「データセンターにフォーカスしているのが強み」~フォーステン・ネットワークス

40GbEを備えた高密度ボックス型スイッチも提供へ


 「当社は、データセンター市場にフォーカスしたネットワークベンダー。一口にデータセンターといってもさまざまな分野があるが、それぞれに適したソリューションを提案し、お客さまとともに成長していく」――。11月付けでフォーステン・ネットワークス株式会社(以下、フォーステン)の社長に就任した林田直樹氏は、自社の戦略をこう説明する。

 

データセンターにフォーカスした独自戦略で業績を伸ばす

フォーステンの林田直樹社長(左)、米Force10 Networksのヘンリー・ワシックCEO(中)、ジェフ・ハミューセス APAC地区担当マネージング・ディレクター
主要顧客

 フォーステンではかつて、HPC市場に注目してきた時期もあり、それは今でも重要な市場の1つであることは間違いないのだが、「今では企業の戦略としてデータセンターにフォーカスし、開発投資の90%をデータセンター向け製品に振り分けている」(米Force10 Networksのヘンリー・ワシックCEO)という。

 その理由の1つには、データセンター市場が非常に伸びる市場だ、ということが挙げられる。経済的な要因や仮想化技術の進展に伴い集約が進むデータセンターでは、高密度かつ低消費電力、低コストなネットワーク製品の需要が高まっており、そうした特徴を持つ製品を提供してきた。

 林田社長によれば、特に「トラフィックが膨大に多く、かつアップダウンの激しいところにフォーカスを当ててきたため、eコマース、クラウド事業者、Web 2.0企業などのお客さまには、大きな支持をいただいている」とのことで、現に、顧客企業にはfacebook、Yahoo!、YouTube、salesforce.comなど、業界のトップを走っている事業者が並んでいる。

 実際に売り上げの方も、「2年連続で対前年比6割の伸びを示している」(ワシックCEO)とのことで、好調をキープ。ワシックCEOは、「明確な戦略面でのフォーカスがあり、全社員が一丸になって取り組んできたことが、ここ数年の伸びにつながっている」とし、今後もこうした方針を明確に打ち出していくとした。

 またワシックCEOは、APAC(アジア・太平洋地域)への注力も強調する。それは、ブロードバンド大国であり、IT大国でもある日本市場と、めざましい発展を遂げる中国市場を含む、魅力的な市場であり、同時に、高い成長が期待できる市場でもあるからだ。

 Dell'Oro Groupの調査によれば、Force10 Networksが強い10GbE市場(ワールドワイド)では、2009年から2014年までで25%の年平均成長率(CAGR)が見込まれているが、「シェアの多くを占める競合ベンダーのパイを崩していくことから、控えめに考えても4割の伸びは達成できるのではないか」(ワシックCEO)との見方を示す。

 現に実績としても、APACは自社内のほかの地域と比べても高い伸び率を示しているとのことで、「顧客に百度やAlibabaなどの企業を抱え、市場自体も活気を帯びている中国では、100%や200%といった、高い伸び率が期待できるのではないか。最終的には、APACからの売り上げが、全体の50%を占めるようになるのでは、と期待している」とした。

 もちろん、本社サイドでも支援は強化する考えで、Force10 Networks APAC地区担当マネージング・ディレクターのジェフ・ハミューセス氏は、「まず、人的な強化によって、サポート体制を含めた強いチームを作り上げているところ。また、本社側のリソースを極力利用する点も重要で、今回のように、CEOやCOOなどが来日した場合は、その協力を仰ぐし、さらに、パートナーとも同じモメンタムを共有することも必要だろう」と述べている。

国内での戦略

 国内でも、知名度の強化を目的にPR・マーケティング活動を強化するほか、二次店網の充実を目的としたパートナープログラムの設置、アライアンスパートナーとの協業推進、サポート体制の拡充などを進める計画で、日本法人の本社内に設置した日本ラボも強化を図る。さらに、「顧客のメリットを最大化するためには、単なる箱売りでは十分ではない」(林田社長)との考えから、ソリューションとしての提案を行えるようにするとのこと。こうした活動を通じて、国内の売上高を2年間で3倍に拡大するとしている。

 

48ポートの10GbE、4ポートの40GbEを備えた高密度ボックス型スイッチを提供

S4810
S4810の概要

 そうした中で、フォーステンが11月に発表し、早ければ年内にも提供開始する予定の新製品が、700nsの超低遅延を達成した1Uのボックス型スイッチ「S4810」だ。48ポートのGbE/10GbEポート(SFP+)を備える高密度型のトップオブラックスイッチで、「10GbEを48ポート搭載できるという点だけでも、他社にはない高密度を実現している」(林田社長)というが、さらに、4ポートの40GbEポート(QSFP+)を搭載し、高速インターフェイスへのニーズにも対応できる。

 また、10GbE/40GbEポートを利用して接続したスイッチを、仮想的に1台のスイッチとして管理できるようにする「仮想シャーシ機能 with フロントポート・スタッキング」機能も備えている。この機能は、専用のスタックケーブルを利用する一般的なスタック機能と比べると、距離(スタックケーブルの長さ)に制限されない強みがあるとのこと。OSについても、フォーステン製品に共通して採用されているモジュラー型OS「FTOS」を引き続き搭載し、ソフトウェアの面でも、モジュラー型のメリットを生かした高い可用性・柔軟性を実現している。

 さらに、このようなスイッチの性能自体もさることながら、データセンターにフォーカスしている自社の戦略を具現化するための、仮想化/自動化機能が、S4810にはいくつも盛り込まれている。そのうちの1つが「ジャンプスタート」機能で、DHCP/TFTPサーバーと連携し、スイッチが設定ファイルやファームウェアを自動ダウンロードするため、「エンジニアのスキルに依存しない機器の導入が可能になる」(フォーステン 営業統括本部システムエンジニアリング事業部 シニアシステムエンジニアの池田豊氏)。

 仮想化対応では、仮想マシンが新しく立ち上がったなどの理由により、仮想スイッチのVLAN設定が変更された場合に、物理スイッチであるS4810側の設定も自動で実行してくれる「ハイパーリンク」機能が搭載されている。この機能では、ライブマイグレーションによる仮想マシンの移動時に、そのネットワーク設定を追随することも可能で、「現在はVLAN設定のみだが、2011年3月までには、ACLやQoSのポリシーなどについても、自動で引き継げるようにする」計画という。ハイパーバイザーはVMwareとXenServerにすでに対応。2011年3月までには、Hyper-VとKVMもサポートする予定になっている。


ハイパーリンク機能により、VLAN設定が変更された場合に、自動で追随する仮想マシンの移動時にも、自動で設定を変更できる

 なお、フォーステンではこれまで、高密度のポート実装が評価されていることもあって、Eシリーズなどのシャーシ型スイッチをビジネスの中心に据えていたが、トップオブラックスイッチの需要が増えていること、またインターフェイスの高速化、スイッチの高性能化によってボックス型をコアスイッチとして導入する事例が出てきていることなどを考慮。Sシリーズの新製品を投入し、ボックス型のラインアップを強化する考えだ。

 「かつて、当社は10GbEを最初に提供した企業として名をはせたが、今後は、40GbE/100GbEのネットワークソリューションを提供する企業として、業界を主導していく。S4810などを通じて、そうしたメッセージをお客さまに訴求していきたい」(林田社長)。

関連情報
(石井 一志)
2010/12/3 06:00