日本マイクロソフトがデータベース改革推進アライアンスへ参加した“本当の理由”


サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブマネージャーの北川剛氏
市場におけるSQL Serverの評価

 日本マイクロソフト株式会社は4月26日、企業のより効率的なデータ活用を目指して発足した「データベース改革推進アライアンス」への参加を表明した。SQL Serverを擁する日本マイクロソフトが、なぜこのアライアンスに参加したのか。サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブマネージャーの斎藤泰行、北川剛の両氏に、その背景を聞いた。

 データベース改革推進アライアンスは、ベンダーロックインされがちなデータベースの分野において、柔軟な製品移行を実現する(ロックリリース)ことを目的に、日本HPと、5社のアライアンスパートナーが立ち上げたものだ。

 この“ベンダー”とは、金額ベースで高いシェアを持つ日本オラクルであることは、想像に難くない。Oracle Databaseのシステムが多く稼働しているUNIXから、WindowsとSQL Serverの環境へ移行させたい。日本マイクロソフトが「データベース改革推進アライアンス」へ参加したのは、こうした思いからなのだという。

 しかしデータベースのユーザーとして気になるのは、実際にWindowsとSQL Serverは、企業システムのデータベースプラットフォームとして適しているのかどうか、といった点だ。こうした疑問に対して北川氏は、IDC Japanのデータを引用して、「WindowsはRDBのプラットフォームとしてはナンバーワンであり、5年後もそれは継続する」との事実を示す。またSQL Serverについても、Windows版SAP ERPにおける新規導入シェアとしては1位を継続しているほか、RDBの出荷本数ベースのシェア1位を獲得するなど、着実に実績を積み上げてきたのだという。


SQL Serverへの移行支援策
サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブマネージャーの斎藤泰行氏
アセスメントサービス実施顧客の声

 こうした実績を背景に、マイクソフトではSQL Serverの移行を促進するため、多くの施策を行っている。例えば、Oracle Databaseユーザーに対し、実際に移行したいシステムに関するヒアリングをして、移行の障害になるような特殊機能や設定があるのかどうかをひもとき、本当に移行できるのかどうか、その難易度を算定するための無償アセスメントサービスを提供している。

 さらに調達とサポートの面では、EAPプログラムにより、最大40%のライセンスディスカウント、プレミアサポートサービスの無償提供を行っており、この面でも導入のハードルを引き下げている。

 加えて、データベースのエンジニアがOracle Databaseしかわからない、といったケースも多いことから、「Oracle Databaseの言葉でSQL Serverを説明する取り組みをもう3年やってきた。技術的な障壁はない、ということを証明できている」(斎藤氏)とし、着実に成果が上がっていることを強調する。

 しかも、「当社がSQL Serverがいいですよ、と説明しても説得力がない」(北川氏)ため、インサイトテクノロジーやシステム・テクノロジー・アイといった、Oracle Databaseにも習熟し、中立的な立場であるベンダーが、コンサルティングやトレーニングを実際に担当しているのだ。

 そして、日本マイクロソフトがこのような取り組みを進めた結果、着実に移行の実績が上がっているとのことで、斎藤氏は、「アセスメントサービスにおいて、1年半で40社の実績がある」と成果をアピール。「移行コストが膨大なのではないか、技術的に難しいのではないか、という不安を解消していただいているので、このアセスメントを利用した企業は、すべてSQL Serverへ移行している」と、取り組みの進展を強調していた。

 なお、日本HPが開催した記者発表会では、ベンダーロックインを避けるということから、標準規格であるANSI SQLをなるべく使うということを前面に出していたが、「標準SQLは確かにすべてのデータベースでも動くが、固有のパフォーマンス向上の機能などを使えないので、どのデータベースに対しても効率的ではない」(北川氏)のだという。

 そのため、北川氏は「どこが標準準拠で、どこがベンダー独自の方言なのかを意識して、お客さまに使っていただくことが大事だ。Javaアプリの中で既述するSQL文はできる限り標準でやって、どうしても反するところにコメントを付けているお客さまもいらっしゃる。こうしたことによって可搬性が高いSQL文を作れる」と話し、Oracle DatabaseやSQL Serverの方言を説明した文書を提供しているとした。

 「一部報道では、Oracle Databaseからの移行はとても困難であると報じられていたが、実際は、ツールなど移行のための用意は十分にされている。確かに、SQL Server 2005まででは、Javaへの対応が遅れていたものの、今では対応もきちんとできており、必ずしも.NETベースにする必要はない。先日の発表会では、OracleのItanium向け開発終了の件が前面に出てしまったため、『マイクロソフトもItaniumのサポートはやめるじゃないか』といった雑音が入り、当社の伝えたかった『ProLiantのようなx86/x64サーバーでハードウェアのコストを下げ、WindowsとSQL Serverを使うことで、データベースのロックインから逃れられますよ』というメッセージがぶれてしまった。このメッセージを浸透させていきたい」(北川氏)。

ANSI標準のSQLへの移行を推進するわけではないというコスト効果への高いx86/x64サーバーへの移行を推奨
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