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Okta Japanが日本法人設立5周年、次の5年で「AI時代のIDセキュリティの牽引役になる」
2025年9月4日 11:42
Okta Japan株式会社は3日、日本法人設立5周年にあたり、事業戦略説明会を開催した。日本法人の第1号社員として2020年4月1日に同社に入社した代表取締役社長の渡邉崇氏は、この5年間を振り返りつつ、次の5年に向けたビジョンを語った。
Okta Japanは、2020年9月に日本法人設立記者発表会を開催し、日本での本格的な事業展開をスタートさせた。設立直後は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、企業の出社率が激減した時期だ。渡邉氏も「最初の約1年間はほとんど社員と会うことがなく、すべてリモートでの仕事だった」と当時を振り返る。
しかし、このコロナ禍がOktaの成長を加速させる契機となった。多くの企業がリモートワークへの移行を迫られる中、安全で円滑に業務を遂行する認証ソリューションとして、Oktaの需要が高まったのだ。渡邉氏は「リモートでも安全に滞りなく仕事ができる環境を提供するという観点でソリューションを提供するケースが多かった」と語る。
こうして市場ニーズに合致する製品を提供してきたOkta Japanは、この5年間で売上が20倍に成長。業種や企業規模を問わず、幅広い顧客に採用されている。渡邉氏は「システムを使うには、必ずアイデンティティが伴う」とし、アイデンティティ管理ソリューションの重要性を改めて訴えた。
一方、Oktaはセキュリティインシデントにも見舞われている。その際には製品開発を3カ月間停止し、セキュリティ強化に注力したという。
この経験から、Oktaは「より安全な製品提供」「自社インフラの強化」「ベストプラクティスの提供」「業界水準の向上」という4つの柱からなる「Okta Secure Identity Commitment」を策定。また、日本市場へのコミットメントとしては、日本独自の制度や市場動向を理解したセキュリティの専門家が必要だと本社に訴え、グローバルで初めて日本法人にChief Security Officer(CSO:最高セキュリティ責任者)職を創設した。これにより、「日本独自の規制や顧客の要望に即した対応が可能となり、情報共有のスピードも向上した」と渡邉氏は述べている。
CSO設置のほかにも、日本市場への継続的なコミットメントとして、国内のデータセンター開設や、製品・マニュアルの日本語化、日本語サポート体制の確立など、積極的な投資を続けてきたOkta。国内の組織体制も強化しており、「経理、人事、法務といったあらゆる機能が日本で完結できる組織体制を構築している」と渡邉氏は明かす。
設立5周年を機に、渡邉氏は次の5年を見据えた3つのビジョンを掲げている。それは、1)AI時代のアイデンティティセキュリティの牽引役になること、2)強固なパートナーエコシステムを基盤に、日本のDXを加速させること、3)アジアパシフィック地域を牽引する組織へと進化し、非英語圏の成功モデルを確立することだ。
急速に進化するAIについて渡邉氏は、ビジネスのあり方を変革しているとして、AI時代に求められる新たなセキュリティのあり方を提唱する。「AIエージェントやロボット、そしてアプリケーションなど、非人間アイデンティティ(NHI)の管理に加え、最新の技術を駆使した安全で使いやすいログイン体験の実現によるビジネスの加速、そしてすべてのユーザーがあらゆるテクノロジーを安全に利用できる社会の実現を、アイデンティティ管理のリーダーとして牽引する」とした。
また、企業がAIやSaaSなどを導入し、DXを実現するには、パートナーとの連携が不可欠だとし、「130社を超えるパートナーと、営業面だけでなく技術的にも深く協業する」と渡邉氏。幅広いテクノロジーベンダーとも連携を深め、「顧客が最適なテクノロジーを迅速に導入できるよう支援し、日本企業のDXを加速させる」としている。
非英語圏における成功モデルは、これまでの顧客との信頼関係や、日本語によるサポート体制、日本市場に即したセキュリティ体制の強化といった実績によるものだ。渡邉氏は、「今後はこうした組織基盤を活かしてアジアパシフィック地域を牽引し、グローバルにおけるOktaの非英語圏ビジネスの成功モデルを確立していきたい」と述べた。