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次期Windows Serverの新機能を見る

Hyper-Vやネットワークなどいくつもの機能を強化

Hyper-V関連の機能強化

 次期Windows ServerのHyper-Vを使って構成されたクラスタでは、アプリケーションを止めることなく、順番にWindows Updateなどでパッチを当てていくローリングアップデートという仕組みが採用される。

 アプリケーションやサービスがクラスタを組んでいるサーバー上で提供されていれば、OSのアップデートについては、システムを止めずに継続できるようになる。企業のオンプレミスサーバーだけでなく、コンシューマー向けサービスを提供しているサーバー群でも、計画的なシステム停止を少なくできるメリットがあるだろう。

 また、Scale Out File Server(スケールアウトファイルサーバー)を利用する時に、仮想ディスク(VHD)のパフォーマンスを制御するStorage Quality Service(QoS)がサポートされた。これにより、特定の仮想マシンからのディスクアクセスに対して、高いアクセス性能を保証できるようになっている。一方、それほど重要ではない仮想マシンに対しては、ディスクアクセスの帯域を制御して、少し遅くなってもいいようにする。

 こうして、システムとしてディスクアクセスの優先度を設定することで、高いアクセス性能が必要な仮想マシンについては、ディスクアクセスがきちんと高いパフォーマンスで動作するように構成できる。

 また、Hyper-VのクラスタとScale Out File Serverを組み合わせれば、スケールアウトファイルサーバーをフェールオーバークラスタとして運用できる。特定のサーバーにトラブルが起こっても、フェールオーバークラスタにより、システムがスイッチするため、重要なストレージシステムがダウンすることはない。

 ある意味、EMCやNetAppなどの専用ストレージシステムと同じことがWindows Serverでも実現できるようになった。さすがに、ハイエンドの専用ストレージシステムと同じようにとはいかないが、エントリーレベルのストレージシステムと同じことがWindows Serverでも可能になった、といえるだろう。

 このほか、Hyper-Vの機能強化点としては、チェックポイント(旧名:スナップショット)の機能強化がある。新しく追加されたのがプロダクション・チェックポイントという機能だ。

 今までのチェックポイントは、チェックポイント時点のディスクとメモリの状況を保存していた。しかし、実運用時に、アプリケーションが動作している最中のチェックポイントを取ると、ディスクのアクセス状態などにより、システムの一貫性がとれないことがあった。

 これに対してプロダクション・チェックポイントでは、Windows ServerのVSS(Volume Shadow-copy Service)の機能を利用し、メモリの内容をディスクに書き込んだ状態でチェックポイントを構成している。これにより、実運用環境でも、チェックポイントが有効に利用できるようになった。

チェックポイントでは、プロダクション・チェックポイントがサポートされた

 もう一つ大きいのは、動的な仮想メモリの追加(ホットアド)と削除(ホットリムーブ)が利用可能になったことだ。

 Windows Server 2012 R2でも、仮想CPUや仮想ネットワークの動的追加機能はあった。また、仮想マシンを構成する時点で動的メモリを指定しておけば、動作に必要な最小のメモリサイズから始め、必要に応じてシステムがメモリを追加してくれた。

 今回の機能では、あらかじめ仮想メモリの容量を指定した仮想マシンであっても、動的な仮想メモリの追加・削除ができるようになった。これにより、メモリの使用効率を向上することができる。

新しいHyper-Vでは、メモリの動的追加・削除が可能になっている

 これ以外にも、仮想マシンがサポートするOSとして、セキュアブートに対応したLinux OSが追加された。Ubuntu 14.0.4やSUSE Linux Enterprise 12などをゲストOSにしても、Hyper-V上でセキュアブートが可能になる。

新しいHyper-Vは、Linuxのセキュアブートにも対応

 また、Hyper-V上でWindows OSを動かすintegration services for Windows guestsの機能も強化されている。今までは、Hyper-V上でWindows OSを高いパフォーマンスで動かすだけの機能だったが、次期Windows Serverでは、Windows Updateの機能も統合されている。

 従来、Windows Updateは各ゲストOSから行っていたが、次期Windows Serverでは、データセンターやクラウド内部に用意されたカタログサーバーから、integration servicesがアップデートするパッチをリスティングし、ゲストOSをまとめてアップデートするようになる。これにより、数百、数千のWindows OS(クライアント、サーバーも含める)を運用しているデータセンター事業者やクラウド事業者にとっては、毎月のアップデート作業が簡単になる。

integration servicesでどのようなサービスを提供するか指定できる

 さらに次期Windows ServerのHyper-Vでは、Windows 8/8.1で追加されたAlways On/OffやConnected Standbyなどの機能がサポートされ、スリープ状態でもメールなどが受信できるようになる。VDIなどの環境において、スタンドアロン環境と同じような利用が可能になるとのことだ。

(山本 雅史)