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2019年度には国内クラウド市場が2兆円超え、2014年度の2.7倍に~MM総研予測
(2015/9/25 06:00)
株式会社MM総研は24日、国内クラウドサービス市場に関する調査結果を発表した。それによると、2014年度の国内クラウド市場は前年比23.8%増の7749億円となった。また2019年度まで、年平均成長率は21.7%増という高い成長率を維持。同年度には、2014年度比で2.7倍となる2兆679億円に達するとの見通しも明らかにした。
MM総研の中島洋代表取締役所長は、「国内クラウド市場の高成長は、当分、持続することになる。2013年度~2018年度までの年平均率は23.6%にのぼり、2015年度には、9696億円と予測しているが、1兆円の大台に乗せる勢いがある。ネットワークをベースにした新しい社会の構築が着実に前進していることを裏付けている」とコメントした。
今回の調査は、2015年8月、事前調査としてクラウドサービスを導入済みまたは検討中の1万896法人にアンケート回答を求め、そのなかから、実際にクラウドサービスを導入済み、あるいは検討しているとした1609法人を対象に調査を実施。それをもとに市場規模などを算定している。
この結果、国内クラウド市場は、クラウドのコストメリットや、信頼性の向上、ユーザーの新規ビジネス展開における積極的なクラウド活用や、社内の既存システムのクラウド移行の加速などにより、2015年度は9696億円の市場規模になると予測。さらに、2019年度までの年平均成長率は21.7%増となり、2019年度は2兆679億円と2兆円を超える市場に達するとみている。
そのうち、パブリッククラウド(SaaSおよびIaaS/PaaS)は、2014年度には前年比33.0%増の2486億円となり、今後も、IaaS/PaaSの急成長を背景に、2019年度まで年平均18.3%増で成長。2019年度には、2014年度比2.3倍の5767億円に達すると予測した。
プライベートクラウド(ホステッド、オンプレミスおよびコミュニティ)は、2014年度には、前年比19.9%増の5263億円となった。2019年度までの年平均成長率は23.2%増となり、2017年度に1兆円を突破。2019年度には2014年度比2.8倍の1兆4912億円になると予測した。中でも、コミュニティクラウドやホステッド・プライベートクラウドが拡大するとみている。
運用コストや移行コスト、情報漏えいに対する不安で利用せず
一方、パブリッククラウドやホステッド・プライベートクラウドを現在利用していない企業は、運用コストやクラウドへの移行コスト、情報漏えいに対する不安が上位を占めていることも浮き彫りになった。
移行コストという観点では、ユーザーがシステム基盤における「所有」と「利用」のトータルコストを比較して、慎重に見極める姿勢が鮮明になっており、クラウド事業者はセキュリティ面を含め、クラウドの利用メリットを積極的に示し、利用障壁を緩和していく必要があると指摘している。
「クラウド導入における運用コストやクラウドへの移行コスト、セキュリティに対する懸念を、クラウドサービス提供事業者が払拭できておらず、クラウド普及の阻害要因となっていることが明らかになった。クラウド事業者やシステム構築事業者は、クラウドへの移行や運用業務を効率化するための支援サービスや、セキュリティにおいて、一層の充実化が求められている」。
クラウド事業者の市場シェアは海外勢が上位を占める
また、クラウド事業者の市場シェアについても調査している。
パブリッククラウドのIaaS/PaaSを基盤として活用している企業ユーザー(251社)のうち、最も利用が多かったのは、Amazon Web Services(AWS)の41.4%。次いでMicrosoft Azureが、前年調査時より10ポイント以上利用率を高めて18.7%となった。
ホステッド・プライベートクラウドの利用企業(429社)では、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のEnterprise Cloudが17.0%と最も多かった。
IaaS/PaaSでは、AWSをはじめ、グローバルなスケールメリットを背景に、価格や先進技術・サービス、マーケティングでリードする事業者が上位を占め、特に海外勢のクラウド事業者が上位3社を占める結果となった。
「クラウド事業者間の競争が激化するなか、パブリッククラウドを中心にスケールメリットを生かすグローバルベンダーの存在感が増しており、低価格化や機能進化に追随することが難しい国内ベンダーは一層の差別化が必至になる。特に、パブリッククラウドでは、AWS、Microsoftなど米国勢が上位を占め、全体に占める比率も上昇した。日本企業ではNTT Com、富士通が4位、5位に甘んじている。ホステッド・プライベートクラウドではNTT Comが首位で、存在感を示した。クラウド市場全体をみると、急成長する市場を海外ベンダーが大きくリードしているのが顕著。国内ベンダーの今後の奮起に期待したい」(中島所長)としている。