケーションもS.T.E.P 札幌データセンターの大きな魅力となっている。新千歳空港へは、東京・名古屋・関西・福岡方面から毎日137便(2018年9月末時点)の航空機が運航しており、JRの快速電車を利用すれば札幌駅まで約37分。そこから地下鉄に乗り換えてS.T.E.P 札幌データセンターまで約20分、最寄り駅から徒歩15分以内で到着する。
せっかくなので、S.T.E.P 札幌データセンター内の各施設も紹介しておきたい。
ハウジングスペースには、100-200Vのコンセントやハウジングラックにつながるイーサポートを完備したワークスペースも4室用意されており、自社機器の設定やオペレーションなどの作業を行う際に利用できる。また、ラウンジにはミッドセンチュリーモダンをテーマとしたインテリアや調度品を取り揃えるほか、大型ディスプレイやマッサージチェアまで備えられており、作業の合間に心身をリフレッシュできるリラクゼーションスペースとして利用可能。快適に過ごすことができる洗練された空間で、顧客がストレスなく作業できるよう配慮がなされているのだ。
一方でセキュリティについても厳重な設備が整えられている。監視室には24時間365日体制でスタッフが常駐し、データセンター内をくまなくモニタリングしている。加えて監視カメラ、セキュリティゲート、ICカード認証、生体認証、共連れ防止によるラックの解錠などを組み合わせたTier4相当のセキュリティ基準を備えている。
そして現在も同社は、S.T.E.P 札幌データセンターのさらなる進化に取り組んでいる過程にある。例えばIoTの仕組みを活用したサーバラックのリアルタイム監視、VR/ARを利用して遠隔地にいる顧客とデータセンター内のオペレーターが同じ感覚を共有しながら作業にあたるリモートハンドなどの実証実験も進めているという。
「今後、北海道においても少子高齢化が激しく進んでいく中で、医療や福祉、教育の格差といったさまざまな問題が顕在化してくると予想されます。そうした社会課題の解決に我々が貢献していくためにも、5GやIoT、AI、RPAなど新しいテクノロジーを積極的に織り交ぜながら、データセンターを中核とした有益なソリューションサービスを展開していきたいと考えています」と武藤氏は、今後を見据えている。
北海道を基盤としつつ、あらゆる地域を身近に結び、豊かな社会を実現していく――。そんな都市型データセンターの理想像をS.T.E.P 札幌データセンターは体現しようとしているのだ。機会があれば是非ともS.T.E.P 札幌データセンターを訪ねていただき、その取り組みの姿を直接目で見て感じてほしい。