日本IBMがシステム事業の戦略を説明、System zやPureSystemsで次世代のITインフラ構築を支援


代表取締役社長のマーティン・イェッター氏
スマーターコンピューティング

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は31日、「次世代ITインフラ」に関する記者会見を開催。代表取締役社長のマーティン・イェッター氏らが、同社のシステム事業について説明を行った。

 この会見の中でイェッター社長が指摘したのは、グローバルと日本では、CEOのIT(テクノロジー)に対する意識が異なるという点だ。IBMによるCEO調査の中での、自社にもっとも影響を与える外部要因を問うた設問(複数回答)に対し、グローバルではCEOの71%が「テクノロジー」を挙げ、全体の1位になったのに対し、日本では「市場の変化」が87%、「グローバル化」が70%となり、「テクノロジー」は56%で4位にすぎなかった。

 こうした結果についてイェッター社長は、「ワールドワイドでは、ITを使って他社と差別化しようとしているのに、日本企業は、そうした企業と同じグローバル市場で競争しているにもかかわらず、ITに力を入れていない。これでは、競争上不利になることもあるだろう」とコメントし、ITへの関心の低さがマイナスに働くこともあると指摘する。

 では、なぜITを積極的に取り入れないと不利になるのだろうか。それは、インターネット接続人口や端末が爆発的に増え、それと同時にデータ量もかつてないくらいに増大しているからだ。こうした、いわゆる“ビッグデータ”をきちんとビジネスに活用し、そこから正しい洞察を得ていかないと、時代の動向から取り残されてしまうかもしれない。また、ユーザーが何を考えているのかをきちんと読み取れなければ、この先、ビジネスを失ってしまうかもしれない、というわけだ。

 事実、IBMの調査によれば、「アナリティクスによって競争優位が構築されている」と回答した企業が、2010年の37%から2011年は58%と大幅に増加しているとのことで、こうしたアナリティクスの基盤として活用できるインフラは必要不可欠な時代になってきている。

 一方では、インフラの保守コストが増大しており、新規投資を圧迫し続けているという、IT業界における長年の課題もそのまま残ってしまっている。ハードウェアコストについては性能向上もあってほぼ横ばいだが、増え続ける仮想マシンの管理にはかなりの工数を割かねばならないほか、電力・冷却コストも大きく増加した。

 こうした課題を解決するために、日本IBMでは「スマーターコンピューティング」というビジョンを提供しており、「クラウド」「データ」「セキュリティ」「ワークロード最適化」という4つのアプローチでソリューションを提供していくとした。

 そのための具体的な製品が、メインフレーム「System z」やUNIXサーバー「Power Systems」、IBMの知見を盛り込んだ総合システム「PureSystems」だという。

 この日の記者会見では、特にSystem zについて時間を割いていたが、取締役執行役員 テクニカル・リーダー湿布担当の宇田茂雄氏は「System zのもともとの発想は、お客さまの大切な資産であるアプリケーションプログラムを守るということ。そのために、シングルイメージで稼働しながら、その後ろで機能を増やしていくというアプローチを採用しており、使用目的に沿った専用プロセッサを、車の“エンジン”に対する“ターボチャージャー”として提供してきた」と、沿革を説明。

 その上で、「2010年に提供開始したzEnterpriseでは、この“ターボ”が筐体の外へ出たが、ただ1つのメインフレームとして管理を行える点は変わっておらず、UNIXやWindowsも、System zの全体を適切に制御する能力のもとで利用できる。こうした点が評価されて、zEnterpriseはすでに150社で1100台のブレードが利用されており、(LinuxをSystem z上で動作させる)zLinuxの普及ペースよりもかなり速い」との現状を示し、IBMの考え方が広く顧客に受け入れられているという点をアピールしている。


システム製品のラインアップSystem zのテクノロジー進化と顧客にとっての価値

 なおこの日には、System zの新たな導入事例として、総合小売業のチェーンストアを展開する、イズミヤ株式会社の事例が発表された。

 イズミヤでは、ミッドレンジ向けメインフレーム「IBM zEnterprise 114」を用いて、3世代前のメインフレーム「IBM eServer zSeries 890」で稼働していた基幹システムを刷新。10月17日より稼働を開始した。またこの移行にあたっては、IBMの技術専任チームが、6300本のイズミヤが持つアプリケーションの移行難易度分析などを実施し、イズミヤの作業を支援したという。

 また、UNIXやWindowsも1つのシステムに統合可能なzEnterpriseのメリットを生かし、商品情報を蓄積している15台のUNIXサーバーも2013年2月までに統合する予定。さらには、100台以上の分散サーバーについても将来的な統合を計画しており、メインフレームとの一元管理を行うことで、ITシステムの運用管理コストの20%削減を目指すとしている。


イズミヤの事例
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