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「NEC神戸データセンター」公開~西日本のフラッグシップ施設として本格稼働
(2016/4/21 06:00)
日本電気株式会社(以下、NEC)は、4月21日付けで兵庫県神戸市にNEC神戸データセンターを開設するのにあわせて、同センターの様子を公開した。
NEC神戸データセンターは、西日本エリアのフラッグシップデータセンターに位置づけられるもので、「NECにとっては、60カ所目のデータセンターになる。最新テクノロジーを活用することで、安心、安全と効率性、ハイブリッドを追求したデータセンターになる。すでに多くの予約が入っており、2018年にはフル稼働状態になる予定。2017年からは同じ敷地内に第2期棟の建設を行うことになるだろう。これは2018年から稼働させたい」(NEC システムプラットフォームBU担当の橋谷直樹執行役員)とした。
今回のNEC神戸データセンターの開設により、NECグループが持つデータセンターの総マシンフロア面積は約6万4000平方メートルとなり、2014年1月に稼働したNEC神奈川データセンターとともに、東西2つのフラッグシップデータセンター体制を持つことになる。
NEC神戸データセンターは、データセンター専用の建物として新たに建設したもので、2016年1月に竣工。建屋の投資額は100億円。そのほかサーバーなどで50億円を見込んでいる。2階から5階までの4フロアにおいて、合計4000平方メートルのサーバールームを持ち、1フロアあたり約400ラックを収容。合計で1500ラックを収容できる。
レイヤ2接続によるクラウドサービスとハウジングサービスのハイブッド環境を実現。2階フロアには120ラック収容のクラウドサーバールームを持っており、クラウドサービスに活用することを目的に、高集積サーバーの「Scalable Modular Server DX2000」を導入する。DX2000は、1ラックあたり最大572サーバーを収容でき、標準的なサーバーに比べて設置スペースは14分の1、性能あたりの消費電力は2分の1にできるという特徴がある。
サーバールームは約3メートルの高さがあり、利用者の要望により、背の高いラックの導入も可能だという。
またNEC神戸データセンターでは6月末から、クラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」の提供を、同データセンターを通じて開始する予定であり、これにより、NEC神奈川データセンター間とのディザスタリカバリ環境を安価に構築できるサービスを提供するという。
また、統合運用サービスである「NEC Remort Infrastructure Managementサービス」により、NEC神戸データセンターとユーザーが持つオンプレミス、他社クラウドを含めた総合的な運用効率化が可能になる。「既存システムからの移行、クラウドとの共存も可能」としている。
ネットワークはSDNを採用することで、構成変更の容易化、運用の効率化を図っているほか、専用線やVPNを活用した多様なWAN接続手段により、ユーザーの拠点から接続できるのに加えて、NECの主要データセンターを異なるキャリア回線により、冗長構成で接続することが可能。これにより、回線提供からネットワーク機器までを一括で提供するとともに、複雑なネットワーク設計や監視設定を不要にできるため、利用者は初期投資と作業負荷を軽減する。また、他社クラウドと閉域網接続を短期間に構築可能で、NECハイブリッドクラウド接続サービスにより、NECによる運用監視の低コスト化も実現できる。
「複数のクラウドへの柔軟なアクセスと統合運用管理により、効率的なシステム運用と事業継続性向上を図ることができる」(NEC プラットフォームサービス事業部 西日本マネージドサービス部の星野和志人部長)とした。
運用・監視は、西日本にある統合ITマネジメントセンタから、高い専門性を持つスタッフが24時間365日体制で実施。東日本の拠点との相互バックアップにより、災害時の事業継続も可能となっている。
一方、NEC神戸データセンターでは、気化熱を応用したNECの冷却技術「相変化冷却ユニット」を、クラウドサーバールーム壁面全体に適用しているという。
クラウドサーバールームには、前述したように高集積サーバーのDX2000を導入しており、ほかのサーバールームに比べて、発熱量が高い。そこで、世界で初めて「相変化冷却ユニット」をデータセンターに活用。サーバールーム全体で冷却を行う仕組みとしている。
サーバーからは、ホットアイル側に約35℃の温度で排熱されたあと、相変化冷却ユニットによって約31℃に冷却される。ここでは、ハイドロフルオロエーテルによって作られた冷媒が気化する際に熱を奪い、冷たくなるという原理を利用して冷却。冷媒が気体となり上昇することで温度を下げる。その冷気をドライコイルで冷却して約25℃とし、それをファンから排出する。その後、熱交換器による放熱部で液体化し、受熱部に送り込む。相変化冷却ユニットでは、ほとんど電気を使わずにサーバールームの冷却が可能になるという。
さらに、他の空調方式の改善とあわせてデータセンター全体の冷却効率を約40%向上。外気を利用したフリークーリングや太陽光発電、地下冷熱などの自然エネルギーを活用と、蓄電システムの利用による総合的な省エネルギー化によって、PUEは、西日本エリアのデータセンターとしてはトップクラスの1.18を達成するという。
「建物の北側から冷たい風を取り込んで、電気室の空調消費電力を50%削減。さらに太陽光発電と蓄電システムとの組み合わせで、貯めた電気は照明や電気室のファン稼働に24時間利用できる」(星野部長)という。
また、NEC神戸データセンターは、活断層から7km、海岸から9km以上、自治体ハザードマップの被害想定区域外という神戸市内の堅牢な地盤上にあり、地震、水害、停電、ネットワーク障害などへの耐災害性を実現。地上6階建ての建屋は、耐震性に優れた免震構造を採用するとともに、非常時の給油を確保しやすく、大阪駅から約1時間の距離という利便性もある。特別高圧電力は、関西電力の2カ所の変電所からの二系統受電体制となっているのも立地の良さのひとつといえる。UPSは冗長構成としており、電力供給時間は10分。非常用電源には灯油を使用。72時間無給油運転が可能であり、緊急稼働から約3分で安定した電源を供給できるという。「灯油はコストや効率の面では劣るが、非常時の調達のしやすさを優先した」という。
特別高圧電力設備や非常用電源設備は平地に置いているが、これは今後、データセンター棟の建設を視野に入れて対応できる規模を想定したためで、同じ敷地内に最大3棟まで建設することを視野に入れているという。
なお、ラック供給電力は、平均8kVA、最大20kVAとなっている。
免震構造としているNEC神戸データセンターでは、ゴムと鋼板が交互に重なる積層ゴム系免震装置と、摺動材とベースプレートの間にすべりが生じることで地震の揺れを建物に伝わりにくくするすべり支承を柱直下の27カ所に設置する、ハイブリッド免震を実現している。建物の四隅には積層ゴム系免震装置を設置。中央部にはすべり支承を配置している。これにより、阪神淡路大震災や東日本大震災クラスの地震にも耐えうる構造となっている。
さらに、セキュリティに対する強化もNEC神戸データセンターの大きな特徴だ。
センター内では、IDカードを活用するとともに、高い実績を誇るNECの顔認証技術「NeoFace」を用いた入退場管理によって、利用者は、手をかざすといったアクションが不要。カメラを意識することなくスムーズなウォークスルーによる入退場が可能なため、サークルゲート方式に比べて入室にかかる時間を50%削減する。
また、監視カメラと行動検知システム「IAPRO」を組み合わせることで、従来の赤外線センサーだけでは困難だった不審な挙動を自動検知。不審者の侵入防止など、事故発生を未然に防ぐといった高いセキュリティ環境を実現している。
NEC神戸データセンターでは、事業場入口での守衛室での本人確認をはじめ、データセンターに入る際には入り口、受付、金属探知ゲート、ウォークスルー顔認証でチェック。さらに、サーバールームでもウォークスルー認証とラック開錠認証を行っており、合計で7段階のセキュリティ環境を実現しているという。これにより、未登録者の入室や、マシンへのアクセスを防いでいる。
データセンターの受付では、顔写真付きの身分証の提示により、本人であることを確認。それによってICカードを貸与する。その後、専用の機器を使って、ICカードに自分の顔を登録。それによって、顔認証システムと連動し、ウォークスルー認証が行えるようになる。
ちなみに顔画像の登録は、プライバシー保護の観点もあって毎日消去するため、訪れるたびに登録する必要がある。金属探知ゲートでは、警備が監視。その後のウォークスルー通路では、通路を通っている間に顔認証が行われ、入室がスムーズに行える。サーバールームへのアクセスも、ICカード使って指定されたサーバーラックだけが開錠する仕組みとなっている。
なお、NEC神戸データセンターの公的認証としては、プライバシーマーク、ISO/IEC27001、FISC安全対策基準(設備基準)準拠のほか、SOC2/Type1、Type2レポートを取得する予定だ。
一方、NECでは、NEC Cloud IaaSの強化についても発表。異なるセグメントの仮想LAN間接続、複数テナントを持つ場合のテナント間LAN接続を、迅速に、低コストで実現する仮想ルータサービスを提供。今後は、仮想サーバーや物理サーバーのラインアップ拡充や、PaaS領域の強化により、基幹システムや、新ビジネス創造に対応したシステムへのクラウド活用を促進していくとした。