ニュース

NTTコムウェアとNTT Com、AIによる小規模水路の水位予測モデルの実用性を検証

推移の急激な変化時にも迅速な対応が可能に

 NTTコムウェア株式会社とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は9日、茨城県取手市双葉地区において、農業用水路などの小規模水路を対象とした水位予測の実証実験を行ったと発表した。集中豪雨などによる小規模水路の内水氾濫対策の一環として実施されている。

 小規模水路の水位は、通常、排水機による排水などの人為的要因、水田の湛水(たんすい)状況などの環境要因があるため、予測が難しいとされている。そこで今回の実証では、AIを活用し、過去取得した水位データ(2024年5月~2024年11月)を基に、それらの状況を予測時の条件に加えた水位予測モデルを構築し、実用性の検証を行った。

 なお、小規模水路では局地的な大雨により水位が急激に上昇するので、防災担当者が避難計画策定などに対応するためには、短いスパンでの水位予測が重要となる。そのため今回の実証では、自治体の防災担当者へのヒアリングの結果、気象庁が発信する予報降雨情報、および排水機稼働情報、水田の湛水状況に関する情報をもとに、対象水路における3時間先までの水位を5分間隔で予測した。また、いざという時の避難指示発令のためにリードタイムを確保する観点から、6時間先までを予測可能なAIモデルとしている。

 こうした点を踏まえて実証実験を行った結果、予測水位は実水位の変動傾向をおおむね捉えられ、モデルが有効であることが確認されたとのこと。具体的には、実測雨量を用い、A時点(8月30日0時)と、その3時間後のB時点(8月30日3時)の水位を予測したところ、環境要因や人為的要因をパラメーター化して予測した水位に対して、実水位結果はほぼ同様の曲線を描いている。

排水機非稼働時の水位予測

 一方で排水機稼働時についても、実測雨量を用い、C時点(6月21日13時)と3時間後のD時点(6月21日16時)の推移を予測した。こちらも、予測した水位上昇スピードや上昇幅に対して実水位結果もほぼ同様の曲線を描いており、排水機の稼働という人為的要因を考慮した予測ができていることを確認した。

排水機稼働時の水位予測

 こうした予測結果は、浸水対策や周辺住民の避難、交通規制など、事前行動の判断材料になるとのことで、例えば、集中豪雨による水位の急激な上昇が予測される場合には、「事前に排水機を稼働させて放水する」「排水機では対策が追い付かないことが予測される場合、国土交通省へ排水ポンプ車配置の応援要請などを行う」といった対応が可能になるとした。

 また、水路から水があふれる「越水」が予測され、現地状況や気象情報などから内水氾濫発生が想定される場合は、周辺住民の安全のために、リードタイムを確保した避難指示を発令するとともに、避難所の開設や避難誘導のサポートといった対策を早めに立案できるようになるとしている。

自治体におけるユースケース例

 なお実証実験にあたっては、NTTコムウェアが、水位予測システムの開発と、小規模水路にも対応可能な水位予測AIモデルの開発および精度・有効性の検証を行った。一方NTT Comは、この実証の運営主体となったほか、映像エッジAIプラットフォーム「EDGEMATRIX」およびカメラ、Edge AI Boxを通じた水位の観測、およびデータ提供を行っている。