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マイクロソフト、日本のAI主導型成長に1兆6000億円を投資
Microsoft Azureでさくらインターネット/ソフトバンクのAI基盤の活用を検討
2026年4月3日 14:58
米Microsoft(以下、マイクロソフト)は3日、「技術」「信頼」「人材」の3つの柱を軸に、2026年から2029年までに日本に100億ドル(約1兆6000億円)を投資する計画を発表した。投資計画には、国内事業者との協力による国内AIインフラの選択肢拡充、国家機関との官民サイバーセキュリティ連携の強化に加え、2030年までに100万人のエンジニアおよび開発者を育成する取り組みと、現場で働く人々へのAIスキリングが含まれる。
今回の発表は、2024年4月に発表した日本への投資を踏まえ、さらに取り組みを前進させる目的で、マイクロソフト副会長兼社長ブラッド・スミス(Brad Smith)氏の来日に合わせて行われた。高市政権が先端技術への成長投資と経済安全保障を国家的な優先事項とする中、発表した各種取り組みは、そうした日本の政策的な方向性に沿って構成されているとしている。
技術面では、国内AIインフラ選択肢の拡充に向けて、マイクロソフトはさくらインターネット株式会社およびソフトバンク株式会社と協力し、ソリューションの共同開発について検討を開始したと発表した。さくらインターネットとソフトバンクの2社は、Microsoft Azureからアクセス可能な日本国内のGPUを含むAI計算資源を提供する。これにより、日本国内でのデータレジデンシー(データの物理的所在地)を確保し、データ処理を国内で完結させながら、Azureのグローバルな標準機能を活用できる環境の実現を目指す。
精密製造やロボティクスといったフィジカルAI、国産の大規模言語モデル(以下、国産LLM)の開発など、日本で最も高度なAIワークロードでは、日本国内でのデータ管理要件に対応した、国内事業者が運用するAIインフラが求められると説明。この協力で実現する基盤は、スケーラブルなGPUコンピューティングと明確なガバナンスを備え、国産LLMなど高度なAI開発・活用を支えるインフラとして、日本の産業技術の進展に貢献するとしている。
「日本が定める要件」という基本原則は、マイクロソフトが提供するハイパースケールクラウドにとどまらず、エッジやオンプレミスなど、顧客自身が管理するインフラ環境にも適用されると説明している。
マイクロソフトは2026年2月、ガバナンスとレジリエンスに最も厳格な要件を持つ組織に向けてAzure Localを拡張した。これにより、パブリッククラウドへの接続が断続的、あるいは完全に切断された環境においても、Azureと一貫したガバナンスおよびポリシー管理のもと、ミッションクリティカルなワークロードを自社運用のインフラ上で実行できる。接続が制限される状況でも、業務の継続性と管理の実効性を確保する。
このガバナンス最優先のアプローチは、ソフトウェア開発にも及ぶと説明。GitHub Enterprise Cloudは、日本国内でのデータレジデンシーを提供しており、厳格なガバナンス要件を持つ組織は、コードやリポジトリデータを国内に保管できるとしている。
信頼の面では、日本の安全保障を維持する上で、国家機関レベルで協力できるテクノロジープロバイダーとのパートナーシップが不可欠だとして、マイクロソフトは、日本のサイバーセキュリティおよび法執行機関との官民連携を通じ、同分野における取り組みを推進していると説明する。
マイクロソフトは、国家サイバー統括室との協力を引き続き強化し、脅威インテリジェンスの相互共有などを通じて、官民双方におけるサイバー攻撃の早期検知と事前対策を支援する。合わせて、サイバーセキュリティの中核にAIやクラウド技術が浸透し、その重要性が高まる中、マイクロソフトは官民連携におけるグローバルな知見と実績を生かし、日本でのAI活用およびセキュアなクラウドソリューションの導入を後押ししていく。
また、マイクロソフトは警察庁と協力し、サイバー犯罪の抑止と国家レベルでのサイバーレジリエンスの強化にも取り組む。これらの取り組みは、悪意あるインフラの無力化に関するグローバルな知見と実績を有する、マイクロソフトのデジタル犯罪対策部門(DCU:Digital Crime Unit)ほかが主導している。DCUは、警察庁および日本サイバー犯罪対策センター(JC3)と連携し、インドで活動していた国際的な詐欺ネットワークの摘発に協力するなど、各国の法執行機関との協働を進めてきた。こうした実績を踏まえ、今回の連携強化により、悪意あるインフラの特定や無力化に向けた共同の取り組みを一層推進するとともに、進化するサイバー脅威への対応における実務面での連携強化を図る。
高市政権は科学技術研究の基盤強化を国家的優先課題として位置付け、AI for Scienceを含む関連分野への投資を拡充するため、5年間で60兆円の投資を表明している。日本は医療、材料科学、製造業、エネルギー、環境など多岐にわたる分野において、世界でも代替不可能な科学データを保有しているが、多くの研究者にとって、計算リソースの制約やAIインフラへのアクセス不足が、より大規模で意欲的な研究の妨げとなってきたと説明する。
マイクロソフトは、日本の研究者が大規模なAI解析やシミュレーションに取り組めるよう、総額100万ドル(約1億6000万円)の研究助成プログラムを開始する。合わせて、次世代の研究リーダーの育成を目的としたフェローシッププログラムを提供し、AI活用やデジタルトランスフォーメーションに関する実践的なスキルの習得を支援するとともに、マイクロソフトのグローバルなAI研究の知見を生かし、国際的な科学コミュニティとのつながりを促進する。
さらに、より幅広いAIスキリングプログラムを通じて、研究者が自身の研究にAIを効果的に取り入れることを支援し、日本の科学コミュニティ全体における基礎的なAI活用能力の底上げを図る。これら一連の取り組みは、日本が進める科学技術への国家投資が、計算資源の制約に阻まれることなく、具体的な研究成果へと結実するように支援することを目的としている。
人材面では、2024年4月以降、マイクロソフトは日本において340万人以上のAIスキル習得を支援し、29億ドル (4400億円) の投資発表時に掲げた300万人の目標を達成したことを紹介。しかし、日本が直面する労働力不足の問題は深刻で、単一のプログラムで解決できるものではないとして、スキリングの対象をエンジニアや開発者をはじめ、製造業などの現業部門で働く人々にまで広げるとしている。
株式会社NTTデータ、ソフトバンク株式会社、日本電気株式会社、株式会社日立製作所、富士通株式会社との協力のもと、マイクロソフトは2030年までに日本で100万人のエンジニアおよび開発者の育成を目指す。トレーニングでは、Microsoft Azure、Microsoft Foundry、GitHub、GitHub Copilot、Microsoft 365 Copilotを対象に、オンデマンド学習と講師主導型のオンライン研修プログラムを提供する。
さらに、電機・電子・情報関連産業の産業別労働組合である全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会との協力を通じて、マイクロソフトはこれらの産業で働く約58万人の組合員がAIの基礎的なスキルを習得する機会を提供する。2025年10月に開始したパイロットプログラムをベースに、全国規模での展開を予定する。このパートナーシップは、日本において戦略的重要性の高い産業のひとつであり、AIによる変化の影響を大きく受ける人々に対し、その組合員が信頼を置く組織を通じて、必要なスキルを届けることを目指している。既存の労働力が技術変化に適応し安心して働き続けられる環境を整えるとともに、産業の中長期的な競争力と持続可能性を支えることを目的としている。
また、マイクロソフトは、「九州半導体人材育成等コンソーシアム」に参画する初の主要なグローバルテクノロジー企業として、CyberSmart AIプログラムを拡大することを発表した。日本の主要な半導体拠点である九州全域の地方自治体、企業、教育機関を対象に、AIおよびサイバーセキュリティのスキル習得を支援する。
2024年、マイクロソフトは日本への大規模な投資を表明しており、今回の発表はその投資を踏まえ、日本の経済成長に向けたより具体的な取り組みを包括的に示すものだと説明する。これらの具体的な取り組みとなる日本の主権要件に応えるインフラの整備、国家機関レベルでのサイバーセキュリティ連携、日本の科学技術戦略を支える研究支援、産業や地域を越えた人材育成プログラムの展開を通じ、日本の経済成長に引き続き貢献していくとしている。