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DNPと日本オラクル、製造業向け生成AIソリューションで協業――図面などの「読めないデータ」を構造化し現場の意思決定を高度化
2026年3月25日 06:00
大日本印刷株式会社(以下、DNP)は23日、オラクルのAI基盤を利用した生成AIソリューションの提供を開始した。DNPが独自開発した「DNPドキュメント構造化AIサービス」と、日本オラクル株式会社の自律型AIデータベース「Oracle Autonomous AI Database」を組み合わせて提供する。
DNPでは、企業内の文書をAIで活用するためにデータ化することが容易でない点に着目。特にデータ化が難しい、製造業で利用する図面に記載された文字のデータ化を支援していく。
また、日本オラクルは製造業に多くの顧客を持っていることから、「当社は製造業の現場とのパスを持っていなかったが、オラクルをパートナーとして入っていくことができる」(DNP 金沢貴人常務取締役)と、協業のメリットを説明している。
一方の日本オラクルでも、「我々がAIを導入する際、コンサルティングチームが最初に受ける仕事がデータ整理。DNPから今回の協業提案を受けた際、企業のAI導入を加速する重要なピースとなると確信した」(日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏)と、今回の取り組みの効果を説明している。
データ活用の入り口であるデータ整備により、AIの活用を支援
DNPでは約30年前から、印刷用原稿を二次利用、三次利用するワンソース・マルチメディア展開を進めてきた。今回、この事業を発展させ、社内データのAI向け整備事業をスタートした要因について、DNPの金沢常務は次のように説明する。
「この技術を発展させ、生成AIに活用できないかというところから開発をスタートした。生成AIの利用は急速に拡大しているが、企業の実務に定着しきれていないのが実態。要因のひとつが、企業内に存在する各種情報資産の連携に課題があることだ。複雑なPDFや図面といったデータに対し、AIがエラーや誤回答を引き起こしている。これはAIの精度が原因ではなく、社内データがAIに読めない形になっていることが根本的な原因だ。つまり、AI活用を左右する大きな要因が、入り口であるデータの整備にある」。
社内文書をAI化するサービスであるDNPドキュメント構造化AIサービスでは、構造化AIが社内文書・データのレイアウトを自動で認識し、素早く生成AIが理解しやすい構造化データへ変換する。「ドキュメントのレイアウト構造を認識するAI」と「表組構造を認識するAI」により、大量のデータを、人手をかけずに処理できるのだ。
「当社が提供しているサービスは、複雑な図表やツリー図など、AIが読み込むことが難しいと言われている文書を、AIが迷わず完全に理解できるAI-Readyデータへと変換する仕組みになる。このサービスを利用することで、俗に言うハルシネーションを約90%削減し、実用レベルとすることができる」(DNPの金沢常務)。
さらに、過去のデータだけでなくリアルタイムデータと連携するために、日本オラクルと協業する。日本オラクルは多くの製造業への導入実績があるため、製造業の現場との接点がなかったDNPにとっては、顧客との接点を持ち、ソリューションの有効性を理解してもらう機会につながる点もメリットと判断したという。
「社内データを生成AIで読み込めるようになっても、企業には情報の分断による手作業発生という課題が残っていた。図面データのような過去のデータ、リアルタイムデータを処理するシステムが別々のシステムであるため、結局、人がそれぞれを検索し、手作業で照合、確認をしなければいけない。そこで起きるタイムラグ、つまりシステム間に横たわる情報の断絶による二度手間・三度手間、これこそが意思決定のスピードを奪っていると当社は考えている。この現場の課題を一掃し、高度な意思決定を支援するのが日本オラクルとの連携となる」(DNPの金沢常務)。
今回の協業では、経営判断に必要な「過去の経験・文書」と「リアルタイムの業務データ」を関連付けて回答できるようにすることを目指している。Oracle Autonomous AI Database上で、社内文書と現場の最新状況を横断して検索できるため、回答内容とあわせて「どの情報に基づいた判断か」を提示できるという。
マニュアルや記録などの文書は、内容の意味に近いものを探す「ベクトル検索」で参照し、在庫や設備などのリアルタイムの業務データは条件を指定して正確に探す「SQL検索」で取得する。両方を組み合わせることで、必要な社内文書と最新の業務データを同時に提示して回答可能になる。
例えば「エラーAの対応方法は?」「修理のための部品はある?」と問い合わせると、過去の保全記録の該当箇所と在庫情報をあわせて提示し、対応判断を早められるとした。
また、オラクルが提供しているクラウド基盤により、AI活用の拡張とAIエージェントへの発展に対応できる点も強みだ。今回のサービスはクラウドを活用しているため、企業はシステム構築や運用の負担を抑えながら、短期間で利用を始められるとした。
さらに、自律型AIデータベースのOracle Autonomous AI Databaseを活用することで、セキュリティと安定性を確保しながら業務利用を実現でき、導入した企業側は、AI活用を継続的に拡張しやすくなる。このほか、最新のAI技術や新たなAIモデルを迅速に取り込むことも可能で、オラクルが提供するAI関連サービスを活用し、業務に応じたAIエージェントの開発や機能拡張に発展させることも可能とのこと。
日本オラクルの竹爪専務執行役員は、「AIでデータ活用していく際には、データ整備と共に、AIにデータをきちんと提供できる仕組みを基幹業務システム側が備えている必要がある。そのためにシステムのモダナイゼーションが必須になってくる」と述べ、AIによってデータを活用していくためには前段階が必要と指摘。また、「今回のターゲットである製造業の企業は、ほかのインダストリーと比較し、システムモダナイゼーションに着手した時期が非常に早く、当社のOCI(Oracle Cloud Infrastructure)上で、多くの大手製造業がモダナイゼーションを実現している」とも述べている。
さらに、オラクルの強みとして竹爪専務執行役員は、「当社のデータベースでは、さまざまなデータを一元的に取り扱うことができる。文書データはもちろん、リアルタイムデータも、データソースを分けず、仮想的あるいは物理的に一元的に管理できる」ことを挙げた。
一方で、懸念されるセキュリティについても「業務データをAIに使わせていく際には、セキュリティと信頼性を担保することが必須要件になってくる。この点については、当社がエンタープライズ領域で培ってきた技術、お客さまからの信頼と実績を生かしていく」ことを強調している。
なお、今回のサービスのターゲットは、当初は製造業としているが、「電力会社や自治体など、徐々にターゲットを広げ、ビジネス拡大を進めていきたい」(DNPの金沢常務)考えだ。







