オラクル、中堅企業向けに「Oracle Database Appliance」の導入をパートナーとともに支援


Oracle Database Applianceの特徴
必要なCPU能力に合わせOracle Database Enterprise Editionライセンスを拡張購入可能

 日本オラクルは4月24日、同社のデータベースアプライアンス製品「Oracle Database Appliance」の中堅企業に対する導入/展開をパートナー3社と推進していくことを発表した。中堅企業向けにコストや時間をかけずに導入できる障害対策ソリューションとして同製品を提供していく。大企業での導入実績が多い「Oracle Database Enterprise Edition 11g」を、オラクルのエンジニアド・システムであるアプライアンスを活用して中堅企業でも普及させることも狙いのひとつだ。

 日本オラクル 執行役員 システム事業統括 野々上仁氏は「3.11以降、中堅企業でも事業継続や防災対策に関する意識は非常に高くなっている。しかしサイズの小さい企業がバックアップサイト構築に多額の投資をするのはむずかしい。ハードとソフトがインテグレートしたOracle Database Applianceであれば、中堅企業がコストや人材、時間を割くことなく、事業継続性を高める環境を構築できる。かなりのコストメリットを提示できる製品」と自信を見せる。

 加えて野々上氏は、「中堅企業のお客様のほんんどが(Oracle Databaseの)Standard Editionを利用している。本ソリューションをきっかけに、可用性/耐障害性にすぐれたEnterpeise Editionを“お手軽”に活用していただきたい」と語る。「中堅企業だからこそ、IT管理ではなくイノベーションにフォーカスしてほしい。Oracle Databse Applianceはそれを支援するための製品」とした。

 Oracle Database Applianceが中堅企業に向いている理由として、日本オラクル 製品戦略統括本部 戦略製品推進本部 ゼネラルビジネス推進部 ディレクター 門田寛氏はスモールスタートが可能な「2コア/1ノード=1プロセッサのライセンス料金」から開始できる点を挙げる。データ量やサイトの規模、プロジェクトの進ちょくに応じて徐々に拡張が可能で(Pay-As-You-Growライセンス)、最大24プロセッサまでCPUを追加できる。また、冗長構成に必要なハードとソフトが最初から内部で結線された状態で提供されるので、箱を開けてから数時間で構築が可能だ。

野々上仁氏門田寛氏

搭載するデータベースの選択肢としては、

・Oracle Database Enterprise Edition 11g
・Oracle Database Enterprise Edition 11gおよびOracle Real Application Clusters
・Oracle Database Enterprise Edition 11gおよびOracle Real Application Clusters One Node

 があり、その他、Enterpise Editionの各種オプションも搭載可能。Oracle RACに関しては、2ノードを常時Active-Activeにできる構成のほか、片方をスタンバイ状態にしておくActive-Passive構成(One Node)を選択できる。「Active-Activeであればリソースに遊休資産を作らなくてすむ。One Nodeはスイッチオーバーに若干時間がかかるが、コストメリットが大きいので、スモールスタートに適している」(門田氏)。

 価格は「約3000万円から提供可能」(門田氏)とのこと。また、オラクルは東京・用賀にある同社の検証センター内にOracle Database Applianceを活用した「災害・障害対策デモンストレーション・センター」を開設、ユーザ企業やパートナーとの共同検証やデモを実施するほか、大阪の西日本支社でも検証環境を提供する。


Oracle MAAのコンセプトを中堅企業にも

Oracle MAAの概要

 Oracle Database Applianceは、大企業における導入事例が多い同社の高可用性アーキテクチャ「Oracle Maximum Availability Architecture(Oracle MAA)」のエッセンスを中堅企業にも、というオラクルの意図が表れている製品でもある。

 日本でも楽天証券などミッションクリティカルなサイト構築事例で引き合いに出されることが多いOracle MAAだが、名前の通り、システムの可用性や耐障害性を最大化し、「99.9999%の稼働率」を実現するフレームワークだ。オラクルの製品や技術がふんだんに投入されており、楽天証券のようにOracle Exadataをベースにして高可用性と高パフォーマンスを両立させているサイトも存在する。

 しかし中堅企業にとってOracle MAAはやや「贅沢すぎるフレームワーク」(門田氏)であり、導入には障壁が高すぎるのも事実だ。Oracle MAAのコンセプトはそのままに、スモールスタートが可能で、徐々に機能を拡張できる障害対策ソリューションとして生み出されたのが、Oracle Database Applianceとなる。

 拡張できるのはCPUコア数だけではなく、ソフトウェアも同様だ。Oracle MAAで採用されている「Oracle Active Data Guard」や「Oracle Enterprise Manager」などを組み合わせて利用することでより効果の高いデータ保護や障害対策を実現できる。また、Oracle Database Standard Editionのユーザであれば、Enterprise Editionに移行する際、Standard Editionのライセンスを充当することもできる。

 事業継続のための最初の一歩は小さくとも、将来の成長が期待できる製品、それがOracle Database Applianceの位置づけとなる。


パートナーからのエンドースメント

 今回のオラクルの発表に対し、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSK、アシストのパートナー3社が協力して推進していくことを表明している。以下、各社のコメントを紹介する。

伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 室長補佐 兼 ミドルウェア技術部 部長 中川裕路氏

中川裕路氏

CTCでは以前からオラクルのエンジニアドシステム導入サービスを展開してきたが、とくに昨今は「Oracle Data Guard」を活用したディザスタリカバリサイト構築の案件が増えており、中堅企業にもデータベースの事業継続を求めるニーズは高まっている。目標復旧時間を短くでき、ネットワーク負荷の軽いエンジニアドシステムの需要は高く、Oracle Database Applianceはそれに応える製品。当社にはエンジニアドシステムのスキルに長けたエキスパートが数多くいるので、オラクルとともに同製品の導入を推進していきたい。

SCSK ITマネジメント事業部門 ITマネジメント第一事業本部 基盤インテグレーション第2部 部長代理 長屋誠一郎氏

長屋誠一郎氏

災害や障害の対策を迅速に行うにはハードとソフトの両方が同時に機能することが必要。そして不測の事態には高い運用スキルをもったSEの存在が欠かせない。BCPの重要性は理解しているが、投資はむずかしいという中堅企業にとって、2コアから利用できるOracle Database ApplianceはBCP対策やディザスタリカバリサイトの最初の構築に最適な製品。当社では以前からSE常駐型のデータセンターを提供してきたが、Oracle Database Applianceの登場により、さらに短期間で低コストのBCP/DRサイトを構築しやすくなると期待している。

アシスト 情報基盤事業部 データベース製品統括部 ビジネス推進部 部長 岸和田隆氏

岸和田隆氏

災害対策ソリューションへのお客様の関心は高く、当社としてもさらにサポート体制を強化していく。今年2月、Oracle Database、Oracle RAC、Oracle Data Guardを基盤とした当社独自の災害対策ソリューション「DODAI」をリリースしたが、今後はOracle Database Applianceと組み合わせた、よりプロアクティブで多様なな災害対策ソリューションメニューを中堅企業にも展開していきたい。

関連情報
(五味 明子)
2012/4/25 06:00