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一般社団法人データサイエンティスト協会が発足、職種の定義や人材育成支援などを実施へ

データサイエンティスト協会の発起人で、代表理事を務めている、株式会社ブレインパッド代表取締役社長の草野隆史氏。「(現在務めている)代表理事については今後、参加者の議論で再度決めていくので、発起人としての立場だ」とあいさつした。

 ビッグデータ活用への注目が高まるにつれて、新たな人材像として、データを分析し活用するためのデータサイエンティスト(分析人材)もまた注目が集まるようになった。そのデータサイエンティストを支援する団体として、7月16日、「一般社団法人データサイエンティスト協会」が発足。同日に記者会見が行われた。

 昨今、各所に設置されたセンサーから収集される膨大なデータや、各種ネットサービスで蓄積されるデータなど、収集・蓄積可能なデータの種類と量が急激に増加しており、それらのデータからビジネスに活用する知見を引き出すための人材として、データサイエンティストにも注目が集まり、各企業でもデータサイエンティストの採用を前向きに検討しているところが増えた。しかし、そもそもデータサイエンティストという職種に対しては明確な定義がないことが問題になっているのだという。

 データサイエンティスト協会の発起人で、代表理事を務めている、株式会社ブレインパッド代表取締役社長の草野隆史氏は、「急激にビッグデータが関心を集めているが、そもそも、ビッグデータは使いこなす人材がいないと価値を生まない」と、この分野での人材が占める役割の大きさを指摘。

 その上で、「(データサイエンティストには)統計数理の学術的なバックグラウンドに加えて、ITスキル、ビジネスの知識といった多様なスキルを求められる。にもかかわらず、職種に明確な定義がないので育成もしづらいし、期待される役割とスキルのミスマッチにより、データ分析を頼みたいと思っても想定した成果が得られない、その人の経験や能力を生かせないといった事態が起こってしまっている。そのため、データサイエンティストの定義をはっきりさせ、新しくこの職業を目指そうという人間が、どういうスキルを身につければいいのか、はっきりさせることが第一の目的。今後、日本がビッグデータで新しい付加価値を生かしていくためには、明確な定義と人材の育成、適切な評価が必要である」と、同協会の設立意図を説明した。

 また、企業を超えてデータ分析にかかわる人材が交流し、議論や情報共有する場を提供。シンポジウムも開催して、知識の集約などを図るとした。

設立の背景
データサイエンティストについては、明確な定義がされていないという
活動の目的と全体像

 具体的な活動としては、まず2013年度(2014年4月期)中に、スキル標準の策定や人材像を定義し、上位者の指示のもとで要求された作業を担当できる、エントリーレベルに必要とされるカリキュラムやシラバスを作成するとのこと。また2014年度は、タスクを独力で遂行可能な、ミドルレベルのカリキュラムを提供する予定で、さらにスキル標準と業界内の各種関連資格との連携マップを作成するとした。

今後のロードマップ(案)

 なお、顧問に就任した大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 理事 統計数理研究所長、総合研究大学院大学 統計科学専攻 教授の樋口知之氏は、「私はデータサイエンティストを『過去の経験、知識、目の前にある大量データを分析解析し、予測モデルを作り、合理的に意思決定できる人材』と定義しているが、この活動で、データサイエンティストがどういうものなのかを、一般の人にも広く理解してもらえればと期待している」とあいさつ。

 また、「ビジネスにおいて、(データサイエンティストが)どういう職種なのか理解してもらえておらず、便利屋的な扱いで、高い評価がされていない現況もあるが、ビッグデータ活用などで、今後、活躍の場は増えてくるだろう。企業の執行部にも、社内において(データサイエンティストが)どういう価値を生み出していくかを理解してもらえればと思っている」と述べ、今後への期待を表明した。

 現在、同協会の運営に積極的にかかわっているのはブレインパッド1社のみだが、草野代表理事は「あくまでも当社は発射台であり、今後は、さまざまな人と議論を進めながら会をまとめていく。まずは大きく世の中へ広報し、関心持ってもらう中で、適切な方に着任していただこうと思っている」と述べ、さまざまな団体・個人に対して広く参加を呼びかけていく方針を示している。

現状での団体人事
左から、事務局長の宍倉剛氏、代表理事の草野隆史氏、顧問の樋口知之氏

石井 一志