2012年以降の重要かつ注意すべきIT展望、ガートナーが発表
2011年12月14日
報道関係各位
ガートナー ジャパン株式会社
広報室
米国コネチカット州スタンフォード発 - 2011年12月1日 - ガートナーは本日、2012年以降にIT部門およびユーザーに長期的かつ大きな変化を与える重要な展望『Gartner Predicts 2012』を発表しました。ガートナーのアナリストは、予算、テクノロジ、コストなどの要因がより流動的・分散的になるのに伴い、これらの展望はIT部門における管理環境の変化を示すものになっているとしています。
2012年の展望は、IT部門にとって最も重要な複数の基準を基に評価・選定しています。2012年版の展望を予測・提言した一連のレポートは、「Gartner Predicts 2012」のWebサイト ( www.gartner.com/predicts ) で一覧いただけます。
これらのレポートは、現在および今後のビジネスの本質を変えるトレンドとトピックを明らかにしています。後述するトレンドとトピックは、ガートナーのリサーチ分野から最も重要かつ注意すべき予見として選定したものです。これらを見ると、さまざまな要因によって従来型のIT管理能力が低下していることが改めて浮き彫りになっています。
マネージング・バイス プレジデントでガートナー・フェローのダリル・プラマー (Daryl Plummer) は次のように述べています。「コンシューマライゼーションとクラウド・コンピューティングに関するトレンドが続いているということは、従来IT部門が負っていた一定の責任が別の誰かに移っているということを示しています。ここ数年間で、使用中のデバイスに対するユーザーの管理能力が高まるのに伴い、IT部門が管理してきた予算はますますビジネス・マネージャーへとシフトしてきています。ITの世界の進化に伴い、CIOはこれまで対象としてきた範囲よりも幅広い範囲で、その活動を調整しなければならなくなっています。IT部門にとってこれは難しい課題かもしれませんが、この流れに適応しなければ時代に取り残されることになってしまいます」
ガートナーのアナリストは、2012年に向けて企業が利用できる情報量は増えるものの (「ビッグ・データ」)、これらの情報を理解することが課題になるとしています。IT部門が対象とするシステムの管理責任が外部にシフトし、データの一貫性と有効性の確保が難しくなることで、多くの企業は、大切な機会が失われたり、信頼性に問題のある情報を戦略的意思決定に利用したりしないように努力する必要に迫られるでしょう。現在のところ、このような環境を支援する法令等の整備は予定されていないため、各企業はビッグ・データの取り扱いを独自に判断しなければなりません。
「2012年、ビジネスに勢いをつけたいと考えている企業は、分散された環境で行われる個々の活動を調整・管理するために相応の態勢を確立する必要があります。中でも関係管理能力は重要なスキルの1つであり、スタッフの能力向上に努めなければなりません。なぜなら、分散環境の管理能力の低下には、調整力をもって対処する以外に方法がないためです。これからのIT部門は、IT予算オーナーである利用部門、第三者サービス・ベンダー、データ・セキュリティ担当者、一般消費者など、すべてのステークホルダーの関係を調整できなければなりません」 (前出プラマー)
ガートナーによる2012年の重要な展望は、次のとおりです。
■2015年までに、低コスト・クラウド・サービスがアウトソーシング大手企業の収益の最大15%まで食い込む商用の低コストITサービス (ILCS) は、ITサービスの価格と価値に対する市場の一般的な認識を変える存在になりつつあり、この新しいサービス提供モデルによって、今後3~5年でITの価値が見直されることになるでしょう。低コスト・クラウド・サービスにより、現在および今後見込まれるアウトソーシングの収益は侵食されるでしょう。オフショアリングが台頭した際と同じように、社内外で直接的・間接的に、新しいクラウド・ベースの商用サービスへ投資することは、ベンダーにとって必須となります。1兆ドルの市場規模が見込まれているITサービス市場は、現在さらなる発展の初期段階にあります。これは、格安航空会社が輸送業界にもたらした「価格破壊」の状況に似ています。
■2013年には消費者向けソーシャル・ネットワークへの投資バブルが、2014年にはエンタプライズ・ソーシャル・ソフトウェア・ベンダーへの投資バブルがはじける一般消費者向けソーシャル・ネットワーク分野のベンダーは、IT市場の他の領域と比較しても異常といえるほどの積極的なペースで互いにしのぎを削っており、似たような機能を提供する数多くのベンダーが限られたパイ (顧客) を取り合う状況となっています。エンタプライズ市場では、多くの小規模な独立系のソーシャル・ネットワーク・ベンダーが、市場の統合が始まるまでにクリティカル・マスに達することができるように奮闘している一方、Microsoft、IBM、Oracle、Google、VMwareなどのメガベンダーは、この市場で勢力を拡大するために多大な努力をしてきています。株式非公開企業の上場による大きな盛り上がりが見られるようになる一方で、市場における差別化要素が減り、成長速度の減速が認識されるのに伴い、小規模な独立系ベンダーへの評価は先細りとなるでしょう。
■2016年までに、企業における電子メール・ユーザーの少なくとも半数が、デスクトップ・クライアントではなくブラウザやタブレット、モバイル・クライアントを利用するようになるモバイル・デバイスの利用者が増加し、エンタプライズ・アプリケーションをブラウザ環境で利用する上での快適性が高まっている。このことは、操作性や表現力のより高い電子メール・クライアントとアクセス環境の組み合わせが登場することを運命付けており、今後4年間、驚くほどのペースで変化するものと思われます。同じ理由から、電子メール・システムのベンダーも、多様なデバイス向けのモバイル・クライアントを開発・提案する可能性があります。モバイル・デバイス管理プラットフォーム・ベンダーの市場機会は急激に増え、一方でインスタント・メッセージやWeb会議、ソーシャル・ネットワーク、共有ワークスペースなど、増加するコラボレーション・サービスのポートフォリオをサポートするサプライヤーに対して、プレッシャーは高まると考えられます。
■2015年までに、スマートフォンとタブレットをターゲットにしたモバイル・アプリケーションの開発プロジェクトはネイティブPCプロジェクトを上回り、その比率は4対1になる今後4年間における新規導入デバイスの純増分のうち、スマートフォンとタブレットが占める割合は90%を超えます。また、すべてのタイプの携帯電話でアプリケーション・プラットフォームの能力が高まっていることが、イノベーション (革新) の新たな世界の広がりに拍車を掛けています。これは、特にモバイルの潜在能力を、ロケーション、プレゼンス、ソーシャル情報と融合させることで利便性を高められる部分において顕著です。モバイル・デバイスのイノベーションは進み続けていますが、2011年、PCをターゲットとしたアプリケーション開発プロジェクトの数はモバイル向けアプリケーション開発と同等になるとガートナーは考えています。今後の採用 (スマートフォンとタブレットの稼働台数) については、2014年第1四半期は2010年第4四半期の3倍に増加し、これらのデバイスにとってクライアント側アプリケーションの圧倒的多数はモバイルのみ、またはモバイルが第1となるでしょう。
■2016年までに、企業の40%がすべてのタイプのクラウド・サービスの利用に際し、独立した機関によるセキュリティ・テストの結果をクラウド選定条件にする管理の容易さ、スケールメリット、ワークフォースの最適化などの観点から企業がクラウド・サービスの潜在的なメリットを評価していますが、セキュリティ上の脅威と攻撃への抵抗力を注意深く評価することもこれと同じくらい重要です。最終的に検査機関による証明書が有効な選択肢になり、セキュリティ・ベンダーによるテストを補足することになるでしょう。すなわち、導入企業が外部のセキュリティ・ベンダーにセキュリティ・テストを依頼するのではなく、一般に認められている検査機関の証明書をクラウド・プロバイダーが提示することで、企業はクラウド・サービスを受け入れるようになるでしょう。
■2016年末には、Global 1000企業の半数以上が顧客に関する機密データをパブリック・クラウドに格納するようになる世界の経済環境が財政的な困難に直面している中、企業は業務コストを削減し、効率を高めることを余儀なくされています。このような状況に対応するため、2011年の時点で既に企業の20%以上が顧客に関する機密データの一部を自社運用型のソリューションとプライベート/パブリック・クラウド・プロバイダーを組み合わせたハイブリッド型の環境へ格納するようになっています。
■2015年までに、ほとんどの企業においてIT支出の35%がIT部門の予算枠外で管理されるようになる次世代のデジタル・エンタプライズを動かしている要因は、IT部門による環境整備を必要とせずに、ユーザー (ビジネス・マネージャーと個々の従業員) がITを利用できるという新しい波です。ユーザーは、組織の発展に必要なIT支出をそれぞれの役割と責任の範囲内で管理したいと考え始めました。現在CIOの管理下にある予算の一部は、IT部門の枠外へと再配分されることになるでしょう。また、場合によってITプロジェクトはユーザー部門のマネージャーが管理するビジネス・プロジェクトと見なされるようになるでしょう。
■2014年までに、米国で消費されているアジア調達の完成品およびアセンブリの20%が、北米・中南米にシフトする米国市場で活動している多くの企業が、政治、環境、経済、サプライチェーンなどのリスクを回避するため、調達先をアジアから北米・中南米 (米国、カナダ、中南米諸国) にシフトしています。固有の製造工程や製品の知的財産権が関係している場合を除き、ほとんどの製品がこのような調達先見直しの対象となります。世界的な原油価格の高騰、多くのオフショア市場における賃金の上昇、またオフショア・アウトソーシングに伴う目に見えないコストにより、在庫移動コスト、リードタイム、需要変動、製品品質などサプライチェーンの重要な要因を考慮していないコスト削減の効果が損なわれることになります。
■2016年までに、新たな脆弱性を狙ったサイバー犯罪により、経済的損失は年間10%の割合で増加するクラウド・サービスの利用および従業員が個人で所有しているデバイスの利用において、新たな脆弱性が見つかり、金銭を目的とした強力な攻撃手法が編み出されるでしょう。このように、新たな脆弱性による標的型サイバー攻撃は、確実に経済基盤に影響を与えるでしょう。
■2015年までに、80%のクラウド・サービスの価格にグローバル燃料サーチャージが含まれるようになるクラウド・プロバイダーがサービス提供の拠点を戦略的に決定する中、コスト管理において税制優遇措置は長期的な解決策とはならず、再生可能エネルギーへの投資は引き続き高いレベルで推移します。既に一部のクラウド・データセンター・プロバイダーは価格パッケージに燃料サーチャージを組み込んでいますが、ガートナーのアナリストはこのトレンドが今後急速に高まり、競争のプレッシャーおよび横並び的なアプローチを背景に、クラウド・プロバイダーの大部分が採用するようになると考えています。ビジネス・リーダーとITリーダー、また調達担当者は、今後のクラウド・サービスの契約では燃料費が個別の変動費目として含まれるようになることを見越しておく必要があります。
■2015年までを通じ、Fortune 500企業の85%以上が、ビッグ・データを競合優位性確保のために効果的に活用することに失敗するスマート・デバイスに対する現在のトレンドおよびインターネット接続環境の向上によって、利用できるデータの量は飛躍的に増えました。しかし、活用するデータの複雑さ、多様性、そしてスピードという要素が組み合わさることによって、データの活用における課題は、一般的に使われている「ビッグ・データ」という言葉が暗示する、データの量が膨大であるという単純なものではなくなります。データを収集し分析するだけでは十分ではなく、これらのデータをタイムリーに提供することで、組織の生産性、収益性、効率性に目に見える形で効果をもたらす意思決定に、直接貢献できるようにしなければなりません。しかし、大部分の企業ではビッグ・データに関する技術面の課題と管理面の課題の両方に対する十分な準備が整っていないため、このトレンドを効果的に活用し、競合優位性の確保につなげることができる企業はほとんどないでしょう。
これらの展望に関する詳細情報については、ガートナーのレポート『Top Predictions for IT Organizations and Users, 2012 and Beyond: Control Slips Away』 ( www.gartner.com/predicts ) をご覧ください。本レポートには、展望をトピック、業種、市場別に分けた70を超えるレポートへのリンクが含まれています。
12月21日の午前8時と11時 (米国東部標準時)、本プレスリリースでコメントを引用したプラマーが、『Top Predictions for 2012 and Beyond』と銘打ったウェビナーを開催いたします。 本ウェビナーへの登録は http://my.gartner.com/portal/server.pt?open=512&objID=202&mode=2&PageID=5553&resId=1842125&ref=Webinar-Calendar で受け付けています。
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1979年に創設されたガートナーは、米国コネチカット州スタンフォードに本拠を置く業界最大規模のITアドバイザリ企業です。世界に85の拠点を持ち、約1,250人のリサーチ・アナリストおよびコンサルタントを含む4,800人以上のアソシエイツで構成されています。
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詳細については下記Webサイトでご覧いただけます。
http://www.gartner.co.jp / http://www.gartner.com