グリーン・グリッドの省エネアワード、最優秀賞はNTT Comらの共同プロジェクトに

人工知能エンジンを有する空調自動制御など評価


グリーン・グリッド 日本技術委員会代表の田口栄治氏

 グリーン・グリッドは17日、日本国内の既存データセンターを対象にエネルギー効率の向上に取り組む団体・企業を評価・表彰する「グリーン・グリッド データセンター・アワード 2012」の受賞企業を発表した。

 最優秀賞は、「革新的な人工知能エンジンを有する空調自動制御システム(DCIM)を活用した継続的改善活動と国内DCのエネルギー効率底上げへの貢献」プロジェクトに取り組んだエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社/株式会社NTTファシリティーズ(共同プロジェクト)が受賞した。また、優秀賞にはSCSK株式会社、特別賞には株式会社インターネットイニシアティブが選ばれた。

 「グリーン・グリッド データセンター・アワード」は、日本国内でデータセンターを運用する団体・企業間で、データセンターの資源効率の計測と改善を推進することを目的に2010年に創設。3回目の実施となる今回は、“今、私たちが誇れること”をテーマに、データセンターのエネルギー効率の向上に取り組む団体・企業の優れた改善活動を広く募集した。

 アワードでは、グリーン・グリッドが推奨するエネルギー効率化の指標であるPUE(電力使用効率)などのエネルギー効率の絶対値ではなく、これらの指標を用いた上でのエネルギー効率化に対する取り組み、指標改善の継続性など、改善活動を中心に評価した。グリーン・グリッド 日本マーケティング委員会代表の田口栄治氏は、「アワードの評価基準は、『定量化』、『目標設定と計画性』、『継続性』、『社会貢献性』、『独創性』の5項目。新しくつくったデータセンターというよりも、以前から使っているものをより改善していくために、PDCAのサイクルをどれだけ回しているかを重視している」と説明した。

 選考は、グリーン・グリッドのほか、グリーン・グリッドの協力団体であるASP-SaaS-クラウド コンソーシアム、グリーンIT推進協議会、日本データセンター協会、メディア協力のComputerworld、データセンター完全ガイド、ITmediaエンタープライズ、ITpro、DatacenterDynamics社によって構成されるアワード実行委員会が行った。

インターネットイニシアティブ サービスオペレーション本部 データセンターサービス部 部長の久保力氏

 特別賞は、外気冷却方式コンテナ型データセンター「松江データセンターパーク」の運用を手掛けるインターネットイニシアティブが受賞した。同社では、日本初の商用コンテナ型データセンターを稼働させるにあたり、ASHRAE2008基準による冷気温度の高温設定に基づく外気冷却という、先進的な手法を利用しデータセンターの低消費電力化を実現した。

 また、コンテナ単位、ラック単位、サーバー単位での使用電力の監視に加え、建物と連携したデータセンターパーク全体での電力監視を行うなど、従来のデータセンターよりもきめ細やかな電力管理に取り組んだ点も評価された。

 インターネットイニシアティブ サービスオペレーション本部 データセンターサービス部 部長の久保力氏は、「『松江データセンターパーク』は、島根県松江市で2011年4月から稼働を開始し、現在15コンテナが稼働している。空調は、外気運転、混合運転、循環運転の3つのモードを組み合わせながら、年間運用しており、春・秋は外気運転、夏場は循環運転、冬場は混合運転を利用する。これにより、稼働後の実績として、年間平均でpPUE1.17を達成した。今後は、夏場も消費電力の高い循環運転を使わず、外気運転に切り替えていくことを検討していく」と述べた。

松江データセンターパークの概要年間平均でpPUE1.17を達成
SCSK ITマネジメント事業部門 ITマネジメント第一事業本部長の向井健治氏

 優秀賞は、「温熱環境の改善による省エネルギー対策の効果検証と実践」というプロジェクトを進めたSCSKが受賞した。SCSKでは、このプロジェクトにより、サーバー電力量、空調電力量、室内温度、外気温など、サーバー室および室外機置場の温熱環境の監視を徹底的に行い、データセンターのエネルギー使用を効率化した。

 緻密な監視活動から得られた測定結果を分析し、効果を把握した上で改善対策を採用、その後は継続的に検証するという有機的なPDCAサイクルを確立し、エネルギー効率の改善で顕著な成果を達成している。PDCAサイクルを究めたベストプラクティスは、省エネの良策であることを再確認できた点が評価された。

データセンター「netXDC」の歩み

 SCSK ITマネジメント事業部門 ITマネジメント第一事業本部長の向井健治氏は、「当社の運営するデータセンター『netXDC』は2001年に誕生し、現在は、2011年10月のSCSとCSKとの経営統合を経て、全国10か所まで拡充している。今回のプロジェクトは、メインフレームのコンピュータセンターをIDCに転換した東京第1センターと東京第2センターで実践したもの。BMSやEMSによるPUEの見える化に加えて、空調機の効率化、サーバールームにおけるラックキャッピングの実施、室外機における温熱化対策という3つの施策を行った。これによって、期待された温度上昇防止効果を確認できたほか、PUE改善の目標値を達成できた」と説明した。

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ サービス基盤部 基盤設備部門 第一エンジニアリング担当 担当部長の柳田幸広氏

 最優秀賞は、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズとNTTファシリティーズによる共同プロジェクトが受賞した。両社が推進したプロジェクトでは、人工知能エンジンを有する空調自動制御システム(DCIM)を活用した独創的、かつ先進的な手法でデータセンターの空調システムのエネルギー効率改善、サーバー室の温熱環境品質改善を両立させる施策を継続的に実施した。

 さらに、DCIMを通じて得られた実証データを基に運用改善を見える化し、運用改善による具体的な投資回収目標の設定とその達成に取り組むなど、多くの企業が悩む費用対効果の課題についても対策が講じられている点も評価され、最優秀賞の受賞となった。

 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ サービス基盤部 基盤設備部門 第一エンジニアリング担当 担当部長の柳田幸広氏は、「データセンターの消費電力削減に向けた効果的な施策を考えた結果、空調設備の効率化に着目した。そこで、NTTファシリティーズと協力し、革新的なDCIMを導入するとともに、定量化指標を活用した継続的な改善活動を行うことで、データセンターの電力効率化を実現した」という。プロジェクトの成果としては、「対策前と対策後で、平均pPUEを5.9%改善し、目標を下回る1.37を達成した。また、温度分の均一化を実現したほか、サーバーラックの上下温度差も解消した。さらに、コールドアイル平均温度が2℃上昇し、過冷却も解消できた」としている。

革新的な空調自動制御システムの導入と継続的な改善活動プロジェクトの成果

 最後に、グリーン・グリッド 日本技術委員会代表の田口栄治氏が、今回のアワードを総評し、「3回目となる今年のアワードでは、エネルギー改善活動のインテリジェント化が進んだことを強く感じた。機器やツールが進歩したことはもちろんだが、これらをうまく取り入れつつ、効率のよいデータセンターをよりインテリジェントに改善していく取り組みが受賞のポイントになった。グリーン・グリッドでは、今後も様々なデータセンターの電力効率、資源効率を改善し、よりよいITサービス基盤を幅広い企業と共有していく。そのためも、アワードでの表彰だけでなく、こうした活動を積極的に発信していくことで、業界全体の底上げに貢献していきたい」と語った。


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