特別企画

Citrixのクラウドサービス「GoToMyPC」の国内提供開始
~アセンテックとCitrix担当者に聞く、販売までの経緯

 米Citrix Systemsは5月7日(米国現地時間)、KDDIおよびアセンテックの2社を通じて日本国内でクラウドベースのリモートアクセス製品である「GoToMyPC」の提供を開始することを発表した。これに関して、アセンテックおよび米Citrixの担当者から話を聞いた。

GoToMyPCの概要

GoToMyPCの仕組み

 GoToMyPCは、名前の通りリモートから自分の作業環境であるPCのデスクトップにアクセスできるサービスだ。いわゆるリモートアクセス製品とも言えるが、接続時には自分のPCに直接アクセスするのではなく、まずCitrixが運営するクラウドサービスで認証を受ける形になっている点が特徴となっている。

 認証が完了し、アクセス権が確認された後の実際の作業は、リモートデバイスとオフィスの自分のPCの間で直接行われるので、作業時に無駄なオーバーヘッドが発生することはなく、クラウド側での認証時点でさまざまな運用管理機能の実装ができるため、企業が安心して業務で活用できるシステムになっている。

 こうした点が評価され、リモートPCアクセスサービスとしてグローバルでシェア73%という圧倒的な支持を得ているサービスであり、以前から日本市場への展開が期待されていた。

 サービスの中継点となるデータセンターは、東京、上海、香港、シドニー、サンノゼ、ラスベガス、シカゴ、アトランタ、ワシントンDC、アムステルダム、フランクフルトの世界11拠点に用意され、ユーザーの状況に合わせて最適なデータセンターが選択される。

 東京のデータセンターは、今回のGoToMyPCの提供開始のために今年に入ってから稼働開始したものだという。環境がグローバルに分散しているため可用性が高い点も特徴で、ダウンタイムの報告がほとんどないという、極めて高いレベルを実現している。

 利用に当たっては、Windows PC側にホストプログラムをインストールし、リモートデバイス側にもモバイルアプリケーションをインストールする必要がある。リモートデバイスとして利用可能なのはiPhone/iPadのiOSデバイスやAndroid端末、MacBookやWindowsなどのノートPCだ。

 GoToMyPCでは、セキュリティが強固な点が高く評価されている。特別なセキュリティソリューションを追加しなくても、標準状態で「リモートデバイスからクラウドへのアクセス時」と「クラウドからホストPCへのアクセス時」にそれぞれ認証が行われる上に、ホストPCのログイン認証も有効にしておけば3段階のユーザー認証が常に行われる形だ。

 必要なら、さらにワンタイムパスワードなどの二要素認証ソリューションを追加で組み込むことも可能。運用管理側では、ユーザーごとに異なるセキュリティポリシーを設定し、リモートから実行可能な操作に制限を加えることができる。

マルチレベルのセキュリティを備えている点も評価されているという

GoToMyPC導入の経緯

米Citrixのシトリックス・オンライン・サービス・ディビジョン 戦略・ビジネス開発部門担当バイスプレジデント、マイク・ムッソン氏

 GoToMyPCは米国などで以前から提供されており、Citrixのクラウドサービスの具体例として国内でも言及されることが多かったために、認知度は比較的高く、国内提供が待ち望まれていたサービスだと言える。

 実は2年前の東日本大震災の後、国内企業の支援のためにシトリックス・ジャパンが一定期間GoToMyPCを無償提供したこともあった。この支援策によってGoToMyPCを試用し、そのメリットに気づいた企業も少なからず存在するようだ。具体的にこの期間に何社ほどの国内企業がGoToMyPCを利用したのか、具体的な数字は明かされなかったものの相当数の企業が活用したという。

 その時点から考えても2年もの年月が経過したことになるが、今回国内提供が実現した理由について、米Citrixのシトリックス・オンライン・サービス・ディビジョン 戦略・ビジネス開発部門担当バイスプレジデント、マイク・ムッソン氏は、「日本企業のクラウドサービス活用に対する意識が熟成するのを待っていた」と話す。

 GoToMyPCは、当初はデスクトップPCとモバイルPCの間での接続を目的に開発され、その後スマートフォンやタブレットの普及に合わせてさまざまなモバイル端末にサポートを拡大していった。

 国内でも、スマートフォンやタブレットが普及し、BYODなどの形で業務に活用されるようになったのは最近のことで、確かに以前に比べてGoToMyPCを活用するための環境整備が格段に進んでいる。

 提供開始までにはやや時間を要したが、同社としては日本市場でのクラウドビジネスの展開には大きな期待をかけているとしており、GoToMyPCを皮切りに、今後GoToMeetingやShareFileといった同社のクラウドサービスが順次国内で提供開始される計画だという。

 なお、今回のサービス提供に当たってインターフェイスは完全に日本語化され、日本語版として提供されるが、モバイル・クライアントなどはグローバル対応になっているため、今後の機能拡張や新機能追加などは日本語版でも遅滞なく同時に適用される。

アセンテックの取り組み

 アセンテックは、「仮想デスクトップ総合ソリューションベンダー」を掲げ、VDIシステムの構築に豊富な経験を持つ。Citrixおよびシンクライアント端末ベンダーのWyseの一次代理店でもある。

 これまでのVDIシステム構築の実績からすれば同社がGoToMyPCを手がけるのは自然な流れでもある。同社の代表取締役社長の佐藤 直浩氏は、「VDIシステムへの企業ユーザーの関心は年々高まっている一方、特に中小規模のユーザーでは初期投資の大きさが導入の障害になっていた。GoToMyPCは初期投資ゼロで企業内のIT担当者の負荷もほとんどないため、小規模ユーザーにも導入しやすいソリューションだ」としている。

 同社では、ホストPC 1シート当たり年額1万4400円の年額課金で最低3シートからの法人向け提供を開始する。初期費用は無料となっているため、特に小規模ユーザーでは導入しやすい設定だ。

 同社が提供するサポートも無償で、「Webサイトからの情報提供」「サービス稼働状況の公開」「24時間365日のWeb問い合わせ」「日本語フリーダイヤルによる問い合わせ(平日9:00~17:30)」という内容が追加なしで利用できる。

サービスの概要紹介を行った、アセンテック 営業開発部 部長の小山田守氏
アセンテック 代表取締役社長の佐藤直浩氏
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アセンテックの提供するサポート

(渡邉 利和)