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NetApp、オールフラッシュのストレージ製品「EF540」~ストレージの重要性は容量からパフォーマンスへ

 米NetAppは19日(米国時間)、カリフォルニア州サニーベールにある本社においてグローバルプレスイベントを開催。オールフラッシュのストレージ製品「EF540」のリリースと、来年リリース予定の新製品ファミリ「FlashRay」の概要を発表した。

 いずれも近年、ストレージに対して高まりつつあるハイパフォーマンスへのニーズにフラッシュ技術で応えた製品群。同社CEOのトム・ジョージャン氏は「現在の企業にとっては、いかに意思決定のスピードを早くするかが非常に重要。そうした要求はストレージに対しても強い。いかにビジネスの変化に迅速に対応し、コスト削減だけでなく利益増につなげることができるのか。NetApp以外の選択肢では達成できない成果を新しいフラッシュストレージで顧客に届けたい」と語る。

米NetAppのトム・ジョージャンCEO

充実したサポートや高可用性を持つフラッシュアレイ「EF540」

エンタープライズレベルのニーズを業界ではじめて満たしたオールフラッシュアレイのEF540
NetApp プロダクトオペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデント マニッシュ・ゴール氏

 NetAppにとって最初のオールフラッシュアレイ製品となるEF540は、既存の「Eシリーズ」と同様、ストレージ管理OSのSANtricityをベースに開発されている。最大のポイントは、30万を超えるIOPSと、1/1000秒未満のデータアクセスを実現するというパフォーマンスを、信頼性や可用性といったエンタープライズ企業が要求するさまざまな要件とともに提供できるという点だ。

 プレスイベントに登壇したNetApp プロダクトオペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデント マニッシュ・ゴール氏は「エンタープライズレベルの要求に応えることができた業界初のフラッシュアレイ」と自信を隠さない。

 これまでオールフラッシュアレイのストレージといえば、ベンチャー企業の製品が大半を占めており、NetAppのほか、EMC、IBM、日立といったエンタープライズ中心に製品を提供してきたビッグベンダは、フラッシュストレージ、中でもオールフラッシュアレイを指向する製品のロードマップをほとんど明示していない。

 そうした中にあって、「低コストでありながら、サブミリ秒の低遅延で、エンタープライズ企業が求める拡張性と可用性、信頼性を提供できる製品は、EF540のほかにない」とゴール氏は強調する。ベンチャーの提供するフラッシュストレージに対し、サポートなどの面で不安を抱いていた大企業のためのフラッシュアレイ、これがEF540の位置づけとなる。

 ストレージにパフォーマンスを求めるニーズはここ1、2年で急激に高まっている。かつては価格が高すぎて導入が難しいとされていたフラッシュドライブも低価格化が進み、金融機関やeコマースなど、膨大なデータベーストランザクションを抱える企業で普及が進んでおり、さらにリアルタイム分析などアドホックでハイパフォーマンスなデータベース運用を実現するニーズがエンタープライズ業界全体から高まっている。EF540はそうしたエンタープライズの需要に対し、フラッシュのためのOSとしてSANtricityを強化することで実現したオールフラッシュアレイといえる。

 NetAppのストレージ製品は同社のフラグシップOSといえる「Data ONTAP」を中心に展開されてきた。だがData ONTAPは、もともとHDDをマネジメントするために開発されたOSであり、フラッシュストレージを支えるアーキテクチャとは言いがたい。

 そこで、今後さらに進むであろうフラッシュストレージへのデータ移行を支えるために、LSIから買収したデータマネジメント技術であるSANtricityを数年にわたって強化し、それを基盤とした新たなオールフラッシュアレイEF540を今回新たに市場に投下した。

 「現時点で唯一、最高レベルのエンタープライズニーズを満たすオールフラッシュアレイ」とゴール氏をはじめとする同社幹部は強調する。課題とされているハードディスクからフラッシュへのデータ移行も「一貫性を一切損ねることなくスムーズに実現可能」としている。

ストレージ上で動作するアプリケーションのワークロードは、よりパフォーマンスが重要となりつつあるという。オールフラッシュのストレージは、これに応えるものだ
充実したサポートや高可用性といった、ベンチャー製品にない特徴を強調する

まったく新しいOSを搭載する次世代フラッシュストレージ「FlashRay」を計画

2014年初頭に発売が予定されているFlashRayファミリは、エンタープライズのニーズをさらにすくい取った製品群となる

 ここで興味深いのは、同時に発表された2014年発売予定とされている「FlashRay」製品ファミリは、ONTAPでもSANtricityでもなく、まったく新しいOSを新たに開発して搭載すると発表している点だ。

 NetApp幹部の発言によれば、FlashRayに搭載されるOSは「ONTAPを発展させたものであり、SANtricityを補完するもの」とのこと。現時点で提供できる最高レベルのエンタープライズフラッシュアレイがEF540ならば、FlashRayはこれから5年でさらに厳しく要求されるであろうエンタープライズニーズ、例えばクラウドで求められる拡張性や、インラインで重複排除や圧縮などを実現する高い機能性などを含めて、すぐれたパフォーマンスとともに提供するとしている。そのためには新たなフラッシュストレージのためのOSが別に必要というのが同社の主張だ。

 ストレージにおいてもパフォーマンスが重視されるようになっているとはいえ、現在はまだフラッシュアレイに対するインフラが整っていない状態であり、FlashRayを市場に投下するには時期尚早とNetAppは判断し、2段階にわたるフラッシュストレージロードマップを提示した。

 ストレージに対するパフォーマンスの要求は今後さらに進むのか。ES540の成功は、FlashRay、ひいては他ベンダの製品も含むフラッシュストレージ業界全体の今後を占うひとつの大きな試金石といえる。

 EF540のシステム最小構成価格(参考価格)は2054万円(税別)からで、2月19日から提供を開始している。またFlashRay製品ファミリの提供開始は2014年初めの予定。

(五味 明子)