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富士通、2014年度連結決算は減収増益~当期純利益は過去最高に
(2015/5/1 00:00)
富士通株式会社は4月30日、2014年度連結業績および2015年度の業績見通しについて発表した。その席上、今年6月に社長に就任する富士通の田中達也執行役員副社長は、「2015年度は目標数字を下げてでも対処を優先する。期待されている水準よりは低いかもしれないが、今年度中に手を打っていく必要がある」とし、体質改善を優先する姿勢を示した。
また執行役員常務兼CFOの塚野英博氏は、「毛虫が蝶になるような変体を目指す。組織全体をマインドセットから変えていく。また、肥満型の体形から、プロテインを飲んだり、食生活を変えたりして、筋肉質になることを目指す。そのためのリソースシフトを行っていく」と表現した。
2015年度は増収減益の見通し
2015年度(2015年4月~2016年3月)の通期業績見通しは、売上高は前年比2.0%増の4兆8500億円、営業利益は同16.0%減の1500億円、当期純利益は同28.6%減の1000億円とした。
営業利益の減益理由として、PC事業を中心とした欧州でのユーロ安の影響でマイナス200億円、ビジネスモデルの変革費用でマイナス300億円の合計500億円を想定。塚野CFOは、「これを除くと、中期経営計画で掲げた営業利益2000億円の軌道の上にいると考えている。これをベースに中期経営計画の目標数値を超えることを考えたい」とした。
田中次期社長は、「サービスビジネスにおいて、一定のレベルの安定的な成長をキープしているが、先行投資のリターンを加速させたい。成長に向けた先行投資を緩めず、既存ビジネスおよび新規ビジネスを拡大させる。また、プロダクトビジネスにおいては、ユーロ安による為替変動の影響を、速く、強く受けている。プロダクトビジネスを持つ強みを認識した上で、外部要因に対応できるビジネスモデルを構築する必要がある。長期的な成長を維持するために確実な手を打つ必要があり、グローバルプレーヤーとの競争環境への変化にも対応していく必要がある。当社が持つデジタル基盤にすべての製品を統合して、グローバルに価値を提供できる体制を作り上げ、これをもとにしたビジネスモデルを追求する」などと述べた。
また、「課題の所在は、はっきりと把握しているが、すべての事業を精査し、中期的な経営目標を見直す。利益体質を強化できるようにしたい。具体的な計画を策定し、詳細は、しかるべき時期に説明する」とし、中期経営計画の数値目標の修正も視野に入れていることを示した。
セグメント別業績見通しは、テクノロジーソリューションの売上高が前年比1.7%増の3兆3600億円、営業利益は同5.6%増の2350億円。そのうち、サービスは同2.0%増の2兆7600億円、営業利益が4.4%増の同1850億円。システムプラットフォームは売上高が同0.6%増の6000億円、営業利益は同10.6%増の500億円。さらに、サービスのうち、ソリューションSIの売上高が同5.0%増の1兆円、インフラサービスの売上高は同0.3%増の1兆7600億円。システムプラットフォームのうち、システムプロダクトサービスの売上高は同0.7%増の2800億円、ネットワークプロダクトは同0.5%増の3200億円とした。
「テクノロジーソリューションは、成長事業の中核であり、数値成長を担うことになる。サービスについては、国内IT投資は、マイナンバーなどにより公共、金融が引き続き堅調である。ただ、マイナンバーは若干後ろにずれ込んでいる感じがある。マイナンバー関連ビジネスでは、2014年度は100億円+αの規模。2015年度は300億円を想定しており、長期的なビジネスになると考えている。システムプラットフォームはエンタープライズ系が厳しいが、欧州におけるIAサーバーの成長が期待できる。また、ネットワークプロダクトはキャリアの投資抑制が厳しい」(富士通の塚野CFO)などと述べた。
ユビキタスソリューションは、売上高が前年比1.2%減の1兆500億円、営業利益は同100%減のブレイクイーブン。PCおよび携帯電話は同3.4%減の6850億円、モバイルウェアは同3.3%増の3650億円。「PCはユーロ安の為替で部材調達コストが上昇する。コスト削減や販売施策に取り組むが、リスクを折り込んで、PCは赤字を見込む」とした。携帯電話は黒字の計画としている。PCの販売目標は前年並みの470万台、携帯電話は10万台増の330万台。
デバイスソリューションは、売上高が前年比4.1%増の6200億円、営業利益は同18.8%増の300億円とした。LSIは売上高が同2.0%増の3200億円、電子部品の売上高が同5.8%増の3000億円を見込む。
2014年度は減収増益、当期純利益は過去最高に
一方、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績は、売上高は前年比0.2%減の4兆7532億円、営業利益は同21.3%増の1786億円、経常利益は同23.4%増の1988億円、当期純利益は同23.7%増の1400億円となった。当期純利益は過去最高となった。
塚野CFOは、「円安の影響で売上高では1200億円の底上げ効果があり、これを除くと実質的には3%の減収。Windows XPのサポート終了に伴う需要の反動がありハードウェアが低迷。PCおよび携帯電話は減収になった」としたものの、「第1四半期から第4四半期にかけて、売上高、利益は着実に増加している」とした。
セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年比1.8%増の3兆3028億円、営業利益は同4.6%減の2224億円。そのうちサービス事業は売上高が同3.0%増の2兆7062億円、営業利益が同1.9%増の1772億円。
また、サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年比3.5%増の9522億円、インフラサービスの売上高は同2.8%増の1兆7539億円となった。またシステムプラットフォームは、売上高が同3.1%減の5965億円、営業利益は同23.7%減の452億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は同2.0%増の2781億円、ネットワークプロダクトの売上高は同7.2%減の3184億円となった。
「サービスが国内公共分野などを中心に成長。円安の押し上げ効果もあった。国内SIビジネスが大幅な増収となったほか、システムプロダクトでは、国内でIAサーバーが伸長したが、全体では前年の大型商談の反動があった」などとした。
ユビキタスソリューションは、売上高が前年比5.6%減の1兆628億円、営業利益は前年の268億円の赤字から、87億円の黒字に転換した。
そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が前年比11.3%減の7093億円、モバイルウェアの売上高が8.4%増の3535億円となった。PCの出荷台数は約2割減の470万台(前年実績は590万台)、携帯電話の出荷台数は約1割減の330万台(前年実績は370万台)になったが、いずれも黒字になったという。
デバイスソリューションは、売上高が前年比0.8%減の5956億円、営業利益は同219.1%増の369億円。そのうち、LSIの売上高は同2.5%減の3137億円、営業利益は前年のブレイクイーブンから252億円の黒字。電子部品の売上高は前年比1.1%増の2834億円、営業利益は同1.4%増の116億円となった。