レノボ、ThinkPad X1発表会~薄型・軽量・堅牢を実現した技術を解説


 レノボ・ジャパン株式会社は8月29日、ThinkPad X1 Carbon発表会を開催。ThinkPad X1 Carbonのデザインや改善点などの詳細な説明を行った。

 ThinkPad X1 Carbonは、企業向けが8月29日、直販は8月30日に発売される。価格は、個人向けの下位モデル「34434LJ」は、Core i5-3317U(1.70GHz)、メモリ4GB、SSD 128GB、Intel QS77 Expressチップセット、1600×900ドット表示対応14型ワイドIPS液晶(アンチグレア)、Windows 7 Home Premium(SP1、64bit)で直販価格は12万1905円。上位モデル「34434KJ」は、CPUをCore i7-3667U vPro(2GHz)、SSD 256GBで直販価格16万1805円。


X1 Carbonの様々な改善点

 レノボ・ジャパン株式会社 執行役員常務 横田総一氏は、ThinkPad X1 Carbonの特徴として、ThinkPad史上最薄18.8mm(最薄部8.0mm)で14インチUltrabookとしては世界最軽量であること、最軽量モデルでも妥協のない堅牢性、操作性を実現した点を挙げた。

レノボ・ジャパン株式会社 執行役員常務 横田総一氏

 レノボでは、最薄・軽量を実現するため、主要サブシステムの新規設計を行った。キーボードは従来モデルのThinkPad X1と比較して質量145gから115gへ大幅に軽量化。また厚み5.6mmから4.8mmにした。空冷モジュールも1.7mm薄く、21g軽くした。SSDはX1と比べて約90%小さくと大幅な小型化を行い、重量も約60g軽くした。無線LANカードについても、約25%小さくなっている。

従来機ThinkPad X1とThinkPad X1 Carbonの比較主要サブシステムの新設計により、“薄く軽く”を実現空冷モジュールを小型化
無線LANカード、SSDも小型化。SSDは従来の約1割の小ささ薄くても堅牢性はそのまま――X1 Carbonで採用されたカーボン素材はThinkPad T420の約2.3倍の強度を持つマグネシウム合金のベースカバーとキーボードベゼルによるロールケージでマザーボードをサンドイッチ構造で保護

 薄く軽くしても堅牢性は維持するためThinkPad T420で使用されているカーボン素材と比較して約2.3倍の強度を持つ最高級カーボン素材を採用した。機構設計を担当した大谷哲也氏は、T420のカーボン素材はアルミニウムやマグネシウムよりも強度が劣っていたが、今回のX1 Carbonの素材は人工衛星やアユ釣竿などに用いられる最高級レベルの素材で、強度は金属素材を上回ると述べた。X1 Carbonで使われるカーボン素材は積層構造を採用し、カーボン薄板の間に発泡樹脂層を挟み込むことで軽量化している。

ThinkPad X1とThinkPad X1 Carbonの比較X1 Carbonで採用されたカーボン素材のグレードは人工衛星で使われるものと同等クラス積層構造により軽量化

 また、ThinkPad X1 Carbonでは薄型化しても操作性を犠牲にすることのないようキーボードや静音性の面でも改良を行った。キーボードのキーストロークはX1の約2mmから約1.8mmと0.2mm浅くなったが、大谷氏によれば「キーストロークは限りなく1.9mmに近い1.8mm」で、製品のばらつきも考慮に入れて1.8mmと発表しているが、1.9mmに近いという。実際、発表会場に並べられたX1 Carbonを触ってみたが、クリック感は十分にあり、ボディの薄さからは意外に感じられるほど“ThinkPadの名に恥じないマトモなキーボード”という印象だった。

 キーボードではX1 Carbonに限らず今年発表の製品でキーボードを改善。メンブレンシート下のアルミ製ベースプレートに「ソフトランディング」という仕組みを導入。キーの角が当たる部分にショックアブゾーバーを置くことで、キーの端押しをしても底突き感がなく、長時間の使用でも疲れを軽減した。

従来機との比較回転方向のガタつきを軽減キーボードのベース部分にショックアブゾーバーを仕込むことで長時間使用の際の疲れを軽減

 また、従来からThinkPadでは、キーボード下の周囲に雨樋のようなドレインを設けて排出するバスタブ部分を設けることで、キーの上から水をこぼしてもバスタブ部分に水を逃がし、基盤部分にダメージを与えないよう設計されているが、ここにゴミ性のパッキンを入れることでタッパーウェアのフタのように密閉性を高め、基盤部分に水が侵入しないよう防滴性能を向上させた。

 ファンによる騒音も削減。ファン内に乱流が発生することにより騒音が発生するが、ファン内部の乱流を削減する整流板を開発したことで、人間が深いに感じる騒音帯域の1~4kHz帯の騒音を低減させた。また、静電気を放電することでほこりの付着を防ぐほこり除去システムを新開発。冷却装置へのほこりの堆積を防ぐことで、ほこり付着による筐体内外の温度上昇からくる性能低下が発生しないようにした。
 
 このほか、マルチジェスチャーに対応したガラス製のクリックパッドを採用。ガラス製になったことでよりなめらかな指触りでよりストレスのない操作が行えるという。

キーボードのバスタブ部分にパッキン構造を追加、防滴性能を高めたファン内部の乱流を削減する整流板を開発、静音性を高めた静電気を放電することでほこり付着を防ぐ機構を採用


変化は「改善のための進化」でなければならない

 Design & User Experience部長 高橋知之氏は、ThinkPadのコンセプトとThinkPad X1 Carbonのデザインについて解説。ThinkPadは、シンプルな中に最新の高機能技術を詰め込んだ「四角い幕の内弁当」というアイディアが原点となっており、Thinkpad製品登場から20周年を迎える現在もこのコンセプトは堅持していると述べた。

 また、他の追随を許さないタイピングの感触に代表される高い信頼性と人間工学的に優れた使い心地には一貫してこだわっていると強調。20年間の間にはデザイン面においてもさまざまな変化があったが、ThinkPadのデザイン変更は、新しくしようという“変わるための変化”ではなく、使いやすくしようという“改善のための進化”でなければならないとした。

 ThinkPad X1 Carbonのデザインの特徴としては、薄い製品をより強調するデザインを採用。四角い印象の強いThinkPadシリーズだが、従来も筐体のへりを削るなどで曲面デザインとなっている部分はあったが、X1 Carbonでは今まで以上に多くの部分に曲面を採用し、へりの部分を薄くすることで薄いボディを強調した。

 また、ThinkPadでは初めてのドロップダウンタイプヒンジを採用。ドロップダウンヒンジでは130度程度までしか開かないものが多いが、180度に開く新しいヒンジ機構を採用した。

デザインアイディアの原点は高機能をコンパクトに詰め込んだ幕の内弁当薄さを強調するためにフチを削るなどで多くの曲面を採用ThinkPad初のドロップダウンヒンジを採用、ドロップダウンヒンジながら180度開く


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