週刊海外テックWatch

見えない透かし、消せない疑問 Claudeの透明性対応が波紋

 Anthropicは8月10日、Claudeが生成するテキストや画像に、AIが関与したことを機械的に識別できる仕組みを導入したと発表した。「EU AI Act(EU AI法)第50条」に対応するもので、まずEU地域で8月2日以降にローンチしたClaudeモデルから始め、それ以前のモデルにも順次拡大していく。ところが、ユーザーの中からは、特にテキストの扱いを巡って反発の声がわき起こり、議論になった。透明性を高めるはずの仕組みが、かえって「消せない疑問」を呼び込んでいる。

テキストにコピペでも移る不可視の透かし

 EU AI法第50条は、AI生成コンテンツの欺瞞や操作のリスクに対処するため、AI生成物を検知可能な状態にする義務を課すもので8月2日に適用が始まった。生成AIシステムのプロバイダーとデプロイヤー(導入・運用者)の双方について定めており、プロバイダーにはAI生成物を機械可読な形式でマーキングし、検出可能にすることを求めている。ただし、標準的な編集支援や、入力内容・意味を実質的に変更しない場合は、義務の対象外になるという。

 デプロイヤーには、ディープフェイクなど特定のAI生成コンテンツについて、利用者への表示・開示義務を課している。第50条は法的拘束力があり、違反に対しては最大1500万ユーロ(約1700万ドル)、または全世界の前年度売上高の3%の制裁金の高い方を科すことができる。

 Anthropicのサポートページによると、導入した識別方法は「テキストの透かし」と「ファイルに付与するメタデータ」の二つがある。前者は、生成テキストに目に見えない透かしを入れるもので、文章そのものに直接織り込まれる。テキストの意味、品質、読みやすさなどに影響を与えることはないとしている。またコピー先にも移り、一部の編集を経ても残る可能性があるという。

 後者は画像などのファイル向けの仕組みで、対応するSVG、PNG、JPGなどのファイル形式には、業界標準の「C2PA」規格に基づく署名付き来歴メタデータが付与される。ファイルの来歴情報が改変されていないかを検証する仕組みで、Euronewsは、写真のExif情報に近いデジタルな履歴と説明している。ただ、こちらもフォーマット変換、再保存、スクリーンショットなどで容易に失われうるという。

 適用範囲は、APIからWeb経由まで広範囲で、欧州だけでなくClaudeを利用可能な全ての国・地域で展開する。Amazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Foundry経由でモデルを利用する場合もテキストの透かしは適用されるが、署名付きメタデータについては各プラットフォームの機能によって利用できないこともあるとAnthropicは注記している。