特集

営業DXを成功に導くための重要要素“DX変革推進者”の存在(後編)

前編に引き続き、「営業生産性を上げるためのDX戦略」について解説します。

前編では、日本の生産性は先進国の中では特に低いという現状がある中、どのように営業生産性を上げていくべきかの戦略について解説し、B2B企業における営業活動は、これまでのアナログ型や集客型から、現在の育成型へと進化しつつあるということをお伝えしました。

後編となる本記事では、営業DXが実現できている企業とそうでない企業の違いや、社内でどのように営業DX化を進めたらいいのかの具体的な流れについて解説します。

営業DX化を成功させる企業の共通点とは?

 営業DXを成功させる企業には、データ活用と社内文化の形成に共通点が見られます。これらの企業はデジタル技術を積極的に取り入れ、戦略的な意思決定を通じて営業プロセスを継続的に改善し、成果を上げています。組織全体で営業活動をデータに基づいて管理し、分析結果に基づく迅速な意思決定により、商談機会の創出や受注率の向上を実現しているのが特徴です。例えば、営業プロセスの可視化を通じて改善点を明確にし、すばやく改善策を講じることで競争優位性を確立し、継続的な営業成績の向上につなげています。

営業DXが成功するための条件

 営業DXを成功させるためには、組織全体でデータ活用の重要性を理解し、ツールやシステムを適切に活用することが重要です。例えば、商談の進捗状況をステージごとに管理し、データに基づいたフォローアップを行うことで、効率的な営業活動を実現しています。また、トップセールスと新人の受注率や単価の差をデータで可視化し、最適な配置や教育を行うことも営業パフォーマンスの向上に大きく寄与しています。

 このように、データを活用しながらPDCAサイクルを回し、改善を重ねていくことが、営業DXの成功に欠かせないポイントです。

 営業DX化を成功させた企業の実例を参考に、自社でも同様の取り組みを進めることが、持続的な成長につながるでしょう。

営業活動を効率化する「攻めのDX」推進おすすめ4ステップ

 営業活動の成果を最大化するためには、「攻めのDX」の推進が欠かせません。攻めのDXとは、単に業務をデジタル化するだけでなく、デジタル技術を活用して新しい売上機会を創出し、営業活動全体の生産性を高める取り組みです。具体的には、マーケティングオートメーション(MA)や顧客管理システム(CRM)を使って営業プロセスを可視化し、データに基づく戦略的なアプローチで潜在顧客との接点を増やし、商談や受注につなげます。また、既存顧客のデータを活用し、クロスセルやアップセルの機会を広げることも重要な要素です。

 こうしたアプローチにより、従来の営業手法ではリーチできなかった顧客層にも効率的にアプローチでき、営業活動の生産性を飛躍的に向上させることが可能です。

攻めのDXと守りのDXの違い

攻めのDX
デジタル技術を活用して営業やマーケティング活動を強化し、成長を積極的に推進する取り組み。新規顧客の獲得や顧客体験の向上、営業活動の高度化を目指します。

守りのDX
既存業務の効率化やコスト削減を目的とし、業務プロセスの自動化や内部統制の強化を行う取り組み。組織の安定性や生産性向上を目指します。

 攻めのDXは成長を推進し、守りのDXは効率化を図るという点で、大きな違いがあります。

営業DXを推進する4つのステップ

ステップ1:ツールやコンテンツ整備で情報活用する土壌を作る
営業DXを始める際は、まずデータを蓄積・活用するための土台を整えることが重要です。具体的には、必要なツールやコンテンツを準備し、スモールスタートで進めるのが効果的です。最初から大規模な導入を試みると、時間をかけ過ぎてしまいプロジェクト全体が進まなくなることが多いため、まずは小規模な成功体験を積み重ねて、着実に前進することを目指しましょう。

ステップ2:最初のメンバーを決めてクイックウィンに拘る
プロジェクト初期には、成果を上げやすいメンバーを選定し、クイックウィン(短期的な成功)を達成することが重要です。初期の成功体験はプロジェクト全体の推進力となり、チームのモチベーションを高めるだけでなく、他のメンバーの協力も得やすくなります。

ステップ3:他メンバー含めて浸透させる=再現性ある商談創出
クイックウィンを達成したら、その成功事例を他のメンバーや部署に展開し、再現性のあるプロセスを組織全体に浸透させます。これにより、同様の成果を他の業務領域でも挙げやすくなり、営業活動だけでなく組織全体のパフォーマンス向上につながります。

ステップ4:全社的なプロジェクトとしてDX化、組織を分業化
最終ステップでは、DX化を全社レベルに拡大し、組織全体の体制を分業化・標準化することでさらなる効率化を図ります。この段階では、必要な予算やリソースを確保し、継続的な改善を行うことが求められます。

 このように、「攻めのDX」を推進するための4ステップを順に進めることで、営業活動全体の効率化と持続的な成長が実現されます。

DXを成功に導くための超重要ポイント“DX変革推進者”

 DXを成功に導くためには、適切な“DX変革推進者”を育成し、プロジェクトをリードすることが不可欠です。この推進者が、組織全体のDX化をリードし、成功に導くための中心的な役割を果たします。

DX変革推進者に求められる要素

 「DX変革推進者」に求められる要素は4つあります。まず、営業力と社内からの信頼を兼ね備えていることが重要です。次に、マーケティングに関する知識や経験を持ち、シームレスに組織を横断してマネジメントできる能力が求められます。また、PDCAサイクルを効果的に回して改善を進める力も不可欠です。

 これらの要素を持つ人物がDX変革推進者として組織をリードすることで、DXプロジェクトの成功率が大きく向上します。

DX変革推進者の役割と育成方法

 DX変革推進者を育成するためには、社内の適任者を選び、段階的にスキルを磨くことが効果的です。特にクイックウィン(短期的な成功)を積み重ねることで、推進者の成長を促し、プロジェクト全体の進行をスムーズにすることができます。また、外部の専門家や中立的な立場で判断できるメンターを活用し、定期的に相談・フィードバックを受ける時間を確保することも、成功率を高め、プロジェクトのスピードを上げるためのポイントです。

DX推進の成功率を高めるためのポイント

 DX化プロジェクトを成功させるためには、以下の取り組みが効果的です。

・プロジェクトにDX推進経験者を加えること
過去にDXプロジェクトを推進した経験者がいることで、課題解決のスピードが上がり、ベストプラクティスを取り入れやすくなります。

・社内外のメンターの活用
中立な立場で判断・相談できるメンターを確保し、定期的に意見交換を行うことで、DX推進の軌道修正や新たな気づきを得やすくなります。

・クイックウィンの創出
まずは小さな成功体験を積み重ね、その成果を全社に展開して浸透させることで、組織全体のモチベーションを高め、スムーズにDX化を進めることができます。

DX化におけるよくある失敗とその回避策

 DXプロジェクトでよく見られる失敗は、全体設計に時間をかけ過ぎ、プロジェクト全体の進行が遅くなり、結果として何も進まなくなることです。この問題を回避するためには、まずスモールスタートで具体的なアクションを開始し、早い段階で成果を得ることが重要です。その成果を基にプロジェクトを徐々に拡大し、全社的なDX化を目指すことで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。

 このように、適切なDX変革推進者の選定と効果的なアプローチを取ることで、DX化の成功率を高め、より早く成果を実現できるようになります。

クラウドサーカス株式会社 執行役員 兼 MA事業部長 田中 次郎
2008年に新卒入社し、テレアポを中心とした新規営業チームのプレイヤーを経て営業マネージャーや拠点長として活動。その後、自社のマーケティング部門、IS部門、CS部門の立ち上げを担当し、現在はマーケティング・オートメーションツール『BowNow』の事業責任者として活動中。現在14,000社以上の導入を突破し、国内シェアNo.1サービスになっている。自社と顧客のDXを進める中で、マーケティングやDXの魅力に取り憑かれ、国内中小企業にまで広めるべく奔走中。