ニュース
アドビ、AI経由のトラフィックに自社サイトを最適化する「Adobe LLM Optimizer」を発表
2025年9月19日 06:00
アドビ株式会社は17日、AI経由のトラフィックを監視し自社サイトを大規模言語モデル(LLM)に最適化する「Adobe LLM Optimizer」を発表した。同ツールにより、自社コンテンツが主要なAIモデルに参照されている状況を可視化できるという。
アドビ テクニカル・バリデーション部 シニア・マネージャーの平嶋英治氏は、Adobe Analyticsのデータから、「米小売サイトへの生成AI経由の流入トラフィックが、2024年7月から2025年5月の間に3500%増加していることが明らかになった」と話す。「これまでのように、自然検索や従来型のリファラルトラフィックを通じて自社コンテンツにユーザーを誘導し、ブランドエンゲージメントや収益につなげるという構図が大きく変化している」(平嶋氏)。
同氏によると、現在ではLLMを介した新たなトラフィックの形として、「LLMリファラルトラフィック」と「LLMゼロクリックジャーニー」が生まれているという。LLMリファラルトラフィックとは、ユーザーがLLMに質問を入力し、生成された回答の中に含まれるリンクや情報源をクリックしてサイトにアクセスする流れのこと。一方、LLMゼロクリックジャーニーとは、ユーザーがサイトにアクセスすることなく、LLMの回答だけで情報収集を完結してしまうことだ。つまり、「検索から回答取得までをLLM内で完結し、外部サイトへの遷移が発生しないケースが増えている」と平嶋氏は語る。
そこで企業にとって重要となるのが、SEOならぬGEO(Generative Engine Optimization)対策だ。平嶋氏は、「一部のブランドではすでにAIによる自社トラフィックへの影響を受けており、対応を模索中の企業も存在する。メディアサイトでも通常の人間のアクセスが減少している」として、LLM最適化へのニーズが急増していると話す。
こうしたニーズに対応するのが、Adobe LLM Optimizerだという。そのコンセプトは、「AI時代の検索で見つけられ、引用され、選ばれるブランドへ」というもので、AIネイティブ検索におけるブランドの可視性や影響力、成果を継続的に最適化するとした。
Adobe LLM Optimizerは、AI主導の検索が増える中、ブランドや製品、コンテンツが「見え、正確で、影響力のある状態」を確保する。また、従来のアナリティクスが見逃すエージェンティックトラフィックを可視化し、AIによる発見をブランドエンゲージメントと収益につなげる。さらには、外部に良い影響を及ぼすようサイト内の改善案を提案し、提案内容をサイトに反映させるという。
Adobe LLM Optimizerの機能のひとつに、レポートとインサイト機能がある。これは、自社ブランドがAIによってどのように評価されているかを可視化するもの。また、トラフィックの種類がエージェント経由によるものか、LLMの出力結果からアクセスしたリファラルトラフィックによるものかも分析する。
具体的な改善や最適化案を提示する機能も備わっている。404エラーなどのリンク切れや古いサイトマップなど、自社サイト内の課題を検出し、改善案を提示する。自社サイトだけでなく、Wikipediaなどの外部チャネルに対しても、ブランド認知を高めるための最適化策を提案する。こうした提案は、信頼性が高く、有益で高品質な情報を優先するLLMの特徴に基づいているという。
Adobe Experience Managerを利用している企業であれば、提案された改善内容をワンクリックで反映することも可能だ。「通常であれば時間がかかる修正作業も、Adobe製品との連携によりスピーディに対応できる。Adobe製品を利用していない場合も、提案内容をコピーして外部の制作会社や代理店に依頼できる」と平嶋氏は説明する。
他社製品に対するAdobe LLM Optimizerの強みについて、平嶋氏はまずエージェントトラフィックの分析精度を挙げる。「他社製品の多くはサンプリングを用いているが、Adobe LLM OptimizerはCDNログに直接アクセスすることで、実際のクエリボリュームを正確に把握できる」と平嶋氏。
また、オフサイトの最適化にも対応しており、「ソーシャルフォーラムや外部メディア、権威ある第三者サイトにおけるブランドの影響力を強化する改善策を提案する。加えて、KPIや実行ステップ、ドラフトコンテンツまで明示された実践的な改善案を提示できる点も特徴だ」と平嶋氏はいう。
さらに平嶋氏は、アトリビューションモデリング機能についても触れ、「LLMを起点とした流入や引用トラフィックが実際の収益にどう結びついているかを可視化する。CDNログをもとに、どこから流入があったのか、ユーザーがどの程度コンバージョンに至ったかを分析できるため、最適化の前後で成果の変化を比較することも可能だ」とし、同ソリューションの強みをアピールした。