特別企画
「バックアップ市場でシェアを伸ばすために必要なこと」~バラクーダに日本戦略を聞く
LiveBoot for VMwareのサポートなど、仮想環境への取り組みも強化
(2013/4/3 06:00)
バラクーダネットワークスジャパン株式会社(以下、バラクーダ)は、バックアップアプライアンス「Barracuda Backup」のOSをバージョンアップし、「Barracuda Backup 5.1」として提供を開始した。この目玉機能である仮想化(VMware)対応をはじめとして、バラクーダはどういった意図でバックアップ製品の強化を行っているのか。その戦略を、執行役員社長の林田直樹氏、SEマネージャの鈴木啓之氏に聞いた。
バラクーダのバックアップ製品はまだ伸びる余地がある
さまざまなアプライアンス製品を国内で展開しているバラクーダだが、従来はファイアウォール、迷惑メール(スパム)対策、SSL-VPN、ロードバランサーといった、セキュリティやネットワーク製品のベンダーとしてのイメージが強かった。しかし現在は、バックアップ分野に非常に力を入れているのだという。
その姿勢はCEOの人事にも現れている。2012年、共同創設者でもあったディーン・ドレイコ氏がCEOを退任したが、その後任として選ばれたのは、米EMCでBRS(バックアップリカバリシステム)部門のプレジデントを務めていたウィリアム・ジェンキンズ氏だった。林田社長が「当社はセキュリティ製品のイメージが強いが、実はグローバルでは売り上げの40~45%はすでにバックアップ製品が占めている」と話すように、すでに売り上げの半分近くをバックアップ製品が占めるまでになっている。
国内でも、「バックアップ製品の売り上げは対前年で6.5倍に増えた」とはいうものの、その比率はまだ売り上げ全体の25%程度しかない。林田社長は、「逆に言えばまだまだ伸びる余地がある」として、バックアップ製品の訴求を強めていく考えを示した。
「フリークラウド」やアプライアンスによるメリット
そのための施策としては、大きく4つの要素を考えているという。
1つ目は、バックアップアプライアンス「Barracuda Backup」のユーザーに、1TB分のクラウドバックアップを無償提供する「バラクーダ・フリークラウドサービス」だ。
バラクーダでは、主に従業員100~2000名のミッドマーケットを対象としているが、3.11以降はこうした規模の企業でも、BCP(事業継続計画)やDR(災害対策)への関心が高まっているため、発表後には、「Barracuda Backup」を販売しているパートナー企業から大きな反響があり、問い合わせ件数も増えたとのこと。林田社長は、これを起爆剤に認知度を高め、導入を増やしていきたいとの意気込みを話している。
2つ目は、アプライアンスによる容易な導入と運用管理性の訴求である。バラクーダも提供している、ファイアウォールを中心としたセキュリティ製品分野では、アプライアンス化が急速に進行し、多くのベンダーがアプライアンスを販売しているのに対し、「バックアップ/リカバリ分野では、ソフトウェア製品が依然として中心的な位置を占めている」(林田氏)のだという。
ソフトウェアとしての提供が中心ということは、サーバー機のハードウェアをユーザーが用意し、そこに製品をインストールして設定を行い…といった手順を踏んで利用することになる。これに対してバラクーダでは、アプライアンス形態で製品を提供しているため、導入を迅速に行えるほか、「サポートを当社で一括して行うので、問題発生時に“たらい回し”にされることもない」(林田社長)とのこと。同社では、こうしたアプライアンス製品ならではの一帯設計の強みを訴求し、導入を呼びかけていくとした。
サーバー仮想化への対応強化
続いて3つ目が、サーバー仮想化への対応強化である。仮想環境の利用が広がるにつれて、業務的に重要な部分を仮想環境で動作させる企業が増えているのは、周知の通りだ。また、扱うデータが増えるにつれて、正常にバックアップ/リカバリが行えるのは当然のこと、スピードに対する要求も厳しくなっているのだという。
そこで「Barracuda Backup」では、変更ブロック単位での差分バックアップを行えるCBT(Change Block Tracking)機能により、VMware環境でのバックアップにかかる時間を大幅に短縮させた。
また、インスタントリカバリ機能「LiveBoot for VMware」を、3月に提供した新ファームウェアから全モデルで利用可能にしている。
これは、仮想マシンが利用している共有ストレージが故障した場合に、スナップショットを取っていたデータをもとにして、バックアップアプライアンス自体を新たなストレージとして動作させ、直接仮想マシンをブートさせる機能。これによって、「共有ストレージへデータを戻すよりも早く利用を再開でき、システムの停止時間を最小化できる」点が大きな強みだと、鈴木氏は説明する。
「Barracuda Backup」では、筐体間レプリケーション機能を利用して、DRサイトへのレプリケーションを可能にしているが、災害時などにDRサイト側の「Barracuda Backup」から直接VMware環境をブートすることができるので、共有ストレージを省略してコストを抑える、といったメリットも考えられるとした。
「当社が対象としているミッドマーケットでは、仮想環境を使っていても共有ストレージの二重化はしていない、ただし心配だからバックアップだけは『Barracuda Backup』などできちんと取得している、といったお客さまも多い。そのバックアップ装置を用いて迅速に復旧できるとしたら、お客さまに多くのメリットを提供できるだろう」(鈴木氏)。
GUIの共通化でクロスセルを促進
最後の4つ目が、GUIの使い勝手にこだわることと、製品間でのGUIの共通化である。
バラクーダの製品が主な対象として狙っているミッドマーケットでは、会社全体のIT管理を数人、あるいは1人で行っていることも多く、「そうした際に、UIが日本語かされていることはもちろん、ビジュアルなグラフで見やすくなっていれば、非常にわかりやすく便利」(林田社長)なのは言うまでもない。
また、「UIを統一化することで、ファイアウォールを購入したお客さまに、違和感なくほかの製品を導入していただける」と林田社長が話すように、使い勝手が統一されていれば、異なるジャンルの製品を導入してもらいやすくなる。
バラクーダではこうした戦略により、バックアップアプライアンスの導入をいっそう促進し、国内でのトップシェア(台数ベース)を目指していく考えだ。