日本HP、4.4GHzの超高速Xeonを搭載した「DL380 G7」

HPC分野の金融向けソリューションを強化


DL380 G7 Xeon X5698搭載モデル

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は8月30日、ハイパフォーマンス・コンピューティング(以下、HPC)分野における金融業向けソリューションを強化すると発表した。具体的な施策として、金融業の高速演算ニーズに対応するため、ラックマウント型サーバー「HP ProLiant DL380 Generation 7」(以下、DL380 G7)に、超高速インテル Xeon X5698プロセッサ(4.4GHz)を搭載した新モデルを8月30日より出荷開始した。併せて、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)との協業体制を強化し、金融業におけるHPCビジネスの市場開拓を目指す。

 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品本部 本部長の橘一徳氏は、HPC分野の製品戦略について、「当社では、HPCの用途に特化した高性能マシンの開発を進める一方で、演算性能と環境性能を両立した高度な省電力化の実現、および検証済みシステムのワンストップ提供によって、最新のテクノロジーをより身近に、使いやすいHPC製品を目指している」と説明。「ターゲットの業種としては、製造業、学術/R&D、金融業の各業界にフォーカスしたソリューションを提供している。昨年は、特に製造業と学術/R&D向けのソリューションを積極展開し、国内HPC市場でトップシェアを獲得することができた。そして今回、金融業向けのソリューションを拡充し、超高速CPUを搭載した新モデルを投入する。新モデルは、HPC分野における第3の柱になるものと期待している」(橘氏)と、金融業向けソリューション強化によってHPC分野でのさらなるシェア拡大に意欲を見せた。

エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品本部 本部長の橘一徳氏各業界にフォーカスしたHPCビジネスを展開
エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品本部 サービスプロバイダー&HPCビジネス市場開発の中井大士氏

 今回の新モデルは、金融業の中でも、マイクロ秒を争う証券取引システムでのLow Latency(低遅延)ソリューションを強化するためのHPCシステムとなる。エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品本部 サービスプロバイダー&HPCビジネス市場開発の中井大士氏は、「金融業では現在、さらなる高速演算のニーズが高まっている。特に、東京証券取引所の新取引システムが稼働開始して以来、これに追随する低遅延で高速なシステム導入の要求がますます増大してきている。こうしたニーズに対応し、x86アーキテクチャでは今までにあり得なかった、4GHzを超える超高クロックCPUをラックマウント型サーバー『DL380 G7』に搭載したHPCシステムを新たにリリースする」と、新モデルを投入する市場背景について説明した。

 新モデルのベースとなる「DL380 G7」は、HP独自の省電力機能や高効率パワーサプライ、リモート管理ツールの最新版「HP Integrated Lights-Out 3(iLO 3)」による高い運用性と管理性、さらには十分な拡張性を備える2Uラックマウント型サーバー。新モデルでは、4.4GHzという超高クロックを実現したインテル Xeon X5698プロセッサを搭載するため、電力供給、排熱に対する設計、試験をクリアした「DL380 G7」の専用モデルを用意。インテル Xeon X5698プロセッサを2基まで搭載することが可能で、従来モデルに比べて大幅な演算能力の向上を図っている。価格は、461万7900円(税別)から。

 また、日本HPでは、新モデルの発売に合わせて、金融業におけるCTCとの協業体制を強化する。「当社とCTCは、2009年8月に共同で金融HPCラボを開設して以来、HPC分野での金融業向けソリューションにおいて協業を進めてきた。今回、この協業を強化し、超高クロックCPUを搭載した新モデルを中核に、システム全体での高速化、低遅延の実現を支援していく」(中井氏)という。

インテル Xeon X5698プロセッサ(4.4GHz)搭載「DL380 G7」CTCとの協業によるシステム全体の高速化への取り組み
CTC 執行役員 金融システム事業グループの鈴木誠治氏

 発表会に同席したCTC 執行役員 金融システム事業グループの鈴木誠治氏は、「コンピュータが自動的に売買発注などを行う『アルゴリズム取引』は、世界各国の証券取引所で急速に利用が拡大している。その中でも特に需要が高まっているのが、高頻度で取引を行う『HFT(High Frequency Trading)』だ。日本でも東京証券取引所の新取引システム『arrowhead』の稼働に伴い、外資系大手や日系大手証券会社を中心に導入が進んでいる。HFTでは、取引回数が爆発的に多くなり、瞬時に売買判断を自動で行う必要があるため、さらなる高速、低遅延処理を実現するHPCシステムが求められている」と、証券取引所を中心にHPCシステムの重要性がさらに高まっていることを強調。

 「今後、各証券会社はHFTに対応するため、従来までの取引システムを見直し、高速かつ低遅延のシステムへのリプレースを進めていくはず。今回、日本HPが発表した超高クロックの新HPCシステムは、こうしたニーズに応える中核ソリューションになるものと期待している。これまで日本HPとは、金融リスクマネージメントにおけるグリッドコンピューティング領域での協業を行ってきたが、これを機に、低遅延ソリューションが求められるHFT領域にも協業を拡大し、さらにビジネスを加速させていく」との考えを示した。


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