「RHEL 6で商用UNIXを置きかえる」~米Red Hat ジム・トットン氏
Red Hat社副社長兼プラットフォーム事業部門代表 ジム・トットン氏 |
レッドハット株式会社は7月15日、米Red Hat社副社長兼プラットフォーム事業部門代表のジム・トットン氏来日を受け、記者説明会を開催した。トットン氏は、年内にリリースが予定されている次期バージョンLinux「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 6」に向けて、RHELの市場と事業戦略について説明。特に、いままでの商用UNIXの市場をLinuxが置きかえていっている潮流を語った。なお、トットン氏はDellやMicrosoftを経て、2010年4月にRed Hatに入社している。
■「LinuxとWindowsとで市場が50:50になる」
トットン氏はまず、サーバーの新規出荷台数が落ち込んでいる中、Red Hatの売り上げが15%増加していると説明。特に、商用UNIX搭載サーバーの台数が減少して、LinuxサーバーがUNIXサーバーの約4倍になっていると語った。
そして、「UNIXやRISC CPU、メインフレームなどは、Linuxとコモディティ化されたハードウェアに置きかえられた」と述べ、「Red Hatはその業界のリーディングカンパニー。市場はLinuxに向かっており、つまり市場はRed Hatに向かっている」と強気の姿勢を見せた。
また、Red Hatの調査結果として、長期的にLinux市場が現在の約3倍になり、そこではEnterprise部門でWindowsとLinuxが50:50で市場を占める、という予測を紹介。その上で、セキュリティや運用コスト、性能などの選択項目のうち、多くの項目でRHELがWindowsに勝ると語った。
コミュニティやパートナーとのエコシステムについても触れ、Linuxカーネルや仮想化などで多くのコードをOSSコミュニティにコントリビュートしていること、IntelやAMDなどハードウェアのイノベーションに協力していることなどを紹介した。
現在のLinuxサーバー市場 | Red Hatによる市場予測 |
■RHEL 6は商用UNIXに相応する機能
次期Linux製品であるRHEL 6は、現在β2の公開テスト中で、年内のリリースを予定。正確なリリース時期は、βテスト次第という。
RHEL 6の主要なテーマとしては、大規模エンタープライズにも対応し運用コストを削減する「最適化された基盤OS」、柔軟な運用を支援する「仮想化」、ストレージやネットワークなどの優れた技術を提供する「イノベーションとテクノロジー・リーダーシップ」、電力削減などの「グリーンIT」の4つを掲げた。
大規模エンタープライズの分野では、まず、大規模のサーバーのサポートがあげられる。RHEL 5と比較し、最大CPU数が64から4096に、物理メモリが1TBから64TB(理論的に)に、といったようにスペックの上限が大きく上がった。また、プロセスをグループに分けてCPUやメモリ、I/Oなどのリソースを管理するcgroup機能をサポート。これらの特徴はいままで商用UNIXが優位だった点だったが、「その分野でもUNIXを置きかえる」という。
RHEL 6の主要なテーマ | RHEL 6のスケーラビリティ |
管理性と、それに含まれる仮想化も大きなテーマだ。RHEL 5をリリースした時点では仮想化は導入側には評価段階だったが、現在ではIT戦略の鍵となる。RHEL6では、Linuxカーネルに組み込まれたKVM仮想化機能を、ホスト環境およびゲスト環境において積極的にサポート。デバイスI/Oの最適化などによりパフォーマンスを向上させている。
この仮想化をベースに、サーバーとデスクトップの大規模仮想化による管理性向上をサポートする。具体的には、クラウド環境における動的プロビジョニングや、SPICE技術によるデスクトップ仮想化(VDI)などが挙げられた。また、クラウドについて、製品だけでなくドキュメントやサポート、トレーニングなどトータルでサポートするCloud Foundation Edition Oneも紹介された。
グリーンITの分野については、アイドル時の電力消費がRHEL 5.4から5.5の間で20%改善し、そこからRHEL 6でさらに20%改善したというデータを紹介。また、仮想化によるOSの動的なプロビジョニングもグリーンITに貢献すると説明した。
最後にRHELのエコシステムにも言及。公開されたカーネルABIにより、サードパーティのドライバ開発を助け、タイムリーなハードウェアサポートやドライバのアップデートがなされることが、RHELの利点であると語った。
RHEL 5.4、5.5、6の電力消費の比較 | RHEL 6の特長:仮想化、管理性、電源管理 |
RHEL 6の特長:RAS、スケーラビリティ、デスクトップ | RHEL 6の特長:ソフトウェア、開発ツール、エコシステム |