シトリックス、クライアントハイパーバイザー「XenClient」が追加された「XenDesktop 4 FP2」


 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(シトリックス)は27日、デスクトップ仮想化ソフトウェアの新版「Citrix XenDesktop 4 Feature Pack(FP) 2」を発表した。ローカルハイパーバイザー機能「Citrix XenClient」やセキュリティ機能「Citrix XenVault」など、主としてモバイルユーザー向けの機能が追加されている。提供開始は9月末の予定。

木村裕之副社長

 一般に、仮想化ソリューションはサーバー仮想化が先行しているのはよく知られているところだが、ここ最近では、デスクトップ仮想化に関しても、関心がかなり高まってきている。シトリックスでも、ニッセイ情報テクノロジーにおいて、1万ユーザー規模のデスクトップクラウド環境を導入しているほか、「(仮想デスクトップ環境を提供するための)XenDesktopは、直近の3四半期に、全世界で350万ライセンスを販売」(木村裕之副社長)とのこと。

 「各企業の部門単位から全社レベルでの利用にシフトしていることが分かってきた。国内でも多くの企業がデスクトップ仮想化に本格的に取り組み始め、加速し始めた」(木村副社長)と、前向きな手応えを感じている。

 このように、仮想デスクトップ環境の普及が進む中で、今回提供される「XenClient」は、ホストOSを必要としない、ベアメタルのクライアントハイパーバイザー。これまでのシトリックスの仮想デスクトップに欠けていた、ローカルでの仮想デスクトップを補完する役割を担う。

 アーキテクチャとしては、XenClientハードウェア上に直接ハイパーバイザーを動かし、その上で仮想OSを動作させる、サーバー仮想化と同じような仕組みを採用している。このメリットは、「既存のOSレイヤを省くことで高いパフォーマンスが期待できるほか、ホストOSがないため、ホストOSを乗っ取られる危険性がない」(マーケティング本部 担当部長 北瀬公彦氏)点で、各仮想マシンはVHD形式で独立性を保持しており、暗号化によりセキュリティを確保。複数のOSを同時に起動させることもできる。

 また、管理ツール「Synchronizer for XenClient」を用いて、XenClient上に構築されている仮想OS環境のバックアップを自動的に取れるようにしており、クライアント環境の迅速な復元に対応。万一の盗難時には、そのノートPCのデータをリモートから消去し、新しいPCを購入後に、サーバーからリストアできる仕組みを用意した。

 現時点では、インテルのvPro対応PCのみをサポートし、動作確認が取れている機種はかなり少ないが、対応プラットフォーム、PCは順次拡充されていくとのこと。なお、1台のPCで複数の仮想デスクトップ環境を動かす場合、OSのライセンスは本来個別に必要だが、企業向けのWindows 7 Enterpriseのライセンスを契約していれば、仮想OSのインスタンスを4つまで無償で使えることから、ライセンス費用を節約できるとのこと。

XenClientの特徴XenClientの概要。クライアントPC上に、複数の仮想環境を構築できるほか、データセンターに環境をバックアップする仕組みも備えている
XenVaultの概要

 新機能のもう一方、XenVaultは、企業のデータを安全に扱うための追加機能。クライアントソフト「Citrix Receiver」のプラグインとして提供され、「暗号化された領域をクライアントPC内に作成。XenApp/App-Vで配信されるアプリケーションを使う場合、データを強制的に、暗号化領域内へ保存させることで、セキュリティの確保を実現する」(北瀬氏)のだという。

 暗号化領域は、仮想デスクトップ、物理デスクトップ双方の環境に対応するほか、ユーザーが退職したり、契約期間が切れたりして職場を離れた場合や、盗難に遭った場合などには、リモートから暗号化領域を削除することも可能になっている。

 シトリックスでは、この両機能の追加によって、モバイルソリューションでの仮想デスクトップ製品の活用を広げたい考え。木村副社長は、「当社では、お客さまのさまざまな場面に最適なソリューションを提供する、『Flex Cast』コンセプトを提供しているが、XenClientとXenVaultによって、コーポレート環境をよりセキュアな環境に使えるようになる。リモート/モバイル環境ではもちろん、社外に持ち出したPCクライアントにおいても情報漏えいや盗難時のリスクを解決できる唯一のベンダーだ」と述べ、両機能によって価値の高まったXenDesktop 4 FP2をさらに訴求していく姿勢を示した。

 なお、XenDesktop 4 FP2に含まれる機能のうち、XenClientのベアメタルハイパーバイザーは無償。Synchronizer for XenClientによる管理機能を利用する場合も、10ライセンスまでは無償で提供するが、11ライセンス以上の場合は、XenDesktop Enterprise/Platinumの契約が必要となる。XenVaultは、XenDesktop、XenAppのユーザーに対して無償で提供される。

関連情報