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スイッチ向けOS「Cumulus Linux」でベアメタルスイッチのシェア拡大を目指す――、米Cumulus

 Facebookが提唱するOpen Compute Project(OCP)に後押しされるような形で、ベアメタルスイッチの市場が注目されつつある。そんな中、来日したベアメタルスイッチ向けOSベンダーの米Cumulus Networks(以下、Cumulus) CTO兼共同設立者であるNolan Leake氏と、Vice PresidentであるWilliam Choe氏(以下、Choe氏)の両名から、同社製品の「Cumulus Linux」およびベアメタルスイッチを取り巻く市場について話を聞く機会を得た。

米Cumulus CTO兼共同設立者のNolan Leake氏
米Cumulus Vice PresidentのWilliam Choe氏

ベアメタルスイッチとは?

 ベアメタルスイッチは「ホワイトボックススイッチ」とも呼ばれ、ハードウェアからソフトウェアであるスイッチOSを分離し、それぞれを異なるベンダーから入手可能とする仕組みである。すでにHPやDELLをはじめとして、さまざまなベンダーがOCPに準拠したハードウェアを発表している。

 一方、Cumulus Linuxはこれらのベアメタルスイッチ上で動作するスイッチOSである。DebianをベースとしたLinuxであり、レイヤ2/レイヤ3のネットワーク機能を提供する。

 ベアメタルスイッチの最大のメリットは、ハードウェアとソフトウェアが分離することによって、より安価なハードウェアを利用できる点にある。Choe氏はさらに、Cumulus Linuxのコスト面での優位性として、「テクノロジは日々進歩して高度化しているが、それに合わせて予算も多く調達できるとは限らない。Cumulus Linuxは、システムのスケールにも柔軟に対応することができるが、従来のソフトウェアと分離していないスイッチでは、当社ほど柔軟に対応することが難しい製品が多い」と述べている。

 またLeake氏は、従来のスイッチ製品と比較し、Cumulus Linuxをインストールしたベアメタルスイッチの優位性について、Linuxというオープンな技術をベースにしているため、多くのエンジニアが慣れ親しんだ方法で管理することができることや、Linuxで動作する多くのツールを利用可能であり、今後起きうるさまざまな技術革新にも柔軟に対応できることなどを挙げた。

 さらに、これから続々と登場が予想されるソフトウェア側の競合他社に対しても、「Cumulus Linuxはこれまでのネットワーク機器にはない“自動化”に注力した製品であり、規模の大小に寄らずネットワーク管理にかかるコストを大幅に軽減することができる。また、ほかの自動化ツールとの親和性も含め、後発のソフトウェアベンダーがCumulus Linuxのレベルに追いつくには時間がかかるだろう」(Leake氏)と述べ、十分な競争力を持っているとアピールする。

 実際、安価なハードウェアに搭載可能な、LinuxベースのOSをCumulusが最初に発表したのは2013年であり、同社が2年分の先行優位性をどこまで維持できるかは興味深い点である。

 残念ながら、国内市場においてベアメタルスイッチは、まだそれほど一般的な技術にはなっていない。Choe氏は「まだ日本でCumulus Linuxを導入しているのは、アーリーアダプター(Early Adopter)と呼ばれる早期対応者にとどまっている。その多くはIaaSやWebサービスの提供者など先進的な事業を展開する企業である」としながらも、「日本は非常に大きな市場であり、今後はSIerを中心にさまざまなパートナーと協業する予定である」と説明。国内のベアメタルスイッチの市場を積極的に拡大する意気込みを示した。

 日本国内でも、すでにいくつかの企業とは協業関係にあるというCumulus。ベアメタルスイッチの市場拡大に大きな影響を与える同社の動向に、今後も注目したい。

北原 静香