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富士通、「Uvance for Finance」の7つのオファリング体系で金融DXを全方位支援
2026年2月25日 06:00
富士通株式会社は24日、2025年6月に発表した金融ビジネス戦略「Uvance for Finance」の進捗について説明。銀行領域の取り組みに加えて、保険、証券、クレジット、リース領域における展開を本格化する。
具体的には、7つのオファリング体系にカテゴライズし、それぞれのカテゴリーにおいて、順次、オファリングを拡充していく。
また、2030年度には、金融機関向けUvanceビジネスで売上高2000億円を目指す計画も公表した。金融機関向けビジネスの約半分をUvanceが占めることになる。
富士通 執行役員常務 金融ビジネスグループ長の八木勝氏は、「Uvance for Financeでは、銀行以外の領域に対してもオファリングを届けるために、約1年にわたり開発および拡充を図ってきた。富士通は、社会課題を念頭にDXを支援する戦略パートナーとして邁進する考えであり、Uvance for Financeを通じて、見えない安心が誰にでも届く社会の実現に向け、デジタルを駆使したイノベーションの実現を進める」と述べた。
同社は2025年6月に「Uvance for Finance」を発表し、勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(クロスバンク)」の提供を開始。さらに、ネットバンクの勘定系システムでは、2025年の31%の国内シェアを2035年には50%以上に拡大するとともに、営業店システムでは34%から50%以上にシェアを拡大する計画を発表している。その一方で、ATMおよび営業店専用ハードウェアの提供を2028年3月末に終了することも明らかにした。
今回は、保険基幹系システムにおいて、2025年に10%のシェアを2030年に30%以上に高めること、リース系基幹系システムでは、2025年に20%のシェアを2030年には40%以上にする計画を発表している。
7つのオファリングを支える「Uvance for Finance」の3層構造
今回発表した「Uvance for Finance」の新たな仕組みは、3層構造をベースに、7つのオファリング体系に整理し、各カテゴリー(=オファリング体系)でオファリングソリューションを提供することになる。
2025年度中に、3層、5カテゴリーにおいて、14のオファリングソリューションを品ぞろえしたという。
「Uvance for Finance」の3層構造は、信頼性の高い勘定系ソリューションや、金融店舗ソリューションによる「コアソリューション」、そこから得られるデータと生成AIなどのテクノロジーを活用した「AI/データ利活用プラットフォーム」、それらによって人々の生活を豊かにする「カスタマーエクスペリエンスの向上/スマートソサエティの実現」で構成される。
基幹系をクラウド化し、経営の俊敏性を向上
ひとつめの「コアソリューション」では、オファリング体系として「Reliable Core System」を用意。基幹システムの俊敏化と効率化を実現するとともに、AIに対応するためのFit to Standardのクラウドサービスをラインアップしたという。
富士通 Financial Service & Insurance事業本部長の西田浩朗氏は、「コアソリューションのコンセプトを支えるのは、パブリッククラウド、マイクロサービスアーキテクチャー、クロスインダストリーの3つであり、一部例外はあるものの、基本的にはモジュール単位で個別の機能を使えるようにしており、APIを通じて、異業種ともデータ連携ができるソリューションとなっている」と位置づけた。
具体的なオファリングとしては、2025年6月に発表した「xBank」が挙げられる。2025年9月からは、機能開発に対して生成AIの適用を開始し、安全性や確実性を担保しながら、AIドリブン開発への段階的移行を推進しているという。
また、保険業界向けに、2025年11月から「Fujitsu Cloud for Insurance Japan Edition」の提供を開始。SAP Fioneerがグローバルスタンダードとして提供する「SAP Fioneer Cloud for Insurance」に、日本市場の要件を統合。日本の次世代保険ビジネスで必要なすべての業務をカバーし、必要な機能をモジュール単位で利用可能だという。現時点では、第1弾テンプレートとして、自動車保険機能を提供。今後、テンプレートの拡充に取り組むという。なお西田氏は、「テンプレートを活用することで、登山に例えると、1合目から登るのではなく3合目や5合目から登れるようになる」との表現で説明した。
さらに、リース業界向けの「LEASING-1 Neo」は、30年以上の実績を持つソリューションをベースに開発したクラウド型リース基幹システムで、大手から中堅・中小企業に至るまでの高い導入シェアを背景にしたノウハウを活用している。すでに、FFGリース、日産フィナンシャルサービス、三菱自動車ファイナンス、FLCSでの導入が決定しているという。また、2026年度の新リース会計基準への対応を図るほか、API連携の強化、生成AIの活用、多要素認証などにも対応。2027年度以降は、次世代アーキテクチャの導入、AIエージェントの組み込みのほか、2030年までに大手企業でも利用できるソリューションに進化させる計画を示した。まずは準大手企業への導入を進めるという。
さらに、クレジット業界向けの基幹ソリューションの提供を開始する予定も明らかにした。
米FICOとの提携で「意思決定」を高度化
2つめの「AI/データ利活用プラットフォーム」は、データ活用による経営・業務革新を実現する「Data Driven Finance」、規制順守とリスク管理の高度化する「RegTech & Compliance」、ESG経営と持続可能な成長支援を行う「Sustainable Finance」の3つのオファリング体系で構成される。
「Data Driven Finance」においては、FICO(フィーコ)の金融高度化ソリューションを活用。銀行、証券、クレジット、保険、リースなどの金融業界全般を対象とした横断的プラットフォームの強みを生かしながら、正確な信用スコアリングやデータ分析、意思決定支援により、収益の最大化、リスクの最小化、不正対策に貢献できるという。
FICOは1956年に設立された企業で、本部を米カリフォルニア州サンノゼに置く。同社のソリューションの特徴は、AIや数理最適化技術により社内外に散在するデータと資産をつなぎ、オペレーションエクセレンス、パーソナライゼーションを実現するほか、リユーザブル、コンポーザブルな部品群を、必要な機能のみ導入できる点。世界100カ国以上に、1万以上の顧客を持ち、米大手金融機関の90%以上がFICOのクライアントだという。
富士通とは2024年度からパートナーシップを結んでおり、富士通は、顧客とのコミュニケーションを最適化する「FICO Customer Communication Services」を2025年7月から提供開始。オムニチャネルを活用した顧客とのコミュニケーションの高度化や、業務部門の自動化・省力化を支援しており、すでに、ドコモ・ファイナンス債権回収およびJCBが導入している。
また、最適化分析プラットフォームである「FICO Xpress Optimization」を2026年2月から提供開始。さらに、FICOのサービス群を統合的に提供する「FICO Platform」を、2026年度中に提供する予定も明らかにした。
富士通の西田本部長は、「FICO Platformは、金融分野の専門性をベースに基幹と周辺を含めた連携を行い、データ分析から意思決定までできる点に特徴がある。また、豊富なテンプレートが用意され、お客さまは、この中から必要なテンプレートを選び、カスタマイズして導入できる」と説明。「富士通から、すべてのFICOサービス群を提供できるようになる。これにより金融機関は、中堅・中小企業に対して、さまざまなファイナンス商品を提案できるようになる」とした。
2026年度からは、「RegTech & Compliance」および「Sustainable Finance」のカテゴリーでも、パートナーとの連携を強化しながら、オファリングソリューションを整備。また、富士通のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」や、大規模言語モデル「Takane」を活用したAIエージェントの適用を進め、業務効率化や自動化、パーソナライゼーションによる付加価値の高いサービス提供に貢献するという。
なお、2025年4月に発表した三井住友銀行との協業による、顧客の高度な意思決定や、業務効率化の実現に向けたデータ分析ビジネスに関する取り組みについても進捗状況を説明。三井住友銀行が持つ業界知見やデータサイエンスなどの分析ノウハウに、富士通のAI需要予測を組み合わせたサービスの提供を開始しているという。現在、複数の顧客から引き合いがあるとした。
カスタマーエクスペリエンスの向上/スマートソサエティの実現
「カスタマーエクスペリエンスの向上/スマートソサエティの実現」では、一人ひとりのエンゲージメントを強化する「Personalized Experience」、バックオフィス業務の自動化を行う「Finance Automation」、シームレスな金融サービスに一体化する「Embedded Finance」の3つのオファリング体系を用意している。
「Personalized Experience」では、2025年6月に発表した非対面と対面のシームレスな連携と業務効率化を実現する店舗ソリューションである「Digital Branch」に加えて、相続人確認業務の課題を解決するサービスとして「FinSnaviCloud」を提供しており、これまでに24社の金融機関が採用しているという。戸籍謄本から相続関係説明図を自動生成する新たな機能の提供を開始しており、金融機関における属人的な相続業務の課題解決を支援するという。
また「Embedded Finance」では、「オンライン診断書連携サービス」を提供。病院と保険会社をつなげることで給付金の支払い手続きを行える新規開発サービスであり、2026年5月から提供を開始する予定だ。これまでは、被保険者や受取人が、病院から発行される診断書をもとに保険会社へ請求していた給付金の支払いを、同サービスを導入することで、オンラインにてワンストップで完結できるようになる。被保険者や受取人がオンラインで診断書を受領し保険会社に提出するため、紙の手続きが不要になる業界初のサービスだという。「昨年からPoCを続けてきて効果が出ることを検証した。保険契約者、病院、保険会社にとって三方よしのサービスになる」とした。
そのほか、「Embedded Finance」を実現する「Fujitsu Embedded Finance Platform(仮称)」の検討を進めていることも明らかにした。SaaSデータを活用し、企業の資金ニーズをAIが瞬時に検知。企業の事業活動に即したタイムリーな資金供給により、中堅中小企業の成長とサプライチェーンの持続可能性を支援できるという。現在、PoCのフェーズにあり、今後はEDIデータにとどまらず、ERP、CRM/SFA、HRTech、GHG可視化などのデータを集約し、さまざまなサービス提供へと拡大。B2B領域における「Embedded Finance」を提案する考えを示した
2030年度には金融機関向けUvanceビジネスで2000億円の売上高を目指す
富士通では、今後も継続的に、「Uvance for Finance」における製品、サービスの品ぞろえを拡大する予定であり、「Uvance for Finance」をベースとした機能強化や追加開発では、AIドリブン開発基盤である「AI-Driven Software Development Platform」を適用し、AI活用によるスピード向上と自動化を強化する考えも示した。
富士通の西田本部長は、「2025年度は、Uvance for Financeの立ち上げはしっかりできた」と振り返りながら、「2026年度は、xBankやSAP Fioneer Cloud for InsuranceといったUvance for Financeのコアモジュールにより、AI時代に信頼性および柔軟性をあわせ持つ基幹システム基盤を提供。Embedded Financeの推進により、クロスインダストリーにおいて金融機能を提供。Uvanceのほかのソリューションに組み込んだ次世代金融サービスを実現する。また、新たなUvance for Financeにより、お客さまとの共創を通じて、業界全体に広がる金融モデルを提供することを目指す」と発言。
さらに、今後の施策として、「Uvance for Financeの対象領域の拡大と、新しいオファリングソリューションの提供によって、未来の金融サービスに貢献することを目指している。また、Uvance for FinanceとUvanceの各領域との連動により、金融業種への価値を提供。クロスインダストリーとグローバル展開により、業種や国境を越えた価値の提供にも取り組む」とした。
富士通は、2025年度に金融機関向けUvanceビジネスで、売上高が800億円強になる見込みを発表した。2025年6月時点では、売上高700億円以上を目指すとしていたが、これを上方修正した格好だ。
八木執行役員常務は、「2025年6月からソニー銀行でxBankが稼働し、それ以降、大きなトラブルがなく稼働しており、年間売上が相応にあった。また、銀行の営業店におけるクラウド化が進展し、それに伴うソリューション開発やシステムインテグレーションが大きく貢献している。さらに、保険業界におけるSAPのクラウド適用案件なども貢献している」と、上振れ要因を示した。
また、富士通では、2030年度には、金融機関向けUvanceビジネスの売上高を2000億円にまで高める計画を明らかにした。2030年度には、金融機関向けビジネス全体の売上高で4000億円から4500億円規模を想定しており、約半分をUvanceが占めることになる。
だが、富士通は2025年6月時点で、金融機関向けビジネス全体の売上高で5200億円以上としており、今回発表した2030年度の売上想定と比較すると、今後5年間で15%程度縮小することになる。
この背景には、金融期間向けビジネスにおけるハードウェアの売上縮小が盛り込まれている点が見逃せない。金融機関向けビジネスでは、ATMおよび営業店専用ハードウェアの提供を2028年3月末に終了するだけでなく、2030年度には、金融機関と強いつながりがあるメインフレームの販売終了も予定しており、関連するハードウェアビジネスも大幅に縮小することになる。
つまり、今回、金融機関向けビジネスで打ち出した2030年度の姿は、富士通全体が目指す青写真と見ることもできそうだ。
ハードウェアビジネスの終了により、今後5年間で売上高は15%程度縮小しながらも、利益率の高いUvanceの売上高を年率20%で成長させ、構成比を50%にまで引き上げるというのが金融機関向けビジネスの成長戦略である。
金融機関向けビジネスの姿がひとつの指針と見た場合、富士通が、2026年5月に発表する予定の中期経営計画の経営指標は、果たして、どんな形で描かれることになるのだろうか。











