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日立、ビッグデータを活用してネットワークの高付加価値化を目指すソリューション

日立 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社 プラットフォーム部門COO兼通信ネットワーク事業部長の和田宏行氏

 株式会社日立製作所(以下、日立)は16日、ビッグデータの利活用技術により、ネットワークの高付加価値化を実現する「Traffic Management Solutions(TMS:トラフィック・マネジメント・ソリューション)」を打ち出し、通信事業者や社会インフラ企業などを対象に、関連ソリューションの提供を開始すると発表した。

 第1弾として、「トラフィック管理ソリューション」「ネットワーク機能仮想化ソリューション」「広域SDN連携ソリューション」「M2Mトラフィックソリューション」の4つのソリューションを提供する。

 日立 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社 プラットフォーム部門COO兼通信ネットワーク事業部長の和田宏行氏は、「トラフィックの状態を把握し、目的に応じて制御するソリューションがTMS。リアルタイム型データは、2010年から2016年の間に50倍に増加し、蓄積型データも6倍になる。こうしたヒト、モノ、コトから発生するさまざまなトラフィックを管理し、流れの効率化と価値最大化を実現することになる。計測、分析、制御というサイクルを、秒単位に回すことができるのが大きな特徴になる」と説明する。

 TMSでは、急拡大するデータ通信のトラフィックを対象に、いまを見える化する「計測」、本質を発見する「分析」、あるべき姿を実現する「制御」の3つのサイクルによってトラフィックを最適に管理。これにより、企業活動に生かしていくためのネットワークソリューションとして提供できるようになるとする。

 日立が、通信事業者向けをはじめとして提供してきた高信頼な製品開発やシステム構築、運用サービスでのノウハウを活用。NFV(Network Function Virtualization:ネットワーク機能の仮想化)、SDN(Software-Defined Networking)といった最新ネットワーク仮想技術、M2Mなどの新たな通信技術を取り組み、企業の設備投資や運用コストの削減などに最適なICT投資を実現するほか、新規事業の創出や拡大などのビジネスの成長を支援するとしている。

ビッグデータ利活用の取り組み
データトラフィックの動向
TMSとは
TMSの適用対象

NFVやSDNなどの技術を応用した個別ソリューション

 「トラフィック管理ソリューション」では、通信事業者向けに一時的な通信品質の悪化をもたらすバーストトラフィックが発生している時間や場所をリアルタイムで検知し、制御することで、安定的な通信環境を実現し、QoE(利用者の満足度)の向上を図るという。「データ通信の一時的ピークトラフィックにあわせて設備投資をしなくてはならないという通信事業者の課題に対して、ユーザーごとのトラフィック制御を秒単位で行え、設備投資の最適化を図ることができる」という。

トラフィック管理ソリューション

 「ネットワーク機能仮想化ソリューション」は、TMSにNFVを取り込むことにより、トラフィック量やサービスの利用状況を把握し、それに応じてネットワークの機能の適切なリソース配備を行う通信事業者向けソリューション。「トラフィック量に応じて、EPCのリソース制御が可能になる。柔軟性を持ち、設備投資のリードタイム短縮、投資コストの抑制にもつながる」としている。

ネットワーク機能仮想化ソリューション。トラフィック量に応じてEPCリソースを自動配備し、設備投資の抑制を目指す

 また「広域SDN連携ソリューション」は、通信事業者やデータセンター事業者、データセンターを有する企業や自治体などが対象。データセンター内のネットワーク仮想化を適用するほか、広域SDN技術を活用することにより、複数のデータセンター間でのネットワーク帯域変更を容易にすることができるソリューションとのことで、「TMSとSDNとの組み合わせにより、複数のデータセンター間で広域ネットワークにまたがるサービス提供に時間を要するという課題を解決することができる」とした。

広域SDN連携ソリューション
広域SDNへの研究開発の取り組み

 日立では、研究開発プロジェクト「O3(オースリー、Open Innovation over Network Platform)プロジェクト」に参加しており、「ネットワーク管理制御プラットフォーム技術、ネットワーク設計・構築・運用管理ソフトウェア技術、仮想化対応ネットワーク装置技術の3つの研究開発分野において、横断的にパケットトランスポートシステムのSDN化に取り組んでいる。この成果についても反映させていく考え」だという。

 「M2Mトラフィックソリューション」は、同社が培ったM2Mソリューションと、TMSとを組み合わせることで、大小さまざまなパケットが大量かつ広範囲に発生するといったM2Mの特性に応じてきめ細かなネットワークの計測、分析、制御を提供する。

 「日立は鉄道運行システムなど、実業としてM2Mを展開している実績があり、それを生かすことができる。例えば、当社のワイヤレス環境モニタリングシステム『AirSence』を活用して、雨や風量などのセンサー情報を収集し、トンネルや橋などに課題が発生した際には保守員が現場に駆けつけるという仕組みができあがっている。これにTMSを組み合わせることで、監視カメラを設置して、課題が発生した場所の映像を確認するために、カメラ向けにリアルタイムで多くの帯域を活用するなど、動的な帯域制御を実現するのが今回のソリューションだ」と説明。

 さらに、「将来的には、これらの情報をもとにして、異常時には鉄道や道路などの交通制御にもつなげることで、より安全性が高い社会を実現できる。安全で安心な社会を実現することにTMSが寄与することになる」と述べた。

社会インフラ向けのM2Mトラフィックソリューション
共通基盤としての強化技術

 同社では、今後、TMSをベースにして、履歴情報を活用したネットワーク分析の高度化や、ネットワーク分析の応用などへと発展させていく考えである。

 2018年度には1000億円の事業規模を目指すという。

TMSをコアとして応用を進める
日立グループ一体となってTMSを推進するという

大河原 克行