ニュース

「データ戦略なくしてAI戦略なし」――Snowflakeとパナソニック コネクトが語る、製造業DXの核心

 Snowflake合同会社は20日、製造業におけるデータ活用の取り組みについて説明した。

 Snowflake 製造営業本部長の武市憲司氏は、「製造業では、労働力不足をはじめ、さまざまな問題が深刻化しており、不確実性が高い環境に置かれている。Snowflakeでは、製造業界のお客さまに向けて、クラウドを活用したデータサイロの解消や、生成AIと機械学習を活用したイノベーションの推進などの提言を行い、課題解決に貢献している」と前置きし、「Snowflakeが掲げているのは、『データ戦略なくして、AI戦略はなし』という考え方。エンタープライズAIを実現するには、その前提として、しっかりとしたデータ戦略が必要である」と述べた。

Snowflake 製造営業本部長の武市憲司氏

 その上で、「製造業では、工場、生産管理、マーケティング、物流、サプライヤー、エコシステムなど、さまざまなデータソースが存在し、しかも構造化データと非構造化データが混在し、形式もばらばらである。これらのデータを適切に取得し、変換し、統治し、分析、共有するというサイクルを回すことで、データを単なる記録から価値を持つ資産へと変えることができる。ここにSnowflakeが提供できる価値がある」とした。

 また、「多くの製造業に見られるのは、データの壁である。ITとOTでデータが分断され、全体最適な意思決定が困難になっているケースが多い。Snowflakeは、『Snowflake AI データクラウド』というコンセプトをもとに、あらゆるデータを取り込み、変換から分析、活用までを、シングルプラットフォームで利用できるようにしている。サイロを解消し、データによるビジネス価値を最大化できる」と述べた。

 Snowflake AIデータクラウドの今後の進化に向けては、ドキュメントから必要な情報を高精度に探し出すCortex Searchや、自然言語で質問して、信頼性の高い回答を得られるCortex Analyst、構造化データや非構造化データを取り込むSnowflake Open flow、さまざまな分析が可能になるSnowflake Intelligenceなどを提供していることを紹介。「営業部門や事務部門、製造現場など、あらゆる部門の社員が、データから価値を引き出せるプラットフォームを提供している。データ分析の民主化を実現できるプラットフォームだと自信を持って言える」と述べた。

Snowflake AIデータクラウドのさらなる進化

 一方で、フォーチュン500において、近い将来、生成AIが自社で重要になると考えているIT専門家が90%に達していること、約75%の企業が、今後3年以内に業務に生成AIを導入する予定であると回答していることを紹介。「生成AIを活用したデータドリブン経営への転換が、企業の競争力を左右する時代になっている。日本の製造業が競争力を保つためにも、肝要なテーマだといえる」と指摘した。

 Snowflakeによるデータ活用の導入事例についても紹介した。

 海外の大手製造業では、ドキュメント主導の総合品質管理(TQM)に取り組んでおり、PDFなどで管理している品質検査レポートなどを、DocumentAIによって解釈してデータをフィードバックすることで、品質向上やサイクルタイムの短縮、設備の効率運用などが可能になったという。

 また、別の製造業では、根本原因分析(RCA)にLLMを活用し、センサーデータや画像データ、過去の品質データなど、複雑な根本原因分析を統合的に実行して、パターンや異常を特定するという。これにより、品質の向上や歩留まりの向上、エネルギーの最適化、計画外ダウンタイムの削減などの成果につなげているという。

製造業界のユースケース

パナソニック コネクトが実践するAIエージェント活用、作業時間を最大97%削減

 今回の説明会では、パナソニック コネクトにおけるSnowflakeのデータ活用の取り組みについても紹介した。

 パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部AI & Data プラットフォーム部データマネジメント課の渡邉勇太氏は、「パナソニック コネクトのデータ戦略を支えているのはSnowflakeである。ここにデータを蓄積するところから、データ戦略がスタートしている」とし、AIエージェントによる非構造化データの活用事例などについて触れた。

パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部AI & Data プラットフォーム部データマネジメント課の渡邉勇太氏

 パナソニック コネクトでは、「ConnectAIエージェント・プラットフォーム計画」を推進し、独自AIであるConnectAIを1万2000人の社員が利用しているが、その一方で、部単位や課レベルで数十人が利用する「業務エージェントwith データ」によって、組織で活用できる簡易AIエージェント基盤を提供。ここに、Snowflakeを活用しているという。

 具体的な例として挙げたのが、非構造化データを分析する「カスタマー分析エージェント」と、モノづくりに特化した「Manufacturing AIエージェント」の2つである。

 「カスタマー分析エージェント」では、同社が年1回実施している顧客満足度調査において、Snowflakeのプラットフォームを活用。Cortex AIとStreamlitによって、非構造化データを分析し、カテゴリー分類を行い、量と質の両面でメリットを生んでいるという。

 「自由記述コメントが非常に重要であるものの、膨大なコメント量になるため、分析が追いつかないという課題があった。また、分析を人手で行う際に、客観性を十分に担保できず、ブレが発生してしまうという課題もあった。Cortex AIを活用することで、分析の自動化と、客観的な分析ができるようになり、Streamlitによって、直感的なユーザーインターフェイスで、誰でも分析することが可能になった。対話型でテキストを要約したり、部門ごとに必要な情報を抽出したり、製品カテゴリーごとに分析することもできる。従来は200時間かかっていた作業が20時間に短縮され、作業時間を90%短縮できた。客観的な分析ができるという点でもメリットがある」とした。

カスタマー分析エージェント

 もうひとつの「Manufacturing AI エージェント」は、図面や設計仕様の照合業務の高度化を図ることができるものだ。製品開発から製造に至る流れにおいては、製品図面が中心となり、それに関連する多くの部品図面が作られることになるが、製品図面の設計仕様と、部品図面の設計仕様にずれが生じることがあり、それが製造の際の不具合につながっている。ここで不具合が発生すると、検査をやり直したり、市場に製品が出てしまった場合には回収を行ったりといったことが起こり、経済的損失やブランド毀損につながる可能性もある。

Manufacturing AI エージェント

 だが、図面や仕様書はすべてPDFであり、照合の自動化には向かない非構造化データのため、これに対応したソリューションがなく、個別開発ではコストが膨大になることが想定されるとともに、そもそも開発ができるのかも不明だったという。

 Manufacturing AI エージェントでは、Cortex AIを活用することで、PDFデータの分析を可能にしており、設計図面の設計仕様が、ほかの設計仕様とあっているかどうかを照合。数百ページに及ぶ仕様書との照合では、多くの工数がかかっていたが、これも解決。さらに、人為的な確認漏れがなくなり、短時間で正確に照合できるようになったという。

 「ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、テキストの抽出や半構造化処理を行い、AIが照合を行う。照合結果のレポートを自動生成し、人は結果をチェックするだけで済む」とした。

テキスト抽出&半構造化処理、照合をAIで実施

 部品図面の照合では、1回あたりの作業時間が50分から10分に削減でき、時間を80%削減。技術仕様書の照合では340分かかっていたものが10分で完了し、97%の時間削減を達成したという。

効果:1回の作業時間の80%~97%削減を実現

 こうした取り組みの成果を基に、パナソニック コネクトの渡邉氏は「データは、現場に提供するだけでなく、現場において生かし、根付かせることが大切である」と前置き。

 「パナソニック コネクトでは、AI&データの活用によって、仕事を最適化し、事業の競争力を強化することに取り組んでいる。PLMやPSI、ERP、CRMを対象にしたレガシーモダナイゼーションを推進し、システムや業務プロセスのモダナイズを行う一方、AI & Data基盤に高い品質のデータを集約し、生成AIやML、BIを活用して、非構造データを含めた多様なデータを効率的に最適化。データを活用した経営やオペレーションの高度化につなげるという『プロセスとデータの改善ループ』を構築している」とした。

コネクトの目指すITの姿

 データ活用推進の重要成功要因(CSF)を定義し、データ管理の熟練度と、データ分析の熟練度が、DXによる変革の進展を示せる指標になることを提示。その際に、ビッグデータ解析やAIも見据えたスケーラブルなデータウェアハウスの整備が重要であること、新しい思考や組織文化を取り入れるために、社員が使えるBIツールの標準化と浸透、基盤の整備を進めること、これらをサポートするために、IT部門が現場に入り込んで、ITや部門間のつながりを強化し、データ活用を推進し、データドリブンな文化の醸成を進めることなどの重要性を訴えた。

データ活用推進の重要成功要因(CSF)

 パナソニック コネクトでは、データ蓄積の基盤にはSnowflakeを採用。BIツールは、Tableau CloudとPower BI Premiumを標準ツールとして活用しているほか、StreamlitをSnowflakeに組み込んだ活用も行っている。今後は、パナソニック コネクト独自のAIであるConnect AIによるチャットからもSnowflakeのデータを読めるようにしていくという。さらに、データ活用の推進については、「現場に対して、データ活用のスキル育成を進めながら、じわじわと浸透させていくことが大切である」とも述べた。

データ戦略を支えるアーキテクチャ

 また、パナニソック コネクトにおけるデータ活用ビジョンについても言及。事業、地域、バリューチェーンという3つの要素を、キューブとして構成した図を示しながら、「これらのさまざまな軸で、経営層や事業部門が必要とする指標を分析できる仕組みを構築した。システムやデータベースがサイロ化されていると、これが実現できない。データ活用環境を一本化する上で、Snowflakeを採用している。また、ここにAIを活用することで、企業経営に貢献できる」と述べた。

 パナソニック コネクトでは、デジタルマーケティングやSFAの顧客データを集めたCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を構築することから開始。さらに、経理および経営データに加えて、現在ではERPに関するデータも収集し、データ活用のためのキューブを構成することができているという。

 「2021年度からデータ収集の領域を広げていったが、まずはできる領域やスピード感があり、やる気がある事業部やコーポレート部門からスタートすることで、分散していたデータを統合し、企業視点で可視化して活用できるようにした。また、データは事業と業務領域の軸で管理し、それぞれの軸でスケールさせている」という。

コネクトのデータ活用の推進戦略(どう攻めるのか)

 現在、連携システム数は46となり、テーブル数は4574、データダッシュボードを活用しているBIユーザー数は1414人となっている。「BIユーザー数は、全社員の11.6%に達している」。

データ戦略の進捗

データドリブン文化を加速させる4つの要諦

 また、パナソニック コネクトの渡邉氏は、社内における「データドリブンカルチャー」を加速させるためのポイントとして、4点を挙げた。

 ひとつめは、「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教えてあげる」とする。

 現場にデータや結果を提供するのではなく、自らデータを集め、分析し、意思決定を行えるようにするという意味であり、「ダッシュボードを作ってあげるのではなく、自分たちで作れるように伴走することが大切」だとする。

魚をあげるから、魚の釣り方を教えてあげるへ

 2つめは、「IT組織の役割を、従来の御用聞きから、共通のゴールを持つパートナーに変化させる」ことだ。

 「従来は、ビジネス部門からの要求を受けて、言われたままに、言われたことだけをやるというスタイルだった。しかし、パナソニック コネクトの一部門としてIT部門がある。ビジネス部門の近くにいるのならば、一緒にパートナーとして活動し、事業部やビジネス部門の戦略を理解した上でデータ活用の推進を進めていくようにするべきだと考えた。IT部門がパートナーとなり、一緒にタッグを組むことで、データ活用に対する意識改革も進んでいった」という。

IT組織の役割を、従来の「御用聞き」から、共通のゴールを持つ「パートナー」に変化させる

 3つめが「社内コミュニティの活性化」である。

 パナソニック コネクトでは、社内のカルチャー変革を行うためにコミュニティを設置。事例を紹介し合ったり、ディスカッションを通じて連携を強化したりすることで、その後のコミュニケーションが取りやすい環境を構築しているという。

 イベントへの参加者数は増加傾向にあり、会場のキャパシティの問題から、リアル会場では80~100人が参加し、さらにオンラインでも参加できるように仕組みを変えていくという。

 なお、AI活用に関するコミュニティイベントも社内で開催し、2061人の社員が参加したという。今後も定期的に開催していく予定だ。

社内コミュニティの活性化

 そして、4つめが「外に出る」とし、その一例として、Snowflakeが開催している製造&自動車ユーザー会に参加。他社から学ぶことも積極化させているという。「人から刺激を受けることで、若手社員も成長し、社内にも好影響を与えてくれる。外に出るという活動は積極化していきたい」と語った。

外に出る!

 最後に、パナソニック コネクトの渡邉氏は、「データやAIは、単なるIT施策ではなく、経営変革やカルチャー変革の一部である。また、成果を持続させる鍵は現場にある。IT部門が現場に入り込んで、データドリブン文化の醸成と人材育成に取り組むことが重要となる。そして、テクノロジーの進化によって、非構造化データをAIで扱っていくことができるようになってきた。これにより、現場の業務は、実務レベルで変わり始めていることをとらえるべきである」と述べた。