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「AIで生産性が劇的向上」は本当か?――Okta CEOが語るシャドーAIの脅威と開発プロセス変革のリアル
2026年6月29日 06:00
「Okta secures AI」(OktaはAIを保護する)――こう語るのは、米Okta, Inc. CEO 兼 共同創業者のトッド・マッキノン(Todd McKinnon)氏だ。その背景には、急激に進化し増加しているAIエージェントと、それを安全に活用したい企業の存在がある。AIの自律性が高まり、多くの権限や社内リソースとつながるにつれ、サイバー攻撃のリスクも拡大することになるが、OktaはいかにしてAIを保護し、安全な環境を提供するのだろうか。
来日中のマッキノン氏が、報道陣からのさまざまな質問に答えた。
まん延する「シャドーAI」のリスクとAIエージェントの保護
AIエージェントのリスクについては、Oktaの調査「AI Agents at Work 2026」でも明らかになっている。同調査によると、経営陣の90%が自社内のAIツールの可視性に自信を持っていると回答した一方で、従業員の52%が未承認のツールを使用していると答えており、「シャドーAI」がまん延していることを示している。この傾向は日本も同様で、経営陣の84.6%がAIツールの使用状況を把握できていると回答したのに対し、従業員の47.5%が未承認ツールの使用を認めている。
こうしたことからOktaでは、企業がAIエージェントを適切に管理できるよう「セキュアなエージェンティック企業のための設計指針(blueprint for the secure agentic enterprise)」を公開している。この設計指針は、AIエージェントがどこに存在し、何に接続でき、何ができるのかを提示するフレームワークだ。
この設計指針を具現化した製品が、4月に一般提供を開始した「Okta for AI Agents」となる。Okta for AI Agentsは、Oktaが人間に対して適用してきたセキュリティ管理の考えを、AIエージェントにも拡張したもので、企業内のAIエージェントを既存のアイデンティティ管理システム内で一元的に管理・統制する。
具体的には、AIエージェントのライフサイクル全体を「可視化」「登録」「制御」「統制」という4段階でカバーする。可視化と登録の段階では、企業内のAIエージェントを検出して統合ディレクトリへ登録し、制御と統制の段階では、きめ細かな認可制御を行う新標準プロトコル「Cross App Access」や、ユーザーのコンテキストにひもづいた安全なアクセス制御を実現する「Secure Token Service」などを通じ、一元的な統制を実現する。これにより、シャドーAIのリスクが軽減されることになる。
このような製品が提供できるのは、Oktaが中立的なベンダーとして、さまざまなテクノロジー企業と連携しているためだという。「AIのセキュリティは、1社だけで担保することはできない。Oktaが中立性を保っているのもそのためで、過去17年間にわたってあらゆるデータベースやデバイス、アプリケーションとの統合を進めてきた。特にAIの世界ではこの連携が重要になる」とマッキノン氏。
連携するパートナー各社も独自のセキュリティ機能を強化していることから、将来的に競合するのではないかという懸念に対しては、「Oktaは顧客目線を起点とし、パートナー企業との補完的関係を重視している」とマッキノン氏。顧客の課題解決に向けた業界の設計指針を提示した上で、「Oktaができることとパートナー企業ができることを明確にしながら、連携して市場を開拓していく」とした。
AIによって変貌するソフトウェア開発の未来
AIテクノロジーやAIエージェントの台頭は、ソフトウェア開発やプロダクト開発にこれまでにない大きな変化をもたらしている。マッキノン氏によると、今回のAIの波が、かつてのインターネット、クラウド、モバイルの登場時と決定的に異なるのは、エンジニアの仕事量に対する影響だという。
「過去のテクノロジー革命は、結果としてエンジニアの仕事を増やしてきたが、AIは開発プロセスそのものを破壊しようとしている。今後、新たなソフトウェアやエンジニアへの需要は増していくものの、これまでの働き方を根本から変えていくオープンな姿勢が不可欠だ」とマッキノン氏は語る。
Okta自身も、単に新しいAIツールを導入するだけでなく、ソフトウェア構築のプロセスそのものを変革しているという。プロセスの刷新や新しいツールの習得が必要となるため、短期的には開発スピードが一時的にスローダウンするものの、「長期的な視点に立てば、このアプローチこそが将来的なスピードアップにつながる」とマッキノン氏は主張する。
シリコンバレーでは、「AIの登場によって開発の生産性が爆発的に向上した」と語られがちだが、マッキノン氏は「その話は誇張されている側面がある」と明かす。経営者にとって、「AIで生産性が劇的に上がった」とアピールする方がスマートに見えるためだ。現実に目を向けると、「これから数年は、新しいプロセスを変化として受け入れながら学び直していく期間。短期的には一時的な減速というダメージを受け入れてでも、長期的なメリットを享受するために動いた企業が、長い目で見て大きく生産性を上げることになる」としている。
「大手企業であっても、この地道な変化への適応を怠れば、今後数年で変化に柔軟なスタートアップや中小企業の方が優位に立つことになるかもしれない。大きなチャンスをつかみに行くことを恐れてはいけない。特に大手企業を恐れることはない」とマッキノン氏は述べた。



