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ソノファイ、富士通の超音波解析AI技術を搭載した冷凍ビンチョウマグロの脂のり検査装置を販売

 ソノファイ株式会社は9日、富士通株式会社、株式会社イシダテック、東海大学 静岡キャンパスで共同開発した、冷凍ビンチョウマグロの脂のりを判定するAIを搭載した自動検査装置「ソノファイT-01」を、水産加工業や漁協など向けに6月に国内で販売開始し、順次グローバルにも展開すると発表した。

 ソノファイT-01は、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のコア技術として開発した、超音波解析AI技術を活用することで、世界で初めて非破壊でAIによる冷凍ビンチョウマグロの脂のり判定を実現し、目視検査に頼ることなく自動で、より高精度な脂のり判定を行う。従来の脂のり判定から、最大80%の省力化や作業効率化が可能になることで、冷凍ビンチョウマグロの全数検査を実現し、ビントロと呼ばれる、脂ののった高付加価値商品の流通量増加に貢献するとしている。

 従来、ビンチョウマグロの脂のりを確認する作業は、職人の目視に頼っていた。これは、冷凍されたマグロの尾の部分を切り出し、解凍して脂のりを確認する「尾切り選別」という工程で、多くの人手と時間がかかる。しかし、作業者によって判定にばらつきが生じたり、熟練した職人が不足していることから、水産商社や加工業者が、安価なビンチョウマグロを全数、正確に尾切り選別することは困難だった。そのため、ビントロと呼ばれる脂ののった高付加価値のビンチョウマグロを、適正な価格で市場に流通させることが難しい状況だった。

 こうした課題を解決するため、マグロのおいしさ研究に知見を持つ東海大学と、超音波解析AI技術を開発した富士通が、2022年4月から共同研究を行い、2023年12月にビンチョウマグロを対象に検証を行ったところ、尾切り選別以上の正解率で脂のり判定に成功した。また、研究成果の商用化を目指して、イシダテックが自動検査装置のハードウェアの開発を行い、ソノファイが富士通から実施許諾および技術供与を受けた超音波解析AI技術を装置に実装した。

自動検査装置「ソノファイT-01」
検査の様子

 ソノファイT-01の導入により、選別作業の自動化や高速化が可能となり、これまで人的リソース確保の観点で断念していた全数検査が実現できることで、高価格帯製品が低価格帯製品として販売される機会損失を低減し、高品質、高付加価値のビンチョウマグロをより多く供給できる。

 低周波超音波を用いることで、従来不可能と考えられていた冷凍ビンチョウマグロの非破壊検査を実現するとともに、富士通が開発した超音波解析AI技術により、従来の尾切り選別以上の性能を達成した。

 バンドソーなどを用いた尾切りをせずに検査が可能となり、従来必要だった尾部分の切断から解凍、選別に渡る全検査工程の作業を効率的で安全に実施できる。

 作業効率の面でも、従来の手作業に比べて検査時間が最大80%削減され、1本あたり最短12秒程度に短縮できる。複数の人手をかけた作業に比べて、装置の操作に必要な人員は1人程度で、大量の冷凍ビンチョウマグロをスピーディにスクリーニング可能とすることで、職人の目視検査の負担を軽減して、選別業務を効率化し、検査コストの削減と人手不足の解消に貢献する。

 装置の開発にあたり、ソノファイ、イシダテック、富士通は、東洋冷蔵株式会社と共同で実証実験を行った。2024年1月~3月に、東洋冷蔵と富士通で初回の実証実験を行い、判定精度や処理速度など、超音波解析AI技術の基礎的な性能を検証した。さらに、2025年2月には東洋冷蔵とソノファイで、商用利用を想定した実証実験を実施し、実際の加工現場での省力化効果、作業効率などの有効性を確認した。これらの実証実験を通じて、装置が従来の尾切り選別と比較して、高精度な脂のり判定や省力化において有用であることを確認した。

 ソノファイ、イシダテック、富士通は、6月10日~13日に東京ビッグサイトで開催される展示会「FOOMA JAPAN 2025」に、ソノファイT-01を出展予定。

 また、現在装置で対応できるのはビンチョウマグロの脂のりの検査のみだが、鮮度や硬さ、粘り気といった身質などの判定機能を追加機能として順次搭載するとともに、対応魚種も拡大していく予定。

 今後は、装置内で魚の体長や体重を全数計測できるようにすることで、水産資源管理への貢献を目指す。さらに、イシダテックが展開を構想中の、水揚げ直後の冷凍カツオを魚種・重量選別するとともに、品質を評価するシステムの中で装置を活用することで、大規模の水揚げ漁港における瞬時の品質選別を可能にし、大幅な省力化や付加価値向上への貢献を目指すとしている。