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シトリックス、仮想デスクトップ製品の新版「XenApp/XenDesktop 7.8」 長期サポート版も提供

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は24日、仮想アプリケーション・仮想デスクトップ製品の最新版であるCitrix XenApp/XenDesktop 7.8を発表した。同時に、XenApp/XenDesktop 7.6をベースとしたサービスオプション「LTSR」(Long Term Service Release、長期サポート版)もアナウンスした。米国で1月に発表されたもので、2月24日より製品提供している。

 さらに、XenAppで扱う対象アプリケーションをWebブラウザに限定して導入しやすくしたエディション「Citrix XenApp Secure Browser Edition」も発表した。こちらは3月24日より提供開始されている。

 なおシトリックスは同日、記者説明会を開催し、新製品や最近のXenApp/XenDesktopの事例などについて解説した。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 高沢冬樹氏(マーケティング本部 本部長)
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 竹内裕治氏(シニアプロダクトソリューション推進マネージャー)

Skype for BusinessをVDIからもネイティブと同様に

 XenApp/XenDesktop 7.8の主な新機能について、シトリックスの竹内裕治氏(シニアプロダクトソリューション推進マネージャー)が説明した。なお、XenDesktopはサーバーで動かした仮想デスクトップの画面全体を、XenAppはアプリケーションのウインドウをクライアントから使う製品で、XenDesktop製品にはXenAppが含まれる。

 まずはマスターイメージ管理。これまでは一つのマスターイメージを管理するか、グループなど用途別に分けた複数マスターイメージを管理するしかなく、グループが増えると管理負荷が増大していた。そこで新しいCitrix AppDiskでは、OSや、共通アプリケーション、グループごとのアプリケーションなど、レイヤーを分けてマスターイメージを管理することで、管理負荷などを軽減する。また、AppDNAにより、アプリケーションの互換性をフルスタックでテストできる。

 またMicrosoftとの協調により、ユニファイドコミュニケーションツール「Skype for Business」(旧称Lync)の、VDI環境でのユーザーエクスペリエンスを改善した。「Citrix HDX RealTime Optimization Pack 2.0」により、VDI上でSkype for Businessを使いつつ動画や音声をクライアント側で処理することで、クライアントのネイティブアプリケーションと同様に使えるようにする。

 2015年に登場した、回線品質が悪条件でも快適に使うためのFramehawk技術も強化された。CPU効率の向上やメモリ使用量の削減などのパフォーマンス向上と同時に、レンダリングにクライアントのGPUを使うHDX 3D ProをFramehawkでサポートした(Windows 7/8仮想デスクトップ向け)。HDX 3D ProについてはFramehawk以外でも、すべてのエディションで利用になり、Linux仮想デスクトップに対応したという。

マスターイメージ管理の新機能:Citrix AppDiskでレイヤーを分けてマスターイメージを管理する
Skype for Businessの改善:動画や音声をクライアント側で処理する
VDI上のSkype for Businessのデモ
Framehawk技術の強化:パフォーマンスを向上し、HDX 3D Proに対応

 続いて竹内氏はLTSRについても解説した。LTSRは、特定のバージョンについて長期サポートのオプションを提供するものだ。現状ではXenApp/XenDesktop 7.6が対象となり、5年間のメインストリームサポートに加えて5年間の延長サポートが提供される(別途有償契約)。

 通常のXenApp/XenDesktop 7.xでは製品提供終了が2018年で、サポート終了が2023年のところ、LTSRでは製品提供終了が2021年で、サポート終了が2026年となる。

 これにより、最新機能を使う場合にはCR(Current Release、最新リリース)を、機能はそのままで長期サポートが欲しい場合にはLTSRを、といった形でユーザーが選べるようになった。

LTSRとCR(最新リリース)のサポート期間
LTSRとCRのサポートの違い

Webブラウザ専用のアプリケーション仮想化製品

 同時に発表された「XenApp Secure Browser Edition」は、対応アプリケーションをWebブラウザに絞ったXenAppの新しいエディションだ。シトリックスではXenApp/XenDesktopの入り口となる製品と位置づけており、1ユーザーまたは1デバイス2万2500円(税別)+初年度ソフトウェアライセンスで利用できる。

 「いまは企業システムでもWebアプリケーションが多い。XenAppで最も使われているアプリケーションもIE(Internet Explorer)」と竹内氏。用途としては、複数種類のWebブラウザの利用や、アップデートなどの管理の負担軽減、端末上の情報と分離することで、セキュリティを破られた時ににアクセスされないようにすることなどがあるという。

 クライアントとして通常のCitrix Receiverのほか、クライアント上のWebブラウザ上に画面を表示する「Citrix Receiver for HTML5」も利用できる。これにより、クライアントにCitrix Receiverをインストールしなくてもいいほか、Webブラウザのタブごとに違うWebブラウザの画面を表示することもできる。

XenApp Secure Browser Edition
クライアント上のWebブラウザ上に画面を表示するCitrix Receiver for HTML5
アプリケーション仮想化でIE 8を実行するデモ
Citrix Receiver for HTML5によりFirefox上にIEの画面を表示するデモ

業界別ソリューションに新製品を提案

 XenApp/XenDesktopをはじめとするシトリックスソリューションとその導入状況などについても解説がなされた。

 シトリックスの高沢冬樹氏(マーケティング本部 本部長)は、注力分野として「ワークスタイル変革」「インフラ課題」「業種/業務課題」の3つを挙げ、そこに今回発表された新機能などをからめてシトリックスソリューションを語った。

 ワークスタイル変革は場所にとらわれない働き方の実現で、XenApp/XenDesktopが以前からターゲットにしている分野だ。この分野の新しい例として、前述したようなVDIでのSkype for Businessが挙げられた。

 インフラ課題としては、XenAppでアプリケーションをOSと分離することによるWindows 10展開の推進が挙げられた。また、XenAppでWebブラウザを分離することによるセキュリティ強化も紹介された。

 業種/業務課題については、自治体や製造業・建設業、金融業のモデルが紹介された。自治体については、重要課題であるセキュリティのためにWebブラウザをアプリケーション仮想化することや、モバイル対応などが語られた。

自治体向けのソリューション。セキュリティのためのWebブラウザのアプリケーション仮想化や、モバイル対応

 製造業等については、CAD/CAEなどのワークステーションをVDIで動かすためのHDX 3D Proが語られた。さらに日産自動車の事例紹介ビデオを上映。グローバルコラボレーションのためのデータ一元化にVDIを導入し、仮想GPUのNVDIA GRID K2によりレスポンスを改善したことが語られた。

製造業向けのソリューション。HDX 3D ProによりCAD/CAEなどのワークステーションをVDIで動かす
日産自動車の事例紹介ビデオより。グローバルコラボレーションのためのデータ一元化にVDIを導入

 金融業については、XenApp Secure Browser Editionにより中小にもXenApp/XenDesktopのすそ野を拡大する考えを説明。さらに、モバイルでの仮想デスクトップ利用に向けて、iPadでのCitrix Receiverのマウスエミュレーションや、iPadで使えるBluetoothマウスのCitrix X1 Mouse、ワコムの電子サイン用タブレットへの対応などを紹介した。

金融業向けのソリューション。セキュリティや、仮想デスクトップでの機器対応など
仮想デスクトップでの電子サイン用タブレットへの対応

高橋 正和