SAPジャパン、製造現場の電力情報を可視化し中長期的な節電対策を支援


 SAPジャパン株式会社は4月27日、エネルギー管理ソリューション「SAP Manufacturing Integration and Intelligence」(以下、SAP MII)に関するプレス向け説明会を開催し、同ソリューションの特徴や機能の説明、および海外での導入事例を紹介した。

バイスプレジデント ソリューション統括本部 本部長の脇阪順雄氏エネルギー需要の増加の世界的なトレンドは変わらない

 今回の説明会開催にあたり、エネルギー管理ソリューションを取り巻く市場環境についてバイスプレジデント ソリューション統括本部 本部長の脇阪順雄氏は、「環境問題への対応として、節電対策は企業にとって大きな課題とされていたが、従来はそれほど優先度の高いものではなかった。しかし、東日本大震災の発生を受け、現在では、大規模停電の回避を目的に、節電対策が企業における最優先課題になってきている」と、震災を境に市場環境は大きく変化したという。

 一方で、こうした節電対策への動きは、「夏場の電力需要増大に向けた短期的な対応策であり、コスト増や環境負荷増については考慮されていない」とも指摘。「エネルギー需要の増加は世界的なトレンドであり、短期的な節電対策だけですむ問題ではない。特に、グローバル競争の視点では、コストや環境負荷の最小化が求められ続けることは確実。中長期的な節電対策に向けては、どの部分の電力をどれだけ削減すれば効果的なのか、まずは正しい現状認識から始める必要がある」との考えを示す。

 そして、中長期的な節電対策のために、同社のエネルギー管理ソリューション「SAP MII」が提供する価値として、「リアルタイムでの電力消費モニタリングと警告発信」と「正しい計画策定のための判断材料の提供」の2点を強調した。

ソリューション営業統括本部 BA&T事業開発部 マネージャーの中田淳氏「SAP MII」の製品概要

 「SAP MII」の特徴や機能については、ソリューション営業統括本部 BA&T事業開発部 マネージャーの中田淳氏が説明を行った。「SAP MII」は、製造現場のさまざまな装置・機器からエネルギー消費に関するデータをリアルタイムで収集し、生産情報の可視化を実現するソリューション。「主な機能として、『データサービス』、『可視化サービス』、『ビジネスロジックサービス』の3つを提供する。まず、データサービスでは、製造現場システムやレガシーシステムのデータをリアルタイムに収集・統合。次に、可視化サービスにより、統合したデータを可視化し、スナップショットでエネルギー消費状況をモニタリングできる環境を提供する。そして、ビジネスロジックサービスでは、しきい値設定などによってビジネスルールやアラート通知を簡単に開発し、実行することができる」としている。

全社横断でエネルギー情報を活用できる「SAP MII」

 また、「SAP MII」は、ERPの財務情報と連携することで、エネルギー情報と経営をリンクさせることも可能で、「節電対策としてのエネルギー管理だけでなく、エネルギーに関する単一のマネジメントシステムとして全社規模で活用できる」ことも大きな特徴だ。「SAP MIIによって収集したエネルギー情報は、節電対策を担う生産担当役員にとどまらず、CO2削減プロジェクトを進める環境担当役員、正確なコスト情報の把握が求められる財務担当役員、そしてエネルギー効率向上を推進する設備担当役員まで、全社横断でさまざまな意志決定に役立てることができる」という。

 説明会の最後には、「SAP MII」の海外における導入事例として、元米国バレロ・エナジー社(以下、バレロ社) CIO兼シニアバイスプレジデントのハル・ゼシュ氏がビデオカンファレンスで参加し、「SAP MII」を導入した背景や効果などについて紹介した。

ビデオカンファレンスで参加した元米国バレロ・エナジー社 CIO兼シニアバイスプレジデントのハル・ゼシュ氏ロール別に構成されたオペレーション・ダッシュボードプラント別エネルギーコスト削減額

 バレロ社では、数多くの企業を買収してきたが、その際、各社のパフォーマンス情報を1つの情報プラットフォームで一元管理するために「SAP MII」を導入したという。ゼシュ氏は、「『SAP MII』の導入によって、必要なオペレーション情報をダッシュボードに統合し、リアルタイムに活用できる情報として可視化することに成功した。これにより、オペレーションの状況から、生産率、在庫のキャパシティ、生産能力、エネルギーの効率性、工程の安全性などまで、すべての情報を統合管理し、リアルタイムに最適化することが可能となった。特に、ダッシュボードは、ロールベースで構成され、職責ごとに必要な情報のみを表示することで、エネルギー情報管理の効率化を実現した」と述べている。

 具体的な導入効果としては、「バレロ社は当初、年間1億ドルのエネルギー削減を目標としていたが、『SAP MII』の導入後は、予想をはるかに上回るエネルギー削減率を実現し、当初目標の2倍となる年間2億ドルのエネルギー削減を達成した」とし、この結果について「プラント別のエネルギーコスト削減額を可視化し、各プラントのエネルギーレベルを比較しながら、最適化を続けてきたことが目標を大きく上回るエネルギー削減につながった」と分析する。

 そして、「通常、オペレーターは電力のキャパシティを正確に把握することは難しいが、『SAP MII』では、電力状況がリアルタイムに可視化されるため、余計なコストをかけることなく、必要な電力を常に確保し、それを最適なレベルで維持し続けることができる。これが最大の導入成果である」との考えを示した。

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