ニュース
NTTソフトが拠点集約、社内横断で新ビジネス創出に挑む
コミュニケーションを活性化する様々な仕組みも
(2014/9/26 06:00)
NTTソフトウェア株式会社(以下、NTTソフト)は8月18日より、横浜・横須賀にあった4拠点を、横浜のみなとみらいにある横浜アイマークプレイスの2フロアに集約した。この新オフィスは、コミュニケーションを活性化することによりアイデアを産み出す「Active Communicationオフィス」を狙ったものだという。
また、同社は9月25日に、新規ビジネス創出を目的として社内を横断する新組織「戦略ビジネス特区」を10月1日より創設することを発表した。その第一段として、戦略ビジネス特区内に社内ベンチャー育成の「新ビジネス創出特区」を設置する。
25日に開催された記者説明会において、同社代表取締役社長の山田伸一氏は、「NTTソフトは、創造性とスピードで変革しつづける企業になる必要がある。そのために、Active Communicationオフィスのような『アイデアを産み出す仕掛け』、HTML5やGroovy・Grailsといった開発技術のような『アイデアを素早く形にする仕掛け』、新ビジネス創出特区のような『アイデアをビジネスに育てる仕掛け』の3つに取り組む」と、一連の施策について語った。
広大なオフィスをオープンに
新オフィスは、みなとみらいにある横浜アイマークプレイスの12階と13階。ここに横浜・横須賀の旧4拠点にいた約1000人が勤務している。
建物として最大の特徴は、1フロア1700坪という、ほぼサッカーグラウンドに相当する広さのフロア面積だ。NTTソフトではこの広さを活かし、長辺110mをまるまる使った1つのオフィススペースを設けた。
同社取締役 総務部長の金崎慶治氏は、これまでの横浜・横須賀のオフィスの問題として、4つに分散したオフィスとともに、部門ごとの執務席や会議室に分けられた伝統的なつくりを挙げ、「新しいシチュエーションが生まれず、創造的なコミュニケーションがない」と指摘した。
この問題に対して新オフィスでは、大きなフロアをオープンなオフィススペースとして利用することで解決をはかった。また、横浜アイマークプレイスの建設中に入居を決めたことから、12階と13階のフロアを直接結ぶ中階段を設けて、フロア間のコミュニケーションも促進した。「社内では『入社以来会っていなかった同期に10年ぶりに会った』という声もありました」と金崎氏はエピソードを紹介した。
オフィスで使う什器などは統一し、個人の荷物はワゴンや脇机ではなくロッカーに収納するようにした。これはフリーアドレスを採用したオフィスで使われる方法だ。金崎氏によると、同社ではフリーアドレスは採用していないが、これによりプロジェクトの新規発足などに柔軟に対応できるという。
「やまて」の周辺などにはオープンなミーティングペースを設置。テーブル型の席やファミレス風の席、カフェの窓際カウンター風の席など、さまざまな席を設けて、コミュニケーションから仕事まで利用できるようにしている。
会議室は、会議室予約システムで管理。壁のパネルから予約情報を確認できるほか、空予約を防止することで、必要なときにすぐに会議室が使えるようになったという。なお、会議室の名称は社員による人気投票で決定し、社内のデザイン担当によりサインを作成した。
金崎氏によると、これらの新しいオフィスの構成は、社内で目的や必要なものを考えつつ、知見を持つ什器メーカーの話なども聞きながら決めたという。
また、ITによる利便性をさらに追求し、自社開発のBYODシステムやスマートフォン対応内線電話、グループチャットを全体で導入した。
社内の内線電話番号を人事情報から「ProgOffice」NW電話帳に登録して一括管理。自席にいなくてもスマートフォンで内線電話を利用できる。また、無人受付システムも同じ電話帳を利用しているため、情報のメンテナンスなしで、来客が訪問先を検索して呼び出せるようになっている。
また、グループチャット「TopicRoom」は、LINEなどのメッセージングソフトの感覚で、PCでもスマートフォンでも社内コミュニケーションがとれる。企業用途向けに、ログや案件情報とのリンク、端末認証によるセキュリティなどの機能を備えている。
このように新オフィスでは、さまざまな新しい取り組みをしながら、広いフロアを有効活用してデッドスペースを削減した。その結果、4拠点に分かれていたときのフロア面積合計4290坪から、2フロアで3390坪と、21%のスペースを削減。それにともないコストも削減したという。
既存事業に縛られず「特区」で新規ビジネスを開拓
こうした新オフィスを含む新しい取り組みについては、代表取締役社長の山田伸一氏が解説した。
背景として、業界が「大型・長期開発から小型・短期開発へ」「オンプレミスからクラウドへ」「オフィスワークからモバイルワーク」へシストしていることから、「当社も、単品開発・人月のビジネスから、繰り返し使うソリューションのビジネスに転換していかなければならない」と説明。それをふまえて、「クラウド」「セキュリティ」「モバイルワーク」「ビッグデータ」のホットな4分野にソリューションを拡大していることを示して、「けっこうがんばっているのではないかと思っている」と山田氏は語った。
「しかし、グローバル化の波を受けて、さらに加速していく必要がある」と山田氏は続け、「新規ソリューションを創出して変革しつづける企業になる」ことをテーマとして掲げた。そして、そのために「アイデアを産み出す仕掛け」「アイデアを素早く形にする仕掛け」「アイデアをビジネスに育てる仕掛け」の3つが必要だと主張した。
「アイデアを産み出す仕掛け」としては、Active Communicationオフィスでコミュニケーションを活性化してアイデアを産み出すという。また、「アイデアを素早く形にする仕掛け」としては、新しい開発技術の採用をサポート。具体例として、Javaプログラマーの生産性を向上させるGroovy言語とGrailsフレームワークの「Grails/Groovy推進室」、HTML5の「HTML5推進室」、技術者育成セミナー「ソフト道場」が紹介された。
「アイデアをビジネスに育てる仕掛け」に該当するのが、9月25日に発表された戦略ビジネス特区だ。既存ビジネスの枠組みにあてはまらない新規ビジネスを作り、ソリューション立ち上げノウハウを集結するのが狙いだという。「『早く立ち上げてフィードバックを回す』という起業の考えを社内に取り込む」(山田氏)。
第一段として、「新ビジネス創出特区」を設立。社内から「イントラプレナー(社内起業家)」を募集。特区担当取締役、ファシリテーター、事業コーディネータが活動を支援する。5年で10億円を目標とするという。
特区を設けた背景として山田氏は「新しいビジネスの種が社内に眠っていて、埋もれてしまっているのではないかと考えていて、それを事業につなげたいというのが当初の思い。」と説明した。