大河原克行のキーマンウォッチ

「“文化”を受け継ぎながら3年で2倍の成長を」~ネットアップ・岩上純一社長

 2012年10月1日に、岩上純一氏がネットアップの代表取締役社長に就任して半年を経過した。日本IBM、SAPジャパンを経て、2009年8月にネットアップに入社。その後、営業統括本部長として、日本におけるパートナー戦略や販売戦略立案、実行に取り組み、11四半期連続での2けた成長を達成という実績をひっさげ、満を持しての社長登板となった。

 そして、岩上社長は2013年5月からスタートする新年度においては同社初の中期経営計画を策定。「今後3年間で売上高倍増を目指す」と意欲をみせる。引き続き力強い成長戦略を描くネットアップの岩上社長に話を聞いた。

成長しても“文化”を壊す人はいらない

――2009年8月のネットアップ入社時から、「社長含み」と言われてきましたね。2012年10月の社長就任まで、3年間という期間は長かったような気がしますが。

ネットアップ 代表取締役社長の岩上純一氏

 最初から3年間という期間が決まっていたわけではありませんし、タイミングとしては、前任のタイ・マッコーニーが米本社に帰任する時期ということもありました。

 ただ、ネットアップにおいては、3年間という期間は決して長いものではありません。米本社CEOのトム・ジョージャンも、ネットアップに入ってから丸4年でCEOに就任しましたし、CFOのニック・ノベイロも、入社3年半を経過して就任しています。これがネットアップのカルチャーだと思うのです。

 ネットアップにとって、(例えば)業績が落ちていてそれを成長路線に転換してくれる人がいるのならば、それはのどから手が出るほど欲しい人材かもしれません。しかし、成長しても、ネットアップの文化を壊してしまう人ならば不要だというのが、1992年の創業以来のカルチャーです。

 私は、入社時に14人もの人と面接しましたし、タイ(マッコーニー前社長)も入社時に11人と面接したと言っていました。これだけの面接を通じて彼らが共通して見ているのは、ネットアップの文化にあうかどうかということなのです。

 評価項目にも、「カルチャーフィットするか」というものが用意され、これが重要な要素になっているのです。ここに「YES」という言葉が書かれるようでなければ、ネットアップの経営にはタッチできません(笑)。

 私にとっても、この3年間というのは重要なものでしたし、まさに「石の上にも3年」というように、ネットアップのカルチャーを理解し、そのなかで私のビジネススタイルを浸透させることができた期間だったといえます。

 わずか半年間で社長に就任してしまい、部下をごっそりと連れてきて、カルチャーを根こそぎ変えてしまうということはやりたくなかったし、ネットアップには合わない。また、3年間という期間を通じてビジネスをやってきたことで、「この間の業績はラッキーだったね」ということも言われない。

 3年間というのは、経済の山谷を経験するだけの期間ですからね。特にこの3年間は、最も厳しい3年間だったのではないでしょうか。

自らネットアップを知り、お客さまに理解していただく

――社長に就任するまでの3年間、どんなことに取り組んできましたか。

 もし、通知表のようなものがいただけるのであれば、社員やパートナーからぜひ聞いてみたいですね(笑)。パートナーから「付き合いやすい会社になったのかどうか」という点は、特に評価を聞きたいです。

 入社した2009年8月時点では、それまで3年連続で日本法人が業績不振にあえいでいました。ワールドワイドでは、より効率的なストレージを提供するベンダーとして成長を遂げていた時期であり、日本だけが業績が落ちていた。営業部門を強力にけん引する人材が求められており、そこに私が入社したわけです。

 ただ、短期間に成長路線に転換させる方法は、大きく2つしかありません。ひとつは、なにか革新的な製品が出て、「奇跡的」(笑)に復活するということ、もうひとつは、ちゃぶ台をひっくり返すようなオペレーションによって転換させることです。

 しかしネットアップの場合は、非常に文化を大切にする会社です。個人1人ひとりの成長にもこだわり、個人を尊重しますし、働きがいのある会社であるという点も重視している。つまり、この手法も通用しない。

 そこで、最初に「私に90日間ください」と提案し、その90日間を30日、30日、30日というように分類して取り組みをはじめたのです。

 人というのは、評価される前に理解されたい動物ですから(笑)、最初の30日は、前職などでお付き合いをいただいていたユーザー、パートナーを訪問するとともに、社員とも話をする機会を設けました。この間、営業全員と話をしました。私は、直接話を聞いて理解をしないと戦略が立案できない性格ですから、自らネットアップを知って、理解し、先入観を排除するための30日間でした。

 このとき、ネットアップ製品を導入していただいているユーザーのCEOやCIOといったCクラスの方々に、「ネットアップを知っていますか」と質問したのですが、知っていると答えた方が10%もいなかったのです。(ITの)部長クラスでも50%、現場となる製品検討クラスで90%です。現場での90%は、まぁ合格点とはいえますが、彼らが意思決定権を持つまで、成長戦略を待つわけにはいきませんからね(笑)。

 では、なぜネットアップを導入している企業のCクラスのエグゼクティブでも、ネットアップに対する認知がないのか。

 振り返ってみますと、ネットアップの営業戦略は、OEM戦略とリセラー戦略です。リセラーにしてみると、ネットアップの営業やSEに、直接ユーザーには出向いてほしくないのが本音です。

 一方でネットアップは日本IBMや富士通にOEMをしているわけですが、ネットアップの製品であるということを知らないまま、相手先のブランドの製品として導入しているケースが多い。CIOにおける決済も、リブランドされた商品として通っているわけです。CIOにとってみれば、どこから、いくらで購入したかということが大切な要素ですから。

 例えば日立もネットアップのリセラーですが、ネットアップの製品を購入したということよりも、さまざまな検討した結果、日立から購入したということが重要視される。つまり、地位が上にあがればあがるほど、ネットアップの名前が通じない環境ができあがっていたともいえます。

 ですから、「ネットアップの営業本部長の岩上です」といっても、なかなか会ってもらえない。若いときには進んで“どさまわり”をしていたタイプですが、最初の30日間は、そのときのような感じでしたよ(笑)。

業種バーチカルへの組織変更で“お客さまを知る”体制に

――次の30日間はどんなことをしましたか。

「パートナーの後ろで見積もりを作るだけ、の営業を脱却したかった」と語る岩上社長

 ひとことでいえば、仮説を立てる30日間でした。社内を大きく変革したときに、どれぐらいのネガティブインパクトがあるのか、あるいはポジティブな反応があるのかということを、さまざまなパターンを作って検証しました。2人の社員にYESといってもらえるよりも、5人の社員にYESといってもらえる組織を作りたい。そして、ネットアップ自らが市場を理解できる組織を作りたいと考えました。

 もちろん、従来のパートナーモデルを壊すのではなく、パートナーから見ても、「これはいいね」といってもらえるものにしたいと考えていたのです。

 私の提案に対しては、社内からも反発もありましたが、「おかしいと思ったことは言ってほしい」、「なにが不安に感じるのかを言ってほしい」ということを社内に徹底し、議論しながらコンセンサスを図っていきました。

 この結果、60日を経過した2009年10月に、組織体制をパートナーバーチカルから、インダストリー(業種)バーチカルに変更したわけです。これはどこの会社でもやっていることのように見えますが、従来のネットアップの営業体制というのは、極論をすれば、「パートナーの後ろで見積もりを作る」というのが最大の役割であり、ステータスはパートナーから聞くしかなかった。SEも、パートナーの「動くマニュアル」に徹しているだけだったのです。

 もちろん、それで成長しているのならば変える必要はない。しかし、3年も低迷しているということは、なにか別の方法を模索しなくてはならないわけでした。

 ネットアップは積極的に直販をするわけではありませんが、独自のアーキテクチャを持ち、先進性や実装の優位性を持っている製品を、旬のタイミングで、旬の場所に対して、旬のメッセージを発信しなければならない。NASだけに閉じた案件に対して、言われたままに見積もりを行うのではなく、ビジネスプロセスの変革のなかで、ネットアップを使う必要性を説き、NASもSANもなく、いかに仮想化するかという議論をしましょうという提案ができなくてはいけない。これを実現するために徹底したのは、「とにかく、社員自らがお客さまと話せ」ということでした。

 ユーザーはなにでもうけているのか、次になんでもうけようとしているのか、それが次の投資につながるわけです。それを理解しなければ提案なんてできません。

 3年前は、ユーザーを理解する社員が少なかった。ストレージだけを売る「ストレージ“ばか”」ではなく、ユーザーを理解し、ビジネスを理解できる社員が欲しい。ストレージの機能の話をするのではなく、データ管理の意味から話ができる社員がいる。これがネットアップというベンダーの強みだ、という認識を広げたい。最後の30日はこうしたことを実行できる仕組み作りに取り組んだというわけです。

――その成果はどうなっていますか。

 最初の90日が終わってから、11四半期連続で2けた成長を達成しています。業績目標に対する達成率については、12四半期中、11勝1敗です。1敗は、98.9%の達成率。まるめて100%でもいいじゃないかという話もありますが、1敗は1敗ですからね。

お客さまとの、より踏み込んだ対話を心がける

――2012年10月の社長就任後の半年間はどんなことを重視してきましたか。

 前任のタイ・マッコーニーが打ちだしていた、市場に対して深く、広く、ネットアップが浸透し、新たな市場に対しても積極的に取り組んでいく姿勢を踏襲する一方で、日本人ならではの強みを生かして、より踏み込んだ対話を心がけています。

――日本人社長に変わって、変化はあるのでしょうか。

 英語での会話だと、どうしても“ハッピートーク”に終始しがちなものですが、さまざまな要望があがってくるようになりました。ダムが決壊したといわれるように、さまざまな要望が出ていますよ(笑)。

 一方で、米国本社から見れば、私は“外人”なわけですが、だからといってそれがマイナスにはなりません。日本は、米国、英国、ドイツとともに投資対象国に選定されています。その投資対象国のカントリーマネージャーが、3年間の実績を持って新しく変わり、これまでのモメンタムをさらに伸ばして行こうとしている。それを理解してもらい、その上で、本社に何をしてほしいかということを、私は、積極的にアピールしていくつもりです。

 ネットアップは、5月から新年度に入りますが、それにあわせて、日本法人で中期経営計画をスタートさせます。日本法人が中期経営計画に取り組むのは初めてのことです。この計画を達成するためにどうするのか、そのためにどんな支援が必要なのか。昨年末に渡米した際に、トム・ジョージャン以下、多くのエグゼクティブと1対1で対話する時間を取ってもらい、議論をしてきました。その結果、いま日本で、なにが必要なのかということを、米本社が強く認識してくれています。

――社長就任からわずか90日以内に、米本社に中期経営計画の骨子を持ち込んだことになりますね。

 間延びすると、決していいことはありませんから、これだけやるから、これだけ支援してくれということを、ひざを突き合わせて話しました。また米国の企業は、クリスマス休暇前にエグゼクティブが必ず出社していますから(笑)、そこを狙ったわけです。1週間で49人と会ってきましたよ。

今後3年で日本の売上高を2倍に、その鍵はサービス

――具体的にはどんな目標になりますか。

 中期経営計画では、今後3年間で日本における売上高を2倍にします。

 過去3年間も、日本法人は売上高を2倍にしてきました。ですから次の目標も2倍です。では、これをやる上で、なにが阻害要因になるか。実は、渡米する前に、それを導き出すために、Deep Diveセッションといった形で、社内の28人のファンクションリーダーと42時間にわたって話し合いを行いました。

 その結果、526個の阻害要因が出てきた。それらを分別し、だれがどの要因に対して責任を持って対処するのかといったことを明確にしたわけです。米国本社とのエグゼクティブとの話し合いでは、この成果を持参して話し合いました。

 これは、日本法人の28人のリーダーとともに、コミットした目標です。当然、本社側も真剣にならざるを得ない。このチャレンジに対して、本社とともに一蓮托生(いちれんたくしょう)で取り組む体制ができあがったといえます。

――売上高倍増のポイントは何になりますか。

 日本のストレージ市場は2000億円強だといわれていますが、この市場でシェアを2倍にするというわけではありません。

 サポートやプロフェッショナルサービスといったストレージ関連市場まで含めれば、約7000億円の市場規模があるわけです。日本法人は、これまでプロダクト重視で事業を進めてきましたが、サービス、サポートといったところにまで事業の幅を拡大することで、7000億円の市場に踏み出し、それによって売上高倍増を目指していきたいと考えています。

 実は、ユーザーから、「ネットアップが直接保守をできないのか」といったお話もいただいています。そうした要望に対しても、保守を行うパートナーとしっかりと手を組みながら、ネットアップのコミットメントと、パートナーのサービス/サポートスキルとを融合させ、ビジネスを拡大していきたいですね。

 最近話題となっているフラッシュメモリでも、フラッシュキャッシュという形で、ネットアップはすでに36PBもの導入実績があり、そうしたノウハウも蓄積している。また、サービスレベルごとにストレージを購入していた環境を崩すという考え方を提案し、それ実現するために、Data ONTAPというプラットフォームを持っていることが、ネットアップの最大のバリューとなっている。

 ワンストップアーキテクチャであることが、ユーザーにとっては、ITを近代化するには最適な手法であるわけで、それを実現するのがネットアップとなる。こうした体制と実績によって、「だからネットアップを担いでいるパートナー企業は信頼できるんだ」とユーザーから言われるような体制を構築していきたいですね。

――そうすると、プロフェッショナルサービス部隊は自前で持つことになりますか。

 プロフェッショナルサービスの知見を持った優秀な社員が多いですし、すでに、SE本部のなかにコンサルティング部隊を設置し、一部プロフェッショナルサービスを開始しています。

 しかし、これはパートナーと競合するのではなく、パートナーとコラボレーションしながらやっていくことになります。現在、プロフェッショナルサービスの売り上げ構成比は1~2%程度ですが、3年後には15%程度の構成比にまで高めていきたいと考えています。

 米本社ではすでに2けたの構成比にはなっていますからね。ただ、これによって、ハードウェアとソフトウェアのトップラインがあがっていくのであれば、構成比はそれほど重視しなくてもいいかなとも思っています。

――今後のパートナー戦略はどうなっていきますか。

 パートナーは、当社を拡張する形で、営業、SE、保守、サービスをしていただける強い仲間たちです。つまりパートナー戦略は、ネットアップのコア戦略に位置づけられるものとなります。

 5月から始まる新年度においては、パートナー各社に、リベートやマーケティングデペロップメントファンドを有効に活用してもらいますし、さらに、これをいかに手厚くするかが重要だと考えています。もっともっとやる気になってもらう仕掛けを用意しています。

 ソリューションのコア部分で協業し、お客さまのお客さままでを視野に入れ、さらにわれわれの共通基盤をどうあるべきか、といったところまで議論する1次パートナーとの深い連携が必要だといえます。

 なかには、ハードウェアを売って、それに対する保守でビジネスを維持するという古典的なモデルから脱することができないパートナーもいます。ここから脱却して、次のビジネスに踏み出してもらうための仕掛けもやっていきたい。人件費は当社が持つが、雇用契約はパートナーが直接やってもらうといった仕組みもあります。このような人材活用によって、ネットアップのビジネスを拡大してもらうという提案もやっていきたいですね。

 一方で、全国津々浦々をカバーするという点では、ディストリビュータを通じた2次店にお任せし、数を追うことも必要だと考えています。

 Beyond Tokyoという形で、特に、東京以西の営業拠点を強化し、名古屋に8人、大阪8人、九州3人という形で人員を配置し、地場の強いパートナーや2次店と組んで、手離れよく、そして健全なビジネスができるような仕組みを構築していく考えです。

 東京から離れれば離れるほど、ネットアップを知らないという人が多いですから、こうした市場に対しては、ディストリビュータ経由での販売比率が高まると考えています。

――M&Aによる売り上げ拡大も視野に入れていますか。

 ネットアップは、M&Aによって成長を遂げてきたわけではありません。ただ、日本法人として成長のためにM&Aが必要であるということであれば、話はちゃんと聞いてくれる体制があります。本社には6000億円のキャッシュもありますからね(笑)。

ハードウェアを売る“ストレージベンダー”から脱却したい

――ネットアップの日本における実績を見ると、いまはストレージベンダーという言葉が似合う企業です。岩上社長はネットアップをこれからどんな企業にしていきたいと考えていますか。

 ストレージという言葉は、1956年にIBMが使い始めてから、半世紀以上使われている言葉です。IT産業のなかでここまで長く使われている言葉は少ないですから、そろそろ死語にしたいですよね(笑)。

 ストレージというと、データの格納庫というハードウェアだけを提供しているベンダーのように聞こえます。コモディティ化しているストレージの部分だけではなにも差別化はできません。その中に入っているデータの管理や有効利用をどうするのかということが大切であり、それが求められている。

 「脱・ストレージ」というと言い過ぎですが、ネットアップの差異化ポイントは、明らかにソフトウェアですし、ソリューションやサービス/サポートといったものが重視されている。ディスクのシェアが目的ではなく、インテリジェンスのシェアが欲しい。そこにネットアップの強みを発揮したい。

 ユニファイドもそうでしたが、ネットアップから生まれる新たな言葉によって、5年~10年にわたって色あせない形で、ネットアップの姿を表現できると一番いいですね。

 もちろん、現在も、「アジャイル・データ・インフラ(Agile Data Infrastructure)」という言葉を使って、ネットアップの姿勢を表現していますが、これではなかなか伝わりにくいという反省があります。

 ネットアップが持つスキルの高さや、技術や製品へのこだわり、ユーザーフォーカス、あるいはパートナーフォーカスというところに企業文化があることを示すような言葉があるといいのですが。

 最適な言葉が見つかるまで、もうしばらくかかるかもしれませんね(笑)。

仮想化での実績とビッグデータ分野での強みを生かす

――あらためてネットアップの強みとはなにかをお伺いしたいのですが。

 ひとつは仮想化での強みです。金融機関をはじめとするミッションクリティカルの分野において、仮想化技術が実装レベルで使えるようになったのはここ数年ですが、これを長年にわたって熟成させてきたのがネットアップです。仮想化ソリューションの提案には大きな強みがあります。

 またビッグデータにおいても、業界で断トツのビッグデータ対応型のストレージベンダーというポジションを獲得しています。米国では800PBものストレージを導入しているユーザーがいますし、100PB以上のユーザーも5社以上ある。こうした実績は、他社以上に、ビッグデータ対応ができていることの証しだといえます。

 私は、日本のユーザーにとって、ビッグデータとはなにかということからあらためて考えていきたいと思っています。ビッグデータをどこに載せるのか、そこからどんなことを導き出せるのか、それによって、どんな成果をあげるのか。ビジネスの成功に向けて、お客さまのインフラを、近代化させていくことがわれわれの責務ですから、そうしたことを提案していかないと、いつまでたっても、日本のIT投資が運用、保守に集中することになり、投資の構成比が変わらない。

 ネットアップは、こうした新たな提案においても、ユーザーやパートナーに対するアドバイザーとしてのスキルや、活用できる世界中のリファレンスモデルを持っています。これもネットアップの強みのひとつといえます。

――製品そのものの強みはどこにありますか。

 それは、やはり、SnapshotやSnapMirrorといった機能に代表されるソフトウェアの部分です。しかし、これがなかなか伝わらなかった反省があります。

 競合他社と○×表を付けてもらうとわかりますが、機能面でネットアップが勝っているところがはるかに多い。ただ、これまでネットアップの営業は、そうしたことをしっかりと訴えてこなかった。Data ONTAPの強みをあらためて訴求していく必要があります。

 また、オールフラッシュストレージを含めたフラッシュストレージ製品のラインアップ強化や、NetApp EシリーズへのData ONTAP搭載など、ハイエンドからローエンドまでの品ぞろえも強化していきます。

 フラッシュストレージ製品では、2014~15年前半には、Data ONTAPへの全面対応も予定していますし、それに先駆けて、Snapshotなどの機能は搭載していきます。大切なのは、ユーザーがしっかりと実装して使えるかどうかという点であり、この点はわれわれが20年間にわたって、ストレージ管理という観点から提案をしつづけていることの強みだといえます。

2013年のネットアップは?

――2013年はネットアップにとってどんな1年となりますか。

 フラッシュストレージをはじめとして、さまざまな新製品を投入する1年になると考えています。シスコシステムズとのアライアンスによるデータセンター向けソリューションのFlexPodや、マイクロソフトのHyper-VやSystem Centerにおけるコラボレーションなども、これまでは姿だけであったものがいよいよ本格的に始動しており、協業してソリューションを届けることができる年になると考えています。

 VMwareやシトリックスとの連携も同様です。クラウドプロバイダーについても13社と契約していますが、これをベースとした動きにも、どんどん拍車をかけたい。クラウドプロバイダーと協力した提案によって、DRやBCPにおいても、安心したソリューションを提供できますし、所有ではなく、使用したいというユーザーに対してもソリューションを提供できます。

 そうしたなかで、クラウドプロバイダーに設備として当社製品を導入できますし、同時に、ユーザーに対しても、ネットアップの認知度を高めることにもつながるでしょう。

――一番重視する指標はなんですか。

 お客さま、パートナー、社員に対する満足度を示す3つの指標です。社員にとっては働きやすい職場であること。「働きがいのある企業(250人以下)」調査において、今回は5位でした。前年は2位でしたから、私が社長に就任して落ちしてまった。これはショックですね(笑)。絶対に引き上げますよ。

 また、お客さまから見れば顧客満足度。これも引き上げていきたい。そして、パートナーから見れば、パートナーの利益に対するわれわれの関与度を高め、「ネットアップを扱うと必ずもうかる」という仕組みを提案したい。こうしたことを徹底することで、その総和が、われわれの利益になると考えています。

――ところで、Cクラスの方々へのネットアップの認知度は、いまはどれぐらいにあがっていますか。

 実は、怖くて、まだ聞けていないんですよ(笑)。

(大河原 克行)