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キヤノンMJ、2030年に売上高8500億円を目指す新長期構想を発表――ITS事業は成長と収益向上を両立した中核事業として拡大
2025年度の連結業績は5期連続の増収増益、過去最高益を更新
2026年1月29日 00:00
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は28日、2030年を最終年度になる「2026-2030長期経営構想」と、2028年を最終年度とする「2026-2028中期経営計画」を発表した。
「2026-2030長期経営構想」では、ビジョンに「人と技術の力で明日を切り拓く事業創造企業グループ」を掲げ、2030年の経営指標として売上高8500億円、営業利益750億円、ROEは12.0%を掲げたほか、ITソリューション(ITS)の売上高で5000億円、そのうちサービス・アウトソーシングの売上高で2000億円を目指すという。また、5年間累計の成長投資として2000億円を計画していることも明らかにした。
キヤノンMJの足立正親社長は、「さらなる企業価値向上に向けて、持続的な成長を目指す経営指標を設定した。飛躍に向けて取り組む5年間となる」とし、基本戦略として、「事業を通じた社会課題解決による、持続的な企業価値の向上」、「サービス型事業の成長を中核とした高収益企業グループの実現」、「経営資本強化による、好循環の創出」の3点を打ち出した。
また、「ITS事業は、成長と収益向上を両立することで中核事業として拡大させるとともに、M&Aによる非連続の成長も実現する。一方でキヤノン製品事業は、売上を維持しながら収益性の強化を目指す。ITS事業とのクロスセルの推進や徹底した生産性向上を進める。加えて、専門領域では産業機器事業の拡大を中心に、新たな事業創出に向けた探索も続ける」との方針を示した。
成長投資の2000億円については、主な投資領域として、「ITS事業の拡大を中心とする」と位置づけ、「映像ソリューションやBPO・ITO(ITアウトソーシング)といったサービス型事業の創出に向けた投資の実行、M&Aや出資といった事業投資に加えて、人材投資、IT・設備投資にも充当する」とした。
人材投資では、これまで以上に教育制度を充実させ、事業戦略に沿って専門性を高める人材教育を継続するのに加えて、外部人材の採用を進め、高度なスキルを持つ人材の確保に取り組む。
なお、M&Aに関しては、2000億円の成長投資枠の活用のほか、手元資金の約1600億円の一部をM&A資金予備費として充当する考えも示した。
2028年度の数値目標:売上高7500億円、ITS事業比率53%へ
3カ年の「2026-2028中期経営計画」では、2028年に売上高7500億円(2025年度実績は6798億円)、営業利益は660億円(同582億円)を目指す。ITS事業の売上高は4000億円とし、そのうちサービス・アウトソーシングが1400億円(ITS事業における構成比は35%)を占める計画だ。ITS事業の全社に占める売上高構成比は53%となる。
「サービス型事業を拡大することで、最も収益性の高いサービス・アウトソーシングを成長させることがポイントになる。大手企業や準大手・中堅企業向けには、映像×AIソリューションなどによる価値創造インテグレーションや、BPOとITOによるビジネスプロセスサービス(BPS)に注力する。中小企業向けには『まかせてIT BX/DXシリーズ』によるフルサポートに力を注ぐ。さらに、顧客層を問わずに、サイバー×フィジカルセキュリティや、クラウドセキュリティサービスにも注力する。それぞれにKPIを設定し、戦略を実行していく」と語った。
各事業領域の2028年の売上目標は、価値創造インテグレーションが550億円(2025年の売上実績は403億円)、BPSは570億円(同468億円)、中小企業向けフルサポートは210億円(同164億円)、トータルセキュリティサービスは590億円(同465億円)を目指す。
また、「ITS事業を成長させる上で欠かせないのがAIへの取り組みになる」とし、「これまでにも社内での業務効率化や、サービスへの実装を進めてきたが、ノウハウの活用やアセットとの掛け合わせ、顧客との共創を通じて、独自性の高いサービスを創出したい」と述べた。
キヤノン製品事業については、「市場が大きく成長する領域とはとらえていないが、必要とする顧客が存在している。的を射た提案を行うことで、売上維持、収益性の強化を実現できる」とし、B2B市場ではITS事業とのクロスセルの拡大や、連携ソリューションの提案による付加価値の向上、保守サービスにおけるCS向上と生産性向上の両立を図る。また、B2C市場では、中高関与層をターゲットとしたマーケティング活動を実施し、LTV(Life Time Value)の向上を図る考えを示した。
「B2B、B2Cともに、データドリブンな意思決定が欠かせない。セールス体制の最適化により、生産性の追求を進める」と語った。
データセンター事業に関しては、西東京データセンター3号棟の建設計画について言及。「建設費用の高騰とともに電力供給の課題もあり、いまは建設することがリスクとなっている。また、メガクラウドベンダーが自前で持つといった動きもある。データセンター事業はこの先も拡大していくが、自ら建設するだけでなく、保有する施設や設備を部分的に別の事業者に貸し出すDC in DCの発想も必要になる。また、2号棟の一部では水冷サーバーの導入も進めており、今後は、水冷での事業拡大も視野に入れている。水冷への投資額はそれなりの規模になるが、大規模なデータセンターに投資をするというものはない」と語った。
「2021-2025長期経営構想」を総括:全経営指標で目標を達成
また、「2021-2025長期経営構想」の成果についても報告した。
キヤノンMJの足立社長は、「売上高、営業利益、ITS事業の売上高、ROEのすべての経営指標において、2021年4月に設定した当初計画値を達成した。利益ある成長の加速ができた」とし、「特に、ITS事業は大きく伸長。目標としていた売上高3000億円を前倒しで達成し、2025年には3434億円に到達。ITS事業の売上構成比は50%を超え、キヤノンMJグループの中核事業になった」と総括した。
収益性が高い保守・運用サービス/アウトソーシングは2020年比で136%増の877億円と大幅に成長し、ITS事業に占める構成比は8ポイント増加の26%に拡大した。
また、ITS事業を構成するEdgeソリューションの2025年の売上高は390億円(2020年売上高180億円)、セキュリティは465億円(同280億円)、ITO・BPOが468億円(同135億円)、HOME、IT保守・運用の契約件数は24万件(2020年の契約件数は11万件)と、いずれも5年間で大きく成長していることも示した。
足立社長は、10年前にスタートした2016~2020年までの5年間の長期経営計画では、筋肉質な企業体質へ転換するために、事業の選択と集中、顧客層別営業体制への転換を実施したことを振り返り、「これらの取り組みの結果、顧客ニーズを的確にとらえた提案活動を進めやすくなり、低収益事業の構造改革や、共通機能の集約により、収益改善を進めたことが、2021年以降の収益性向上につながったと考えている。2016年からの5年間の布石が結実し、環境変化への対応と積極的な成長投資を進め、2021年以降に、利益ある成長を遂げることができた」とコメントした。
また、「2021~2025年の5年間は、コロナ禍でスタートしたが、2020年までの5年間の取り組みの成果をもとに、業績の落ち込みは最小限にとどめることができた。その上で、強化してきたITS事業をさらに加速し、業績を回復することができた。リカーリングビジネスの拡大により、安定した収益基盤も強化できた」と成果を強調した。
さらに、この5年間で3社の買収や17社への出資のほか、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を通じた出資も14社に達したことに触れ、「サービス型事業創出などの事業投資を進め、戦略的事業投資による事業成長の加速を実現した」と語った。
人的資本強化では、社員のスキルの底上げやリスキリングを推進。DX検定/DXビジネス検定のプロフェッショナルレベルの取得者が1400人以上、イノベーション人材は約2500人、ITパスポート取得者が約5800人、高度ITS教育受講者が約4300人、Aidemy Businessの受講者が延べ5200人に達したという。
足立社長は、「キヤノンMJは、大手企業から中小企業、個人までの広範な顧客基盤と、高度な顧客理解とノウハウをベースにした『技術力』、ITS事業およびキヤノン製品事業で強化してきた『リカーリングビジネス』、強固で健全な財務基盤と安定したキャッシュ創出力による『財務体質』が強みである。これらの強みを生かして、これからも独自性のある商品、サービスを提供していく」と述べた。
2025年度連結決算:5期連続の増収増益で過去最高益を更新
キヤノンMJが発表した2025年度(2025年1~12月)の連結業績は、売上高は前年比4.0%増の6797億円、営業利益は同9.5%増の581億円、経常利益は同10.0%増の598億円、当期純利益は同5.5%増の414億円となった。
キヤノンMJ 取締役 常務執行役員の蛭川初巳氏は、「ITソリューションが順調に推移して5期連続の増収増益となり、営業利益、経常利益、純利益は過去最高を更新した。だが、粗利率は、コンスーマセグメントでITプロダクト・システム販売の売上構成比が高まったことにより、わずかに悪化した」と話す。
グループITソリューションの売上高は前年比9%増の3434億円となった。そのうち、SIサービスの売上高が前年比4%増の1044億円、保守・運用サービス/アウトソーシングの売上高が同9%増の877億円、ITプロダクト・システム販売の売上高が同14%増の1513億円となった。また、グループITソリューションのセグメント別の売上高は、エンタープライズは前年比8%増の2063億円、エリアが同13%増の833億円、コンスーマが同11%増の406億円、プロフェッショナルが同14%増の208億円となった。
通期のセグメント別業績では、「エンタープライズ」の売上高が前年比6.3%増の2657億円、セグメント利益が同8.7%増の210億円。ITソリューションでは、文教や金融業向けPCの大型案件があったことに加え、プリマジェストの連結子会社化の影響などで増加した。
同セグメントに含まれるキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、売上高は前年比6%増の1472億円、営業利益は同12%増の158億円となっている。なお、キヤノンITソリューションズのデータセンター事業を除く年間受注残高は過去最高を更新したという。
「エリア」の売上高は、前年比3.9%増の2402億円、セグメント利益が同21.8%増の223億円。ITソリューションについては、Windows 10の延長サポート終了に伴うビジネスPCの入れ替えが進んだことに加え、ビジネスPCと合わせて提案したランサムウェア対策ソフトやウイルス対策ソフト「ESET」などのセキュリティ、中小企業のサステナブル経営やDX推進をトータルで支援する「まかせてIT」の契約件数が増加したことにより、売り上げは大幅に増加した。
「営業利益は、『まかせてIT』を中心としたリカーリングビジネスが順調に推移していることから向上。SFAの活用による営業活動の効率化によって、顧客1社あたりの売り上げが向上している。今後も、この活動を強化していく」と述べた。
なお、連結子会社のキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)の売上高は前年比6%増の1146億円、営業利益は同50%増の103億円となった。
「コンスーマ」は、売上高が前年比0.1%増の1447億円、セグメント利益が同5.4%減の130億円。レンズ交換式デジタルカメラでは、前年のインバウンド需要の反動やエントリークラスでの販売を終了した機種があったことなどで売り上げが減少。インクジェットプリンターは、市場の縮小により売り上げが減少。インクカートリッジもプリントボリュームの減少などの影響を受けた。ITプロダクトは、Windows 10の延長サポート終了に伴う高性能PCの販売やPC周辺機器の販売が好調。売り上げは大幅に増加したという。
「プロフェッショナル」の売上高は前年比8.9%増の488億円、セグメント利益は同21.9%増の55億円となった。
2026年度の業績見通しを発表、「6年連続の増収増益を目指す」
2026年度(2026年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比0.8%増の6850億円、営業利益が同3.1%増の600億円、経常利益が同1.4%増の607億円、当期純利益が同1.3%増の420億円を見込む。「6年連続の増収増益を目指す」とした。
2026年度のセグメント別業績見通しは、「エンタープライズ」の売上高が前年比4%増の2754億円、営業利益が前年から13億円増の224億円。「エリア」の売上高が前年比2%減の2355億円、営業利益は前年並の223億円。「コンスーマ」の売上高が前年比2%減の1426億円、営業利益は前年並の130億円。「プロフェッショナル」の売上高は前年並の490億円、営業利益は前年から5億円減の50億円を見込んでいる。
なお、今後のPC市場の動向については、「Windows 10の延長サポート終了の影響でPCの売り上げが大幅に増加した前年の反動に加え、メモリの供給制約に伴いPCの供給が不安定になることや、価格上昇による需要減の懸念があり、コンスーマのITプロダクトは減少すると見ている」(蛭川取締役常務執行役員)とし、「Windows 10のEOSは、大企業では一昨年がピークであり、昨年は中小企業やコンスーマが中心となった。2026年は、そこから2割程度の反動がある。ただハードウェアは高い利益率ではないため、利益率が高いビジネスを進めることで、ITプロダクトの利益は横ばいにしたい」(足立社長)とも語った。
また、「メモリ価格の高騰や部材不足は、プリンターやカメラには影響していない。現時点では、供給が遅れたり、価格が上昇したりという話は聞いていない」(足立社長)とした。















