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NEC・NTTなど5社、SDNで柔軟な広域ネットワークを実現する基本技術を確立

 日本電気株式会社(NEC)、日本電信電話株式会社(NTT)、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)、富士通株式会社、株式会社日立製作所の5社は7日、広域ネットワークインフラの総合的なSDN(Software Defined Network)化を目指す研究開発プロジェクト「Open Innovation over Network Platform」(愛称:O3プロジェクト)の成果を発表した。SDNにより柔軟な広域ネットワークを実現する基本技術を確立したという。

 O3プロジェクトは、総務省の「ネットワーク仮想化技術の研究開発」の委託研究として、2013年6月から5社共同で推進しているもの。今回、この成果として、複数の広域ネットワークインフラを統合管理するプラットフォームや、その上で動作する汎用ネットワーク制御アプリケーションなど、広域ネットワークのSDN化につながる基本技術を確立した。

 具体的には、まず、複数の広域ネットワークを構成するネットワークをそれぞれ統一的なルールで管理するため、ネットワーク構成や通信状態といった必要な情報を共通して扱える表現形式で定義。これを扱う情報データベースを構築した。これにより、光ネットワークなど下位レイヤのネットワークリソースが、パケットトランスポートなどの上位レイヤから簡単に扱えるようになり、関連する装置を連携させたマルチレイヤでのパス設定を実現している。

 また、このネットワーク情報データベースを活用し、種類の異なる複数のネットワークを対象に、共通項目に基づいた運用管理や制御が可能なソフトウェアを開発した。新規ネットワークと既存ネットワークの相互接続を目標に、接続に必要な機能を仮想化することで制御負荷を平準化し、既存の大規模ネットワークに対応した、新規仮想ネットワークの高速な構築を可能にしている。

 さらに、相互接続の際、既存ネットワークから新規ネットワークへの漸進的移行を支援する、ネットワーク移行技術も開発したほか、エンドユーザーが要求する帯域に応じて、最適な光コアネットワークリソースの提供を実現しているとのこと。

ネットワーク情報データベース技術とリソース割り当て技術
ネットワーク共通制御・管理技術

 これらを制御するために必要なSDNネットワーク装置についても、SDN対応ソフトウェア転送ノードでは、10万フロー時における転送性能目標を達成。またSDN対応パケットトランスポートノードで、仮想ネットワークから要求される、10種類以上のサービス品質の提供を、従来の数カ月から数分以内に短縮するPTN制御技術およびドライバ技術を開発した。あわせて、SDN対応オーバーレイスイッチでも、特性の異なるフローごとに適切な転送経路の設定を実現している。

 5社によれば、特に今回の成果によって、サービスプロバイダーは、Web上での簡単な入力などにより、希望するネットワーク構成を通信事業者へ伝えられるようになるとのこと。一方、通信事業者は、光ネットワークとパケットトランスポートネットワークを柔軟に組み合わせて、サービスプロバイダーの要求に合わせた仮想ネットワークを構築できるほか、仮想ネットワークの上で、「いつ」「どこで」「何が」起こっているかを瞬時かつ的確に把握できるようになるという。

 さらに将来的には、各レイヤのネットワーク装置を連携させることで、通信事業者は、サービスプロバイダーの要求に応じた広域ネットワークの設計・構築・変更を、従来の約1/10の時間で実現できるようになるとした。

 なお5社は今後、2013年度中にWebサイトなどでの情報公開を開始し、2014年度中には成果の一部をオープン化する計画。その後、2016年3月までに研究成果内容および実証実験などの結果を明らかにし、国内外の通信事業者、サービスプロバイダー、ベンダーへの提供を目指す。

石井 一志