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富士通研、PC画面を携帯で撮影する新たなデータ転送技術
(2013/1/21 15:25)
富士通研究所は、パソコンの画面を携帯電話のカメラなどで撮影すると、画面に表示されたファイルを転送できる映像を介した通信技術を開発した。21日、都内で発表会が開催された。
富士通は、テレビと携帯電話における映像を介した通信技術を研究しており、通信情報を映像に重ね合わせることで、画面をカメラ撮影するだけで通信できる技術を開発してきた。今回の技術はこの技術を応用したもので、パソコンの画面を携帯電話やタブレット端末のカメラで撮影すると、パソコンの画面に表示されているファイルが転送できる。
仕組み
映像には、人の目では認識できないスピードで明滅するわずかな明かりが入っている。この明かりの数の増減を制御し、0を表す波と1を表す波を作り、映像の中にわずかな情報が重ね合わせられる。映像の中の明かりを増やせば、画面に明暗が出てしまうが、映像の一部を緩やかに気づきにくいという特性を利用して解決している。
なお、映像にはIPアドレスの一部が重ね合わされている。専用アプリを搭載した携帯端末で、映像から信号波を分離し、IPアドレスを抽出してパソコンを特定する。特定したパソコンとセッションを張った後、目当てのデータが転送される。
パソコン側には、専用のサーバーソフトがインストールする。IPアドレスを変換したパターンを画面上に重ね合わせるほか、パソコン画面に表示されているファイルをチェックして、表示ファイルを特定して自動転送する。パソコンのディスプレイのほか、スクリーンなどに映し出されたパソコンの画面なども読み取れる。
デモ環境において、映像に重ね合わせられた情報量は16bitで、読み取り速度は16bit/sとなっていた。約1秒でデータがセッションが確立することになる。携帯端末をかざして読み取る時間を長くすれば、理論上はさらに多くの情報を埋め込むことも可能だ。それぞれプラットフォームは、パソコン側がWindows 7、携帯端末側がAndroid 4.xで動作している。
2014年度の実用化目指す
たとえば会議中、スクリーンに映し出されたプレゼンテーションの資料を撮影するだけで資料が転送される。逆に、携帯端末で撮影した写真など、モバイル機器側からパソコンにデータ転送も可能となっている。
プレゼンテーションを行った富士通研究所のメディア処理システム研究所 イメージシステム研究部 主任研究員の田中竜太氏は、携帯端末の性能が向上したことで、これまでパソコンで作業していた内容をモバイル環境で処理する機会が増えていると話す。
しかしその一方で、パソコンと携帯端末の間のデータの転送には煩雑な面がある。田中氏は今回の技術について、従来よりも簡単で直感的なデータ転送方法だとアピールしている。ケーブル接続ほど面倒ではなく、Wi-Fi接のようにアクセスポイント(AP)を探す必要もない。
クラウドサービスを介してデータを共有することも簡単になった時代だが、セキュリティポリシーから業務利用を認めていない企業も少なくない。画像認識によってデータを特定して転送する技術もあるが、こちらはあらかじめ、パソコンと携帯端末の間でセッションが張られていなければ転送できない。
富士通研究所では、通信速度を改善するなど課題を克服した上で、2014年度にも実用化を目指すとしている。また今回の技術は、2月25日~28日にスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress 2013」で世界に紹介される予定だ。